攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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普通の探査者はね、光ったりしないし、ビームなんて放たないし、やること全部がめちゃくちゃだったりしないの

 リンちゃんとの演習、一応これエキシビションという体裁だったりしたんだけどそれが終わって、ようやく一息つけた俺。

 彼女や優子ちゃん、宮野さんたちと並んでベンチに座りつつ、一仕事終えたリラックス感とともに気楽な気持ちで他の探査者さんたちの模擬戦を見学していた。

 

「《槍術》、オパールグリーン・ショックウェーブ!」

「なんの!」

 

 舞台の上、演習用の槍を自在に操り技を披露するのは高木さんだ。鋭くもコンパクトに振るった穂先が、相対する探査者へと向かう。

 同じく演習用の盾を構え、ピンポイントで穂先を受け止めるのは宥さん。そう、今まさに高木さんと宥さんが模擬戦を行っているのだ。

 

 防いだ槍先を、盾を持つ右腕を振るって弾く。そして左手に持つ剣で今度は打って出る宥さん。

 前にリーベが言ってた戦法か……防ぎ、弾き、そしてカウンター。派手さはないが堅実に攻め立てる、宥さんらしい慎重なスタイル。

 防御寄りながらも攻撃の糸口は掴む、そんな渋い立ち回りが彼女の持ち味と言えた。

 

「そこぉっ!」

「さっすがぁっ! ンでもこっからがぁっ、タカちゃんの腕ン見せ所なんっすわぁっ!!」

「えっ……な、あ!?」

 

 さりとて高木さんも負けてはいない。やはり戦闘時ゆえか、いつもより獰猛な笑みを浮かべて叫ぶ。

 同時に宥さんの顔色が変わった。見れば槍を受けた盾が激しく脈打ち振動している。波紋を刻むように、そしてそのまま右腕さえも震わせている。

 ただごとでない。咄嗟のことで思わず硬直した彼女に、高木さんは槍を再度振るった。

 

「ぃよいしゃあっ、《槍技》ァ! ハンターグリーン・ショックウェーブゥッ!!」

「! ……《防御結界》ッ!!」

 

 槍の柄で狙い定めて放たれる突きに、追い詰められて宥さんは虎の子のスキルを発動した。

 《防御結界》。数分間だけあらゆる衝撃、威力破壊を防ぐバリアを張る絶対防御壁だ。数ヶ月前にはドラゴンの攻撃さえ防ぎ、そもそも精霊知能たるリーベが用いるような高性能を誇る。

 

 ガキン! と甲高い音を立てて高木さんの槍が弾かれる。

 ただでさえとてつもない硬度の防御壁、ましてや演習用になんだっけ、エアリアルハイパークッション? でできている槍では、どれだけクリーンヒットしたところで衝撃一つ通るはずもない。

 一時を凌いで仕切り直すには絶好のスキルと言えるだろう。宥さんは、痺れているらしい右腕をちらりと見て言った。

 

「オパールグリーン・ショックウェーブでしたか……発生させた振動を、触れた盾をとおして私の右腕にまで? 恐ろしい技ですね」

「ウェーイ……結界で強制的にリセットはパネーっすわ〜。今のわりかし、大技だったんすけどー」

 

 伝導する振動、とでもいうべき性質を持つらしい今の槍技──オパールグリーン・ショックウェーブの威力。冷静に受け止めてバリアの中、その正体を看破する宥さんもさすがだけど高木さんもすさまじい。

 《防御結界》発動中はお互い手出し不能と悟り、一旦距離を置いて構え直したのだ。軽口を叩きつつも一切の油断なく、次なる大技の準備に取りかかったのだ。

 口笛を吹きながらも、嘯く。

 

「ヤマちゃんの追っかけ? だからって加減はしないんでそこんとこヨロヨロォ〜……そのバリア、重ねがけできないっしょ? っしたらァ《防御結界》が切れた時が決着っしょウェ〜イ」

「うふふ。かもしれませんね……あと私は公平様の追っかけなどではありません、使徒です。御方につき従い御方に寄り添い御方への揺るぎない想いとともに生きる、使徒望月宥です」

「……パネー。こえー。絶対なんかあんじゃんコレェ」

 

 宥さんは宥さんで、余裕を見せてまだ切り札があると示唆しているし。腹芸使うよなあ。その後のアレなカミングアウトについては私は存知しませんが。

 どうあれ警戒せざるを得ない高木さん。二人の決着は、バリアが消えた瞬間に決まるようだった。

 

「そして、あっちはと」

「……あ。向こうは決着してるよ、公平さん」

 

 一方でもう片方の舞台上、どうやら決着したらしい演習を見る。こちらはリンちゃんが熱心に見ていたようで、興味深げに丸い瞳が輝いている。

 舞台にいるのは……中島さんだ。見知らぬ探査者の男性が倒れ伏すすぐ傍に立ち、軽く一礼している。

 

「ありがとうございました。いい経験を積ませていただきました」

「い、いや……こっちこそ、大したお相手もできずに」

「そんなことは、決して」

 

 紳士的なやり取りをしつつも手を差し伸べ、相手の人を立たせる。冷静沈着だよなあ、あの人。勝っても全然はしゃいでる感じじゃないし。

 と、隣でリンちゃんが言った。

 

「かなりの腕前……探査者としてより、武術家としてのクンフーがすごい」

「え、中島さんのこと? たしかに、なんか探査者になる前から武術を修めていたって聞くけど」

「修める、なんてレベルじゃない。体捌きだけでもわかる。あの人、ただ者じゃない」

 

 淡々と言うのが逆に迫力あるな。リンちゃんの中島さんを評しての物言いは、どこか鋭さを伴って聞こえる。

 星界拳正統継承者という、極まった武術家であるこの子にそこまで言わせるとは。一体中島さん、どんな戦いを見せたんだ?

 高木さんと宥さんも気になっていたけど、中島さんは中島さんで気になる。そんな演習の時間だった。




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