攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
数ヶ月前。GWにて行われた探査者ツアーにおいて俺とこの二人、高木さんと中島さんは、ドラゴンが発生するところに出くわした。
関口くんを悪辣に利用しようとしていた邪悪なる思念を、俺がどうにか食い止めた矢先のことだった。逃亡を図ったやつが、己の腕を変質させてドラゴンを──今の姿になる前の、生まれたてのS級モンスターだったころのアイを創造したのだ。
「あん時ァ死ぬかと思っちゃったわ、実際〜」
「僕も。あの子どもも含め、生きた心地のしない難儀な展開が続いたね、あの時は」
「まったくです、本当に」
当時を振り返って懐かしむ、ってほど昔の話じゃないんだけどね。席の傍、高木さんと中島さんを迎えつつも話に花を咲かせる。
座ったらどうかと言ったんだけど、出払っている女性陣の席ということで遠慮されたので俺も立っている。そもそも高木さんと中島さんはもうお昼を食べ終えられたみたいで、今は空いた時間を使い、竜虎大学の周辺を散策しようとしていた矢先だったそうだ。
相変わらずの陽気なノリで、高木さんが尋ねてくる。
「ヤマちゃんあれからどーしてたん? 結構気にしてたんよ、俺らもさぁ〜」
「最後に見た君の姿は、病室で昏睡している力ない姿だったからね。僕らはスケジュールどおりにツアーに参加したけど、正直ずっと心配していたんだよ、山形くん」
「それは……ありがとうございます。ご心配おかけしました」
そうだったそうだった。俺、探査者ツアーを中途で離脱してるんだよ。心配してくれるお二人の言葉に、あれやこれやと思い出す。
ドラゴン戦で使用したスキル《ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で》の影響で……というか厳密には、そのスキルを創るためにコマンドプロンプトとしての権能を使用した代償で、丸一日気絶してたんだ。
当時、俺ってばまだまだ純度100%の山形公平だったからね。そんな状態で限定的にでもシステム最上位プログラムとしての権能を使ったんだから、体への負担が半端じゃないのも当たり前の話だよ。
ドラゴンを今のアイに変えたあと、気がついたら病室の天井を眺めていたのはびっくりした。なんなら直後に香苗さんのご実家に連れて行かれたのも含め、あのへんはひたすら驚きの連続だった気がする。
その後も立て続けにいろいろあったもんだから、なんだかやけに懐かしい。
思い出しつつも、俺はお二人に答えた。
「俺のほうは……いろいろありましたね、本当にいろいろと。ちょっとごたついてたんですけどようやく、片づきまして。今はまあ、言うならバカンスです。ちょうど学校も夏休みですし」
「……なるほど。たしかにいい顔をしているね。大きな試練を乗り越えた、そんな面構えになってるよ」
中島さんが、目を細めて俺を見た。のんびりとしつつも、どこか達観した眼差しが、見た目的には俺と大差ない年齢だろうにすごく大人びて見える。
たしか18歳だったよな、この人。ああでもなんか、探査者になる前から古い武術を修めていたとか聞いた覚えがある。
GW時点でレベル30とかそこらだったはずなんだけど、それでもやたら強かったんだよね。堂に入っていたというか、立ち振る舞いが戦うことに慣れていたというか。
深くは聞かないほうがいい、なんて恐ろしい忠告まで受けていたから、よっぽどヤバいバックボーンがあるのは間違いないと思うんだけど……それにしてもどうあれ、年齢以上に落ち着いて見えるのはたしかだ。
そんな彼は、やはり大人びた笑みで俺に言う。
「その年でそんな顔をしてしまえることは、喜ぶべきか悲しむべきか悩むなあ……ああいや、これは君に対して失礼な物言いだ。ごめんね」
「あ、いえそんなことないですよ。お気になさらず」
「バカンス期間っていうなら、ゆっくり静養するといいよ。時間は有限で、それゆえ価値があるから。君にとって夏休みが、価値あるものであることを祈るよ」
穏やかな口調が、ひどく優しい包容力を感じさせる。やっぱりこの人、20歳くらいサバ読んでない? 40手前って言われても見た目お若いですねって言いそう。
隣で高木さんが、裏腹の軽妙なノリとテンションで中島さんに絡んだ。
「へへへーいナカちゃーん! 重いって渋いって暗いってェ! もっと気分アゲてこうぜウェイウェイウェー! ウェイウェイウェェェェイ!!」
「さすがにそこまでウェイウェイ言えないなあ、タカちゃん」
相変わらずヘリウムガスより軽くてチャラさ全開な人だなあ。中島さんが苦笑いしている。
たしかこの二人もツアー中に知り合ったんだけど、こうやって二人組で行動してるってことはあれから意気投合してコンビでも組んだんだろうか?
水と油みたいに対照的だけど、意外にウマは合うってこと、なのかな?
「ウェイウェイウェウェウェウェーイ! ──ところでなんで夏ってテンション上げる感じの季節ってことになってるんだろうね? タカちゃんそこマジ不思議だわ」
「!?」
急に素な感じのテンションに戻るのやめてほしい、ギャップで反応に困る!
つくづく不思議な人だなと、俺はタカちゃんこと高木さんをまじまじと見るのだった。
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