攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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痛みに耐えてよく頑張ったけど、またやれって言われたらもう無理。

 結局俺と逢坂さん、宥さんがそれぞれ本を一冊ずつ買った。学術関係の本を買ったのは俺だけで、後の二人は新刊らしい少女漫画を購入していた。

 それらを抱えて、広場から少し離れたところにある休憩用スペースへと向かう。テーブルと椅子が並び、すぐ近くには大学関係者専用の図書館があるという、なんともアカデミックな休憩場所だ。

 

「さてさて……っと」

 

 各々椅子に座り、一息つく。なんのかんのあと30分かそこらで、探査者イベントの午後の部が始まる。あまり時間はないかもだけど、さっそく購入した本、"スキル・称号学研究"を読んでみるか。

 時間もないし、じっくり読むのは家に帰ってからとして、とりあえず目次を見ていく。気になるところをパラパラと抜き取りで見ていこうかな。

 

「…………ふむふむ。なるほど」

「何か面白い記述はありますか? 公平くん」

 

 隣に座る香苗さんが、横から本の中身を覗き込みつつ尋ねてくる。普通に密着してきてるのすごいよねこの人、マジで距離感どうなってんだろう。

 俺としてもドギマギものなんだけど。いい匂いがするなあと思いながらも、適当に捲ってみた箇所で面白い部分を見つける。質問に答える意味でも、俺は彼女に該当部分の文章を指さし、示した。

 

「"探査者が獲得できるスキルの数は、あるいは個人の性質や素質によって異なる可能性がある"……大当たりですね、ここ」

「……っ!?」

「本当ですか!?」

 

 何気なく正解だよと述べたら、香苗さんばかりか向かいで宮野さんと少女漫画を読んでいた逢坂さんや、宥さんまでもが大きく食いついてきた。

 探査者としては聴き逃がせない情報だからね、無理もない。反面、宮野さんは当たり前だけどキョトンとしている。

 彼女に少女漫画を渡しながらも、逢坂さんが困惑した様子で聞いてきた。

 

「ど、どういうことなんです? 探査者によって、得られるスキルの数が違うって」

「そのまんまの意味だね。ええと……なんていうかな」

 

 要はオペレータごとにスキルを受け入れる容量が決まっていて、その容量を満たすまでは好きなだけスキルを獲得できるって話なんだけど……

 スキルのほうも各々、使用領域の大きなものとか小さなものとかがあるからなあ。まとめて説明するとシステム側に寄りすぎてややこしいし。オペレータ側の話だけしておこうかな。

 

「探査者ごとにキャパシティ、器がそれぞれあって、そこに入る限りはスキルをいろいろ詰め込めるけど、満杯になったらもう手に入らないよ、みたいなイメージかな。そういう仕組みになってるんだよ。あー……知り合いのWSOの人がポロッと漏らしてた」

「え……そ、それって私たちが聞いたらまずいんじゃ」

「別に? こうして本でも仮説が成り立ってるレベルだし、構いやしないよ」

 

 どこでそんなことを? みたいなことを聞かれたら言葉に詰まりそうなので、予め言いわけしておく。

 香苗さんと宥さんは事情を理解しているからアレだけど、逢坂さんはシステム側の話なんて蚊帳の外だからね。

 

 というわけで知り合いのWSOの人、要するにソフィアさんなりヴァールなりにこのへんの話は引っ被ってもらおう。なあに、本で書かれてるくらい正解に到達したからこうして口にしたんだし、別に広まっても問題ない話だ。

 そもそも容量限界があるって言っても基本、どんなにそれが小さい人でもそこそこのスキルは獲得できようになっているからね。

 何より、容量を満たしきるまでスキルを獲得している人なんて今のところ、見たことがないし。

 

 こないだのアンジェさんやランレイさんは使用領域の大きな稀少スキルを獲得したこともあって、結構容量を使ってると見たけど……

 それでも多少の余裕はあるし、あと2つ3つはスキルを獲得できるんじゃないかな。たぶん。

 

「た、たしかに、条件を満たしてもスキルを獲得できなくなった、スキル獲得マニアの話はたまに聞きますけど。そんなことが」

「スキル獲得マニア……」

 

 呆然と呟く逢坂さん。いやむしろ、そっちのがよっぽどそんなことがって感じなんですけど。なんにでもいるよなあ、マニアの方。

 いろいろ思い当たる節があるようで、香苗さんはなるほどと割とすんなり受け入れているね。宥さんも、へえそんなことが、くらいにしか思ってなさそうな反応だ。

 と、香苗さんが手を挙げた。

 

「なんでしょう、香苗さん」

「私たちの仕組みについては理解しますが、公平くんはどうなのですか? 明らかに我々とは異なる、特殊なスキルで目白押しですが」

「ああ、あのポエミーなスキル」

 

 暗にアドミニストレータ、ひいてはコマンドプロンプトへの言及だ。続けざまにぼそっと呟いた逢坂さんのああ、アレねみたいな反応がおつらい。

 誤解しないでくださる? 好きでポエミーやってるんじゃないんですのよ?

 

 と、さておき質問にどう答えたものか数秒、考える。

 ぶっちゃけるとアドミニストレータは容量とか以前に、専用スキルが強力すぎて下手な使い方すると、体のほうが先に崩壊しちゃうんだよね。

 

 俺の場合だと《風さえ吹かない荒野を行くよ》とか《誰もが安らげる世界のために》の倍率を上げすぎるとそうなるし、実際そうなりかけた。

 歴代アドミニストレータなんかレベルの概念がなかったもんだからもっと深刻で、いくつスキルを獲得できるかというより、どこまでスキルに耐えられるか、のほうが重要だったほどだ。

 

「ええと。俺の場合、容量とかよりまず、スキルの反動が凶悪ですから。獲得上限とかは二の次三の次なんですよね」

「……話には聞いています。先の決戦の際にも、肉体を崩壊させながら都度、リーベちゃんの《医療光粉》で無理矢理治癒して戦っていたと」

 

 納得した顔をしつつも、辛そうに香苗さんが言った。

 まあ、話で聞くとかなり壮絶だよね。壊れていく体を無理矢理繋ぎ止めて戦ってたってのは。実際マジで頭おかしくなるくらい痛かったし、それもあって、神魔終焉結界を創ったんだよなあ。




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