攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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夏こそ辛いものを食べよう

 先にも言ったとおり、学内に食堂は複数ある。それぞれ特色があって個性豊かなラインナップとなっているのだ。

 それらすべてを踏破しよう、というリンちゃんたちグループはともかく、俺のグループは普通に食べて終わりなつもりなので、どこの食堂にするべきか、というのが一つの悩みどころだった。

 

「あっさりめ、濃いめ、デザート特化、フードコート風……食堂によって色々、方向性があるんですねえ」

「この暑さです。スタミナをつける意味でガッツリいくというのもありますが、逆に食べやすいあっさり系を楽しむというのもいいでしょうね」

「宮野さんはどうかしら? 遠慮なく、食べてみたいところを言ってね」

 

 外はすっかり炎天下。いくら講堂内が涼しかったとはいってもやはり堪える暑さだ。

 こういう時こそガッツリいくか、それとも暑いしあっさり済ませるか。俺も今のノリだと、なんとなくガッツリ食べたい感じはあるかも。

 

 他方、宥さんが宮野さんに尋ねる。

 この面子の中では唯一、探査者じゃない子だからね。レベルの都合もあって身体が頑丈になっている俺たちとは異なり素のままの体力なので、そこはこちらが率先して配慮させてほしいところだ。

 

「そうですね……どちらかというと私は、あっさりした麺とかで済ませたいかもです」

「と、なるとあっさりめですね。正直私も、お昼ごはんはそこまで食べませんのでそちらのほうが助かるかな、と」

 

 そうして聞いたところ、逢坂さんと併せてあっさりしたものがいい、と返ってきた。

 たしかにこの暑さだ、そっちのほうがいいかもしれない。逢坂さんもお昼は食べない派というのもあろうし、宮野さんの意見をそれとなく尊重した部分もあるんだろう。

 

 決まりだな。

 俺は、みんなに言った。

 

「それじゃあ、あっさり系の食堂に行きましょうか。ありがとね宮野さん、おかげでサクッと行く店が決まったよ」

「え。でもその、いいんですかそんな、私が」

「もちろん! ね、みんな」

 

 実質的な意思決定権を担うことになり戸惑う宮野さん。無理もないけど、困惑させないように周囲を見る。

 香苗さんも宥さんも、逢坂さんだって笑って頷いてくれた。

 

「変に意見が分かれて話が長引き、結果として書店を巡る時間が失われることこそ最も、避けなければいけない事態でした。助かりました、宮野さん」

「それに私も、普段からあっさり風でサラダとかが中心なの。お揃いね、私たち」

「あ……そ、そうですね! ありがとうございます」

 

 なるべく気にしないようにと笑いかける年上のお姉さん二人に、彼女もホッとしたようだった。

 助かる……こういう時はこの狂信者タッグ、すごく頼れるんだよなあ。今だって俺一人だと、宮野さんを恐縮させてしまっていたかもしれないし。

 

 これで時折、いやさ頻繁に句読点がガンダーラに旅立つところがなければ、なあ。

 などと内心にて思いながらも、俺たちはさっそく件の学食へと向かったのだ。

 

 広場を囲う赤煉瓦の建物の中でも、一際横に長い施設の地下へ向かう。外からでも地下階へと入る長い階段があって、つまりは野外から直接、食堂へ入ることができるのだ。

 階段を降りてすぐ、テラス席が見える。その先に出入口があって、ガラス張りの窓からは広々とした内部が丸見えだった。

 

「お、大きいってか、広い……」

「さすが、大勢の客がやってくるのを見越してのこのサイズですか。さきほどの講堂の、倍はありますね」

 

 まず思ったのが、その圧倒的な広さについてだ。

 ホールまるまる一つを食堂としているみたいで、普通、想像するレストラン店の内部の倍以上はある。そこを等間隔にテーブルとチェアーが置かれていて、今も何人かの学生さんに食事を提供している最中らしかった。

 

 さしあたって席を確保する。まあ、テスト期間中だからか人はまばらで、どこの席でも座ることができた。

 メニューが置いてあるのでちょっと読んでみる。なんかフェアとかやってるみたいで、主に激辛系の料理が期間限定で頼めるみたいだった。

 

「夏って感じのフェアですねー」

「夏こそ辛いものを食べよう、というアレですね。私自身は辛いものはあまり得意でないですが、理屈自体はわかります」

 

 香苗さんと二人、メニュー表を覗き込んで話す。

 激辛かぁ……俺としては最近、ちょっとずつ好きになってきているジャンルだ。この際、挑戦してみてもいいかもしれない。

 でも辛さの種類もいろいろあるしなあ。わさび系のつーんとくる感じは好きだけど、四川料理とかの舌がヒリヒリしたり口の中が痛くなったりするやつはちょっとまだ、苦手かも。

 

「どうしようかな……食べてみたいような、怖いような」

「あ、それでしたら公平様。私が普通の料理を頼みますので、公平様がもし辛くて食べられない場合はそれと交換しましょう。私、激辛料理もいける口なんです」

 

 ちょっと悩んでいるところ、まさかの宥さんが助け舟を出してくれた。

 この人、激辛料理も結構いけるんだな……なんだか意外だ。




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