攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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今だ、エールを山形に!

 放たれたそれぞれの技。リンちゃんは燃え上がる右足で星界拳奥義・星界盤古拳を打ち、迎え撃つ俺は、右腕に収束させた全エネルギーを一気に、ビームとして放出する。

 当然ながらお互いに、ターゲットはお互いだ。それゆえ俺めがけて流星のように鋭くまっすぐに急降下するリンちゃんと、彼女めがけてビームをぶっ放す俺という構図になっていた。

 

「しぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!!」

「うおおおおあああああっ!!」

 

 右脚とビームがぶつかり、激しくスパークする。

 威力を相殺しあって生じるショックウェーブが、俺たちの周囲のみならず、この空間内の隅々にまで波及していくのがわかった。

 

「す、すげえ!? キックとビームで競り合ってるよ!?」

「映画みたい! え、探査者ってこんなことできるんだ!?」

「できるわけないだろ! あの二人がおかしいんだよ!」

「シャイニング山形、ヤッバぁ……」

 

 空間ごと激しく揺さぶられる光景に、観客のみなさんの盛り上がる声が聞こえた。

 もちろん殺傷性はない、ちょっとした突風くらいのもんだけど。それでもそちら側にまで余波が及んでいるのを、映画みたいで済ますのかよ怖ぁ……

 

 ノリのいい観客さんたちに思わず、気が抜けそうになるけどさて、どうしたもんか。

 今のところリンちゃんとは拮抗状態だけど、いつまでもこうしてるといよいよ余波が大変な影響を及ぼしかねない。何より時間を取りすぎると、他の人の演習時間を奪うことになっちゃうしね。

 

 そう、にわかに考える矢先。観客たちの中から、力強い声が響いた。

 

「──兄ちゃん、頑張って!!」

「どうか悔いなきように! 公平様!」

 

 それは、俺の大切な人たちの声。いつだって俺を支えてくれた声。

 最愛の妹、優子ちゃん。俺をいつだって信じてくれる、宥さん。

 

「シェンさんやっべえなウェェェェイ! ナカちゃんもやろうと思えばできんの? あれ!」

「いや、さすがに無理だね……山形くんもだけど、参ったな。思ってたより何倍も強い。自信が砕ける思いだよ」

「ドーンマイドンマァイ! ナカちゃんこれからこれからぁ! 今やれること、しっかりやってりゃ追いつけるぜきっとぉ!」

「……そうだねタカちゃん。さしあたっては、二人を応援しようか。頑張ってくれ、シェンさん、山形くん!!」

「ウェイウェイウェェェェイ! 頑張れ二人ともぉ、ウェーイ!!」

 

 友人たちのエールも聞こえてくる。

 なんだかんだ大人らしい高木さん。いつだって冷静に、そして前向きに考えていける強さを持つ、中島さん。

 

「うおおおっ! やれ、そこだシェンさん!」

「セクハラ救世主に目にもの見せてやれー!」

「キャーッシャイニングーッ!!」

「私の恋のツボも刺激してーっ!!」

 

 そしてそんな彼ら彼女らに触発されて、我先にと応援してくれる観客のみなさん。

 誰がセクハラ救世主だ、さっきの指圧は仕方ないだろ! 恋のツボってどこだよ俺が知りたいわそんなもん!!

 ──と、ツッコミを入れながらも心が震えていくのを感じる。

 

 知ってる人も、知らない人も。

 いつも傍にいてくれる人も、久しぶりに会った人も。

 この場にいる誰もが、俺たち二人を励ましてくれている。力を尽くして、悔いのないようにと。健闘を祈ってくれている。

 

 これに応えないなんて話、あっていいわけないよな……!

 心が震える。力が引き出されていく。呼応して、身体が光っていく。

 シャイニングだ! シャイニング山形が出たぞ!! という周囲の声も遠くに響かせ俺は、この状況を打開することに集中した。

 

 拮抗状態でも、俺のほうにはできることがまだあるんだ。

 リンちゃんももしかしたらランレイさんから、このスキルのことも聞いてるかもしれないけどね!

 

「俺の勝ちだ、リンちゃん」

「っ!?」

「──《清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師》! でりゃあっ!!」

 

 あえて使っていなかった、こないだ創造したスキルを発動する。《防御結界》同様、ある種の結界型スキルだ。

 神魔終焉結界がないため、ごく一瞬、ほんの一撃分しか放てないけど……だからこそこの状況においては切り札たり得る。

 

 眼前に発生した空間の歪みに、すかさず空いているほうの左腕を振るう。《風さえ吹かない荒野を行くよ》のバフさえない素の力だが、それでもレベル700オーバーの探査者による一撃だ。

 それが空間を隔ててビームの向こう側、リンちゃんの右脇腹を強かに打つ。

 

「っ、うあっ!? えっ!? 誰、何!?」

 

 完全に星界盤古拳に集中していたところを、柔らかな側面を突然突かれたのだ。いかなリンちゃんでも対応などできない。

 反射的に攻撃されたほうに意識が割かれ、力と体勢が崩れる。俺のビームと拮抗している状態でそれは、命取りだな!

 

「──今だ! でぃぃぃやあああああああっ!!」

「!? し、しまっ……きゃあああああああっ!?」

 

 できた隙は決して逃さない。俺は一息にビームを押し込み、そのままリンちゃんを圧倒していく。

 青白いビームが、彼女の姿を呑み込む。完全なるクリーンヒット。数秒ほどその状態が続いたあと、俺はたしかな手応えとともにビームを放ち終えた。

 

 後に残るは空中にて力を失い、墜落していくリンちゃんの姿。

 問題ない。俺はジャンプして彼女を横抱きにキャッチして、そのまま舞台の外へと着地した。




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