攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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トンチキネーミングモンスター

 わずか15分の間にずいぶん疲れた気がする。

 主に狂信者の狂信者ムーヴが原因ということにしたいところだけど、単純にすごい美女に至近距離まで詰められてドキドキした、純情ハートの気疲れのほうが主な原因なのかもしれない。

 

「兄ちゃん、顔真っ赤!」

「お前もだろ!」

 

 と兄妹で言い合うくらいにはお互い、この手の話に免疫はない。あともう数cmあったらその、あの……いわゆる唇同士がアノアレソレコレって感じになっていたさっきを思えば、そりゃあ顔の一つ二つも赤くなりますよ。

 戻ってきた宥さんや逢坂さん、リーベからも何この兄妹みたいな目で見られるし。その直後に香苗さんを見て何かを察したように頷いてるのが謎だ。

 

 ともあれ、休憩の15分が経過した。イベント参加者は全員席について、カレッジサーチャーズ竜虎大学による研究発表を心待ちにしている。

 ユニークな名前のモンスターについてと、探査業界における組織について。いずれも探査者にとっては馴染み深く、また非探査者にとってみれば興味深い題材と言えるだろう。

 

 講壇には小早川さん。加えてカレチャの人たちだろう、5人の男女が登壇している。ゲストの3人は最前列のゲスト席だ。

 おそらくこの人たちが研究発表を行うんだろう。いそいそと何やら、ノートパソコンと機材を持ち出して繋げたり位置を整えたりしている。

 そうこうするうちに準備ができたのか、講堂に備えつけのプロジェクタースクリーンが下りてくる。いよいよ始まるか。

 

「お待たせいたしました。それではただいまよりカレッジサーチャーズ竜虎大学による探査者イベント、午前の部を開始いたします」

 

 小早川さんが引き続き司会をされるみたいで、マイクを片手にアナウンスを行う。途端、講堂内の照明が落ちる。と同時にスクリーンに、機材に接続されたノートパソコンの画面が表示された。

 アイコンが山のように並んでいるデスクトップだ、几帳面な性格の人から見れば、ちょっとは整理しろと言いたくなりそうなくらい雑多な画面になっている。

 

「ちょっとくらい、纏めたりはしないのかしら……?」

 

 ちょうど、隣で戸惑いがちにぽつりと呟く宥さんみたいにね。正直俺にも理解できる気持ちだけど、見るからに清潔清楚清廉な彼女的には、もうひたすら困惑しかない光景なんだろうな。

 

 まあそんな画面も束の間、すぐにファイルが開かれた。プレゼンテーションなどで用いられる、資料作成とスライドショー機能に秀でたソフトだね。

 うちの父ちゃんもたまに自宅で、このソフトを使ってあれこれ唸ったり呻いたりしているよ。お疲れさまです。

 

 そんなソフトのスライドショーが展開される。最初にドドン! と大きな文字で、"世界のユニークネームモンスター"と銘打たれた画面が俺たちの前に現れた。

 

「えー、それでは今から僕たち、カレッジサーチャーズ竜虎大学はモンスター研究グループによる、研究発表を行います。よろしくおねがいします」

「私たちモンスター研究グループは、日夜モンスターの生態や関係する物事について研究と調査を行っています。今日はその一環として、これまでに発見されたモンスターの中でもユニークな名前をつけられた、すなわちユニークネームモンスターたちについて発表します」

 

 壇上のグループのうち、代表者らしい男女がそれぞれ話し始める。手にはレーザーポインターを持っているけど、あれカッコいいよね、俺もほしい。別に何かに使う宛があるわけじゃないけど、なんかカッコいいしほしい。

 ともかく発表が始まった。スライドショーが次の資料を映し出す。"そもそもユニークネームとは"というサブタイトルと、由来からしていろいろ書いているな。

 

「ユニークネームモンスター、というのは要するに面白い、ユニークな名前をつけられたモンスターたちのことを指します」

「モンスターの名前は第一発見者によって名づけられるのが慣例的ですので、人によっては個性的な名前をつける場合があります。その中でも特に人々の笑いを誘う、コメディチックな名前のモンスターがユニークネームモンスターですね」

 

 そのへんは俺も知っていたことだけど、こんなふうに研究されて、まとめて発表されるほどに世界的に多いものなんだな、変な名前をつけられたモンスターってのは。

 

 同時に、そんなおかしな名づけをするような探査者も少なからずいる、という証拠を突きつけられたような感じでもあるけど。そこはまあ今さらというか。いろんな人がいるからね。

 新種のモンスターを見つけたらつい悪ふざけみたいな名前をつけてしまう。そういう癖の人もこの広い世の中、いるんだろう、きっと。

 

「日本においては、大ダンジョン時代初期にモンスター学を興した妹尾万三郎教授が特に、発見した新種モンスターにユニークな名前をつけていたことで知られていますね」

「"トンチキな生物群なのだから、トンチキな名前をつけてやるくらいがちょうどいい"とは彼の名言ですね。教授自身も探査者だったことから、それなりな数のモンスターを発見していたりもします」

 

 教授とはまた。探査者やりつつもそういう職に就いていた人も、いたんだな。

 台詞から察するに相当癖が強そうというか、個性的な方だったんだろう。たしかにダンジョンだのモンスターだの、いきなり出てきてトンチキもいいとこなんだけど、だからってじゃあトンチキな名前つけてやれ! とはなかなかならないと思うの。

 どのくらいの数のモンスターが、その妹尾教授の命名被害を喰らったんだろうなあ……




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7/1、本作「攻略!大ダンジョン時代 俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど」1巻が発売されています

WEB版において揺れたりブレたりしていた口調設定その他諸々を統一、言い回しや各シーンをより良い形で加筆修正を行いました
また書き下ろしで山形の中学生時代の話も掲載しております

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