攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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最初はみんなレベル1

 さてさて、佐山さんやインタビューのことはさておいて。俺は組合本部に出向き、受付にてダンジョン踏破の任務を受けた。

 今のところ平日は概ね二、三日に一回くらいの頻度でこうしてダンジョン踏破をしている。学生としてはまずまずのペースらしい。

 

「それでは資料はこちらになります。E級探査者、山形公平さん。探査者の誇りと勇気でどうか、ダンジョン踏破を祈ります」

「ありがとうございます」

 

 毎度のやり取りを経て資料をゲット。今日挑戦するダンジョンはうちの学校近くにお住まいの田山さんが所有されている、田んぼのど真ん中にできたダンジョンだ。

 階層は2、部屋数は8とごく普通の構成である。問題はない。ソロでの実力は既に、B級モンスター相手でも引けを取らないからな。

 

 ちなみにスタンピード以降、こうして暇さえあればダンジョン探査に乗り出している。俺のステータスは今、こうだ。どん!

 

 

 名前 山形公平 レベル68

 称号 道を拓き邁進せよ、今は積み重ねる人よ

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 

 

 称号 道を拓き邁進せよ、今は積み重ねる人よ

 解説 一歩でも、前に進もうとする意志そのものが、あなたの何よりもの素晴らしさ

 効果 ダンジョン踏破時、レベルが1アップする

 

 

 ご覧のとおり、レベルが跳ね上がってるし称号も変わっている。スタンピード以後にダンジョンを踏破した折、《生まれたての奇跡を温める人》から変化してずっとこのままだ。

 

 

 《……今は努力の時です。あなたの積み重ねが、やがては状況を打破する決定的な鍵となるでしょう》

 

 

 とは、例によって世界初称号であるこの称号を獲得した際の、システムさんからのメッセージだ。

 要するにしばらく何もないから、思う存分に修行して備えといてね! っていうことだろう。

 

 明らかに何かが待ち受けているのを前提にしているのがおっかないが、効果のダンジョン踏破時のレベルアップってのも破格極まりないし。

 用心に越したことないので、こうして日々、踏破に勤しんでいるってわけだ。

 

「お待たせしました香苗さん。それじゃあ、行きましょうか」

「はい。今日もバッチリ、あなたの道程を記録しますよ」

 

 ロビーにて待ってくれていた、先輩探査者にして俺を救世主と呼び、自分を伝道師と呼んで憚らない御堂香苗さん──香苗さんと合流する。

 相変わらず俺のダンジョン踏破に同行して、スマホで撮影して配信するのが日課のようだ。自分の探査業は大丈夫なんですかA級トップランカーさん、と聞いたら、

 

「ご心配ありがとうございます。けれど公平くんがいない間、適度に踏破もこなしていますので。大丈夫、あなたのご迷惑にはなりませんよ」

 

 と、大人の余裕を前面に押し出して豪語していた。

 こういう時、香苗さんの実力の高さと段取りの良さ、大人としての頼り甲斐を感じることができて俺は好きだな。

 

「ですので今日も、救世主が辿る神話の工程を一つ一つ! 丁寧にじっくりねっとり、このスマホに収めて! 未だ救いが訪れたことに気付かない人々に教えて回るのです! さあ行きましょう公平くん!」

「あっ、はい」

 

 もっともこうして、大人モードの香苗さんはろくに長続きしないわけだけど。

 でもそういうところも、なんだからしいかなって。狂信者ムーヴにもそう思えてしまうんだから、いよいよ俺もおかしなことになってきたかなと苦笑いを浮かべた。

 

 組合本部を出る。いつもならダンジョンに直行するわけだが、今日はちょっと違う。本部施設の横にある、探査者用品を取り扱う専用ワークショップに寄っていくのだ。

 

 E級になってからあそこに行くのは初めてだ。装備や備品を交換するにしたって、前使ってた備品とかを使い切ってから買い替えたかったというエコ精神が発動し、そして使い切ったのが昨日のことだった。

 今日でようやくF級の、本当に最低限の性能しかない品々からはやっと卒業できるみたいだ。多少便利なアイテムが選択肢に入り始めるそうなので、俺としても期待している。

 

 そもそも最初からE級のアイテムを買わせてくれれば良いのに。そもそも、等級ごとに制限する意味なんてあるんだろうか?

 答えてくれたのはやはり、香苗さんだった。

 

「疑問はもっともですね。ですがまあ、ここにもそれなりに世知辛い話がいくつかありまして」

「世知辛い?」

「ええ。まず、前提としてF級探査者というのが界隈においては見習いであり、一人前ですらない扱いを受けるというのがあります」

 

 そうなのだ。俺自身、インチキスキルとインチキ称号のガン積みで忘れがちなんだが、F級って本来、マジでド素人スタートが当たり前なんだよ。

 

 剣を振らせればバランスを崩して転ける、攻撃を受ければ初めて受ける衝撃に慄いて戦意を喪失する。新人研修の甲斐もあってアイテムの使用には問題ないけど、それにしたところでそもそもダンジョンの独特の空気、空間に気圧されたりもする。

 それがごく普通の、一般探査者ならば誰しもが通るF級探査者の実像ってやつなのだ。

 

「ですので、まず探査者はF級として、拙い装備でも戦えるやり方を身に付ける必要があるんですね。身の丈に合わない良質な装備でのゴリ押しでない、最低限度の実力を備えるんです」

「それで、言っちゃうと普通のワークショップと変わらないものをぼったくり値段で売ってるんですか……」

「まあ、F級でも探査者ならば金には困りませんしね。こういうところが次の問題にも繋がってくるんですが」

 

 そう言って香苗さんは、ニコリと笑った。

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