攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
リンちゃんによる演習への誘いと、俺と戦いたいという提案。
思いも寄らぬ、と言うには正直ね。いずれこうなる時は来るだろうって、ちょっぴり思っていたよ。
だってこの子、俺がコマンドプロンプトだとわかってからちょいちょい、闘志を匂わせてるんだもんよ。なんなら手合わせしたいってダイレクトに言われたことすらある。
星界拳士として、強者と認定した相手とは戦いたくて仕方がないんだろう。探査者として以前に武術家である彼女らしい、闘争心の発露だってのはわからなくもない。
それを考えれば演習という、法に反しない形で探査者同士の戦いができるこの機会は、リンちゃん的にはまさに千載一遇なんだろう。
でもさぁ……ぶっちゃけるけど可能なら遠慮したいかも、俺。
「なんで大学まで来て、リンちゃんさんの蹴りを喰らわなきゃいけないんですか怖ぁ……」
「むー……できたら戦ってほしい。こんな機会もしかしたら二度とないかも。何より星界拳が奥義の数々、ぜひ公平さんにも味わってほしい!」
「それ殺したいって言ってるのと同義なのわかってます!?」
とんでもないこと言うよこの子。星界拳の奥義ったらあなた、三界機構の肉体だってブチ抜ける頭おかしい威力じゃないの。
ましてリンちゃんこそは星界拳正統継承者。純粋な星界拳の威力なら、あのランレイさんの斬鉄脚すら凌ぐ恐るべき力を秘めているだろう。そんな子の蹴りを喰らうなんてゾッとする。俺まだ死にたくないよう。
「ちゃ、ちゃんと手加減する! そもそも手加減どころか、公平さんに通用するかも怪しいよ!?」
「すると思うんですけど。むしろ通用しそうだからここまで言うんですけど」
「むー……」
割とマジで言っているのが伝わるみたいで、鼻息の荒かったリンちゃんも次第に、意気を削がれて消沈していく。
悲しげに萎れる様子がかわいそうなんだけど、ここで譲歩すると俺の生命がかわいそうなことになる。心を鬼にして、毅然とした態度でどうにか見逃してもらえません? と頼み込まねば。
キリッと顔を引き締め、リンちゃんに断固たる姿勢で立ち向かおうとした、そんな矢先だ。
まさかの横槍が入ってきた。さきほどにもお会いした、言い方はあれだけど割と凸凹感のあるコンビが俺に、話しかけてきたのだ。
「ヤマちゃ〜ん!? ウェイ!? え、ヤマちゃんもバトっちゃう系? マジで腹ごなししちゃう系なんウェ〜イ?」
「意外……というほど君のことを知らないか。でもなんだか、座談会のほうに行くとばかり思っていたなあ」
「高木さん!? 中島さんも!」
現れたのはタカちゃんナカちゃん。相変わらずウェイウェイ言ってるほうと、落ち着き払ったほうが意外そうに、俺が演習側に寄っているのを見つけたのだ。
いきなり現れた、見知らぬ男性二人にキョトンとするリンちゃん。特に高木さんのパリピムーヴに目を丸くして、俺に戸惑いとともに聞いてくる。
「知り合い? うぇー? うぇ?」
「あ、ああうん。友だちの探査者の人たちで、高木さんと中島さん」
「ウェェェェイフゥーッ! C級探査者の高木デーッスェーイ! ッチコーイ、タカちゃんって呼んでよゲストのシェンすぁーん! ヨロヨロヨロシクゥッフゥーッ!」
「D級探査者の中島です。こちらのタカちゃん……高木と合わせて、そちらの山形くんとは数ヶ月前にともにダンジョン探査をしました。よろしくおねがいします、シェン氏」
「よ、よろしく? うぇい? ふー? ちこーい? え?」
「わかる」
初対面で高木さんのノリは、よっぽど波長が合わない限り間違いなく今のリンちゃんみたくなると思うの。具体的に言うとね、異世界の奇祭を目の当たりにしたみたいな混乱。
なんなら数ヶ月前の探査者ツアーで初めてお会いした時、俺も中島さんもこんな感じだったと思う。俺に至ってはパリピへの恐怖も合わさって怖ぁ……怖ぁ……言ってた記憶がある。今でも言いそう。
そんな、俺やリンちゃんをも困惑させるハンパねーパリピ、タカちゃんさんは、今度はおもむろに俺に近寄り、肩を組んで陽気に笑う。
「ヤ〜マちゃ〜ん! っぱスゲーわヤマちゃ〜ん! シェンさんとタイマンで演習やるんしょ? っべーわマジっべーわぁウェーイ!」
「え。いえ、俺はそんなつもりは……」
「────! そう! 公平さん、私と戦う! うぇー!!」
「!?」
どうやら高木さん、俺がリンちゃんと戦うもんだと思ってるみたいだけど、むしろそこは問題じゃない! リンちゃんが乗っかってきた、既成事実を作るつもりだこの子!?
うぇーうぇー! と舌足らずに高木さんの真似をしながら、しれっと強硬策に出た少女の強かさに一瞬、不意を突かれる。そしてその隙に、中島さんまで乗ってきちゃった。
「シェン氏やコーデリア氏と知り合いなのもさすがだけど、まさか演習とはいえ、死合おうなんてね。ドラゴン騒ぎの時にも思ったけど君は、勇気があるというか命懸けというか」
「勇気もないですし命を懸けたくもないんですけど!?」
「そうなのか? ……でももう、周囲もすっかりそのつもりみたいだ」
「え?」
言われて周囲を見る。演習に参加するために藤代さんの元に集まっていた人たちがみな、俺とリンちゃんを期待の目で見ている。
ところどころ、シャイニング山形とゲストがタイマンするとかなんとか話しするのが聞こえてくるね。うん……
やられた。完全に場の空気を、俺とリンちゃんが戦う方向に持っていかれたか。見事な手際だと言わざるを得ないね、これは。
「怖ぁ……」
「……なるほど、話が見えてきた。シェン氏の作戦勝ちってところかな? 殺し合いにはならないだろうし、まあいい機会だと思って胸をお借りしなよ」
まさかの搦手を使って、しかももののみごとに俺を嵌めてみせた策士リンちゃんに慄く。
その様子に、すべてを察したらしい中島さんが笑って俺に言ってきた。うーむ。
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