攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
高木さんと中島さんが去り、かわりばんこみたいに香苗さんたちが戻ってきて料理と一緒に席についた。となると今度は俺の番だね。
思わぬ再会にびっくりしたからか、腹がやたらと空いている。激辛料理だけじゃ足りなさそうだし、もうちょいあれこれ頼んてもいいかも。
「それじゃあ次、行ってきますね。すぐ戻ってきます」
「焦らず、ごゆっくりと見て回ってきてください。私たちは何時間でも何日でも何年でも、公平くんを待てますから」
「救世主の再臨を待ち望む……至福の時間です。待つというのは、期待と希望があれば悦びに満ちた行為なのですね」
「そうですとも、使徒宥。いつか必ず出会えるはずと、確信して暮らす日々は胸を甘く焦がしてくれる。最高の待機時間なのです」
「すぐ戻ってきますから! いやほんと!」
異世界転移でもするのかな、俺は? そして年単位で待つくらいなら探すなり、あるいはそれぞれの日々に戻るなりしてほしいんですけど怖ぁ……
逢坂さんと宮野さんが涼しい顔でスルーしているのがなんかおつらい。もう慣れきってるよねそれ、狂信者二人の意味不明な言動に。慣れなくていいよそんなもの、特に非探査者の宮野さん。
「さすがに私たちはそこまで待てませんね……ねえ、宮野さん」
「年単位での迷子で弱りきって半泣き……うーん、なんか違うかも? もっとこう、強い心が追い詰められて、感極まって自然と涙が出るようなシチュエーションとかのほうが、うーん?」
「えぇ……?」
「怖ぁ……」
こっちはこっちでなんか、怖いこと考えてない? 俺を泣かせる妄想を展開とか、してない?
小声でブツブツ呟く程度だから、聞こえてないと思ってるんだろうけど。探査者だから聴力も強化されてるわけなので、バッチリ聞こえちゃってるんですよね。
あえて反応はしないが、この子の業が深くて怖い。なんで執拗に俺が追い詰められて、涙を流すシチュエーションを模索してるんだ。迷子くらいで泣くもんかよ、さすがに。
かわいそうはかわいい、かわいそうは萌える、などと供述する宮野さんは、あるいは伝道師や使徒ひいては救世の会にも匹敵するほどに暴走している気がしてならない。
早く行って料理を持ってこよう。長引けば長引くほど、この空間のカオスさが増していく。
まともなのがお一人、逢坂さんだけという75%から80%どうなしている集団から抜け出し、俺はいそいそとカウンターへと向かっていった。
運良く学生さんのいないタイミング、レジの前に立つ。暇そうにしている学食のスタッフさんがやってきて、笑顔で俺に聞いてきた。
「はいこんにちわ、ご注文なんになさいます?」
「あ、こんにちわ。ええと激辛ラーメンと、えーチャーハンで!」
「ラーメン激辛と、チャーハン! はいどうも、学生証はお持ちですか?」
「えっと、竜虎大学のですよね? あの、僕、学内イベントに参加しに来た部外者なんですけど」
「わかりました、一般の方ですねー。はい、2点合わせて700円になります」
安っ。え、めっちゃ安い。ラーメンにチャーハンつけてセットでもなし、700円っすか。
しかも今、学生証の有無を確認してきたってことは学生さんならさらに割引か、もしくはお得なポイント還元とかあるのかもしれない。楽園かよ〜。
仮に竜虎大学の学生になったら毎日ここで、この安さで腹いっぱいご飯を食べられるわけか。すごく魅力的だな。
ますます大学進学への意欲をそそられる。主に食欲方面で。会計を済ませながらも俺は、キャンパスライスのいいところをまた一つ、見出していた。
そして待つこと数分。思いの外、早くにラーメンとチャーハンが出てきた。
スピーディだなあ。作り置きとかしてるんだろうか? お腹減ってるし人待たせてるし、ありがたいことこの上ないね。
「お待たせしましたー」
「ありがとうございます、いただきますー」
ラーメンとチャーハンがそれぞれ、置かれたトレイを受け取る。後はお箸とレンゲ、そしてセルフサービスのコップに水を注いだら完成だ。俺の昼飯!
さあ戻ろう戻ろう。変に待たせると香苗さんか宥さんが、おかしな伝道行為を逢坂さんと宮野さんにしかけかねないし。
いやでも宮野さんはもう手遅れというか、あれはあれであの二人とは別方向にかっ飛んでる気がしなくもない。
となれば逢坂さんだけなのか、特にそういうのと無縁なごく普通の女の子は……改めて今いるメンバーのアレさに震える。
心なし足早で歩く。逢坂さんまで伝道されたり変な扉を開かれたら、もう俺にはどうにもならないからね。
なんで俺はこんなことを心配しているんだろうね本当。
「ただいま戻りましたー」
テーブルに戻ると、香苗さんたちは待ってましたとばかりに笑顔を向けてくる。逢坂さんも特に変わった様子もないし、伝道とか開扉とかってことにはなってなさそうだ。
トレイを置くと、香苗さんがそれを見て反応した。
「お帰りなさい公平くん。あ、チャーハンも頼んだんですね」
「ええ、なんだかお腹すいちゃって。あと育ち盛りですから」
「15歳、ですものね……」
しみじみと宥さんが、俺の年齢を呟く。
そうそう、15歳だからね。育ち盛りだし、食べれば食べた分だけ大きくなる、はずだ。
イマイチ平均身長を追い越せない俺ちゃんとしては、しっかり栄養を摂取したいところなんだよね、うん。
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