攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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図書館にもラノベが置いてある昨今

『んー、まあまあだったね。この世界は大衆向けですらあのレベルのご飯を食べられるんだから、やっぱり他とは発展具合が違うよ』

 

 ご飯を食べ終えた途端、アルマが脳内でレビューする。

 どうもこれまで食らってきた異世界──自身の元々の世界まで含めているのかはさて、不明だが──とこの世界を比較して、食文化に関しては相当認めているみたいだ。

 思えば端末を操ってこいつ、ひたすらあちこちでご飯を食べてたみたいだしな。よっぽど気に入ったってことなんだろう。

 

 すっかり満腹になった俺たちは、予定どおりに学内の購買部へと向かっていた。

 なんでもこの購買部には書店が隣接していて、通常の書店ではあまりお目にかかれない、学術書などが普通に販売されているのだとか。

 

 システム領域の存在でもある俺としては、ダンジョンやモンスターに対して現状、どういった研究がどの程度行われているかは少しばかり気になるところだ。

 というわけではい、やって来ました購買部。大学生協の施設でもあるここは、広場から目の鼻の先にあり、今も学生さんたちでそこそこ賑わっていた。

 

「授業と授業の合間なんてすごいんですよ。15分の間にあれこれ買いに走る人が一斉にやってくるので、満員電車さながらの光景がいつも見られます」

「それはまた……」

 

 そりゃあそうなるだろうなって思う。目と鼻の先にコンビニがあったら、何がなくとも行くよね。

 仮にうちの高校にコンビニがあったとしても、休憩ごとに人でごった返すのは目に見えてるし。ましてや本屋まであったらもう、満員電車と称されるのも無理からぬ話だろう。

 

「今日はテスト期間ということもあって、あまり賑わってないですね。よかったです……さ、こちらへ」

 

 俺の目には十分賑わってるんだけど、普段の様子を踏まえて宥さんには閑散としているように見えるらしい。

 ちょっぴり戦慄しながら、彼女についていく。

 

 普通の、いかにもコンビニって感じでレジが並び商品棚が何列もある購買部を越えて、さらに奥へ。

 っていうかコンビニの向かいに旅行代理店のカウンターとかあってすごい……ってなる。学生旅行に生協からして手助けしてるのか、至れり尽くせりじゃーん。

 どこまでも充実しているゴージャスさに感心しつつも、俺たちはついに、本屋へとたどり着いた。

 

「お、おおお……本屋だ」

「本屋ですからね……でも、すごく立派な本屋さんです」

 

 逢坂さんにツッコまれるほど当たり前の呟きを、ついつい漏らしてしまった。とはいえ、かくいう彼女も驚いて内部を見回すほどに、コンビニの奥にある書店は堂々たる大きな書店だった。

 その規模たるや、俺の家の最寄り駅近くにある本屋さんにも勝るとも劣らない規模だ。

 

 しかもPOPとか作ってしっかりオススメの本を推薦したり、人気とか話題の本を平積みにして宣伝したりと、言ってしまえば普通の本屋と変わらない企画なんかも実施しているな。

 なんなら漫画とか、ラノベコーナーだってあるくらいだ。大学ってこういう本とかも売ってるものなんだと、俺は少なくない感動を覚えていた。

 

「予想以上に立派なんですね……」

「ふふ。私も、初めて来た時はビックリしちゃいました。学舎内にコンビニがあるだけでも驚きなのに、奥にはこんなしっかりした書店まであるんですもの」

「おまけに旅行会社までありましたね。学生生活を大きくサポートする、まさに生活協同組合ということですか」

 

 宥さんの言葉に香苗さんも、感心したように呟く。いやほんと、こんな施設があるなら大体のことは学内で用を済ませられる気がするよ。

 ハンパねー、大学ハンパねーと思いながらも俺は、さっそくだけど近くの本棚を見ていった。言われたとおりたしかに学術的な、長くて堅苦しいタイトルの分厚い本がずらりと並ぶ。

 む、難しい。コマンドプロンプトとしては理解できるけど、山形公平としては目にも入れたくないそんな本ばっかりだ怖ぁ……

 

「えーっと、探査学探査学……っと、あった」

 

 お目当ての探査学部関係の棚を探し、見つける。

 探査学部も複数の学科に分かれているみたいで、探査学科だのダンジョン経済学科だの、果ては探査哲学科だったりと何やら多岐に渡る項目で分かれている。

 そこからさらにスキル学専攻とか称号学専攻とか、専攻ごとにも分岐してるんだからややこしい。

 

 とりあえず、スキル関係の研究本を一冊、手にとってみる。"スキル・称号学研究"。読んで字の如くのタイトルで、世の探査者たちの持つスキルや称号について、これ一冊である程度踏み込んでいる本みたいだ。

 パラパラっと捲ってみる。大判の分厚さに300ページ超、細かい文字でまあビッシリとスキルと称号、そして探査者についてあれやこれやと書いてあるな。

 

 探査者がスキルを得ることで、どのような変化がもたらされるのかとか。称号名と称号効果の関連性とか。それなりにああだこうだと述べているか。

 著者は首都圏の有名大学、探査学部の教授さん。自身もA級探査者で探査者とスキル、称号の関係についていくつもの論文を発表しているか。ふむ。

 

「これ、買おうかな。オペレータについてある程度、現行の学説を書いてるみたいですし」

「……あっ。もしかして公平くん……探査者について人間がどの程度まで研究できているのかを確認するために、書店へ行きたいと?」

「ええ、まあ。単なる好奇心ですけどね」

 

 香苗さんが、心なし小声で尋ねてきた。

 別にそのへんは隠す話じゃなし、いいんだけどね普通に話してくれて。そもそも宥さんも逢坂さんもそのくらいの声量なら聞こえるだろうし。

 

 それはさておき質問自体は的を射ている。まさしくそのとおりで、俺というコマンドプロンプトが人間たちの、オペレータについてどういった理解をしているのか知りたいから本屋に寄ってみたかったのだ。

 こういうところの香苗さんの察しのよさは、さすがというほかない。出会ってからずっと俺の傍にいてくれただけはあって、俺の思惑とか意図を、割と正確に掴んでくれるよね。

 

 掴んだ上で暴走する時はとことん暴走するんだけど……そこは香苗さんだしね。仕方ない、ということにしておこう。

 そう自分に言い聞かせながらも、俺は首肯した。




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