攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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にこやかな死刑宣告

 さてそろそろ休憩が終わる。俺たちは読書もそこそこに切り上げて、再びイベント会場へと向かった。

 第二学舎を出て信号を渡り、部活棟の隣りにある施設へ向かう。入口付近が集合場所で、すでに大体の参加者が集まっていた。

 無論、二手に分かれていた俺たちのグループ、リンちゃんやベナウィさんたちもいるね。

 

「公平さん! お疲れ様!」

「兄ちゃ〜ん、おつかれえ〜」

「お疲れ様……って、おおう」

 

 元気に手を振るリンちゃんは相変わらずだけど、その後ろに控える優子ちゃんやリーベたちがちょっとなんか、こう、グロッキーだ。どうしたどうした、何があった。

 見ればみんな、お腹を押さえている。ていうか結構膨らんで見えるけどもしかしてこれ、食い過ぎ?

 

「いやあミスター・公平。ミス・フェイリンは凄まじいですねえ」

 

 苦笑いを浮かべながらも引率の、ベナウィさんが話しかけてきた。彼も彼で少しお疲れ気味というか、若干ゲッソリしている。

 詳しく話を聞いてみると、案の定というべきか……学食暴食ツアーとはまさにこのことか、と言いたくなる様相を、主にリンちゃんが展開していたらしかった。

 

「学内にある四つの学食を巡り、そのすべてにおいて成人男性の2食分は平らげていました」

「てことは、計8食分……?」

「いかな探査者といえど、あそこまで食べる方はそうそういません。恐るべしミス・フェイリンでしたね」

 

 怖ぁ……前に行った中華街の時よりハチャメチャ食べてるじゃんリンちゃん。ベナウィさんがここまでドン引きしてるとこ、初めて見たよ俺。

 マジで全店舗巡ったんだな、と畏敬の念とともに眼差しを送る。俺だけじゃなく話を聞いていた、香苗さんや宥さんたちもだ。

 

「すごいですね、フェイリンさん……」

「美味しかった! たくさん食べた、満足満足! えへへへ!」

 

 かわいらしく笑って、実際かわいいんだけども。その実各学食を踏破して回った、グルメモンスターのような何かなのだから末恐ろしい。

 思えば姉のランレイさんも、モンスター素材食という珍味方面ではあるがグルメな人みたいだったなあ。シェン一族はみな、食に関しては特別な思い入れを持ちやすいんだろうか。

 

「リンちゃん……すごい勢いで食べてた……」

「ズビズビズババーってー……お腹ペコペコリーベちゃんでもあれは無理でしたよー」

「ズビズバて」

 

 すっとんきょうな擬音を口にしながらも、やはり疲れ切った顔のリーベ。家じゃしこたま食いまくってるこいつでもこうなるとは、恐るべしシェン・フェイリン。

 

 と、そろそろ午後の部が始まるみたいだ。小早川さんがやってきて、俺たち含め参加者全員に呼びかけた。

 

「お待たせしましたみなさん。カレッジサーチャーズ竜虎大学主催、探査者イベント午後の部をただいまより開始いたします」

 

 相変わらずいい声な人だな。マイクもないのによく通る。

 で、朝に受付をしていた藤代さんともう一人、相方の男の人がそれぞれ距離を置いて俺たちの前に立った。

 両人ともにメガホンを用いて、声を張り上げて告げる。

 

「午後の部は探査者同士による戦闘演習と、ゲスト探査者の御堂香苗さん、ベナウィ・コーデリアさんによる特別座談会になりまーす! 演習の参加、見学を希望される方は私、藤代へどうぞー!」

「座談会を見学される方は僕、重松の方まで来てくださーい!」

 

 どうやら演習と座談会を同時に行うため、藤代さんと男の方、重松さんの二手に分かれるみたいだ。

 参加者の人たちはそれぞれ、ある程度どちらにするか決めていたみたいで思いの外、スムーズに移動していく。となると俺たちもどっちかにしなきゃいけないんだけど……

 

「ミスター・公平。それでは私とミス・御堂は座談会のほうへ向かいます。気が向けばぜひ、ご参加いただけると嬉しいですね」

「公平くん! こちらに来るならぜひ見ていてください、演習のほうに参加するならどうかご期待ください! いつでもどこでも伝道師、あなたの御堂香苗が必ずや使命を果たしてみせましょう!!」

「えぇ……」

 

 ベナウィさんはともかく香苗さんが果てしなく不安だ。めちゃくちゃ意気込んでいるけど、一体何に対しての意気込みなのか。そして仰るところの使命とは果たしてなんなのか。予想はつくけど考えたくねぇ〜。

 これ、座談会のほうに行って止めなきゃ駄目なのかな。いやでも、伝道活動の場で本人が出てきて云々するなんて、悪目立ちの極みみたいな感じだよなあ。でも止めないと、イベントの趣旨がおかしくなるしなあ。

 

「公平さん、こっちこっち!」

「え……リンちゃん?」

 

 静かに伝道師を止めようと、腹を括った俺の、腕を唐突にリンちゃんが掴んだ。満面の笑みで、そのまま俺を引っ張っていく。

 向かう先は……藤代さんのところ? って。

 

「演習!?」

「この機会、待ってた! 千載一遇! 公平さん……」

 

 思いっきり演習のところにまで俺を連れて行こうとしている! ちょっと待ってちょっと待って怖い怖い怖い、嘘でしょこの子まさか!

 とっさの予感。リンちゃんが何を望んでこんなことをしているのかをなんとなく理解してしまう。

 そんな俺とは裏腹に、彼女はにっこり笑って宣言した。

 

「私と戦う! アドミニストレータにしてコマンドプロンプト、我が星界拳がどこまで通じるか、勝負っ!!」




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