攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

450 / 2046
地震・雷・火事・星界拳

 なんのかんので演習も各自、行う側とそれを見る側とに分かれて盛り上がりつつ進行している。

 途中途中でリンちゃんや、あと俺のコメントを欲しがって参加者のみなさんがやたら質問してくるのには参ったけど、それを含めても有意義な時間だと思う。

 

「《隠密》と《幻術》を組み合わせてましたけど、今の探査者さん。そのへんシャイニングさんとシェンさんとしては、何か思うところなどあります?」

「え、いえその……リンちゃん、どう?」

「私? 公平さんのほうがスキルにはたぶん、詳しいよ?」

 

 今、舞台上で繰り広げられている探査者同士の戦いにおいては幻を作り上げる《幻術》と、物音を完全に消して動ける《隠密》を組み合わせてのゲリラ戦法が繰り広げられている。

 珍しいスキルを組み合わせてのそうした戦術に、見学者の人から俺たちに向けて質問が来たのだ。

 

 今回のイベントのゲストはリンちゃんで、俺はあくまで参加者だからね。と、即座に応えるのも憚られたのでとりあえずリンちゃんに振ったところ、即座に返されてしまった。

 いやそりゃ、実質そうかもしらんけど。立場的にはリンちゃんが先でしょうにと苦笑いしつつ、質問してきてくれた人に答える。

 

「ええと、シェンさんの前に俺からちょっと思うところを言いますね」

「はい!」

「……《幻術》を使用して遮蔽物を作り、《隠密》を使用してそこに隠れることで相手の《気配感知》を無効にする。理に適った組み合わせで、とてもスマートなやり方だと俺は思います」

 

 舞台で戦う片割れ、件の2つのスキルを駆使している探査者さんを見る。得物は弓矢で、遠くからチクチク攻め立てている。

 相手しているほうは刀を使う近接型のスタイルらしいから、相性的にはバッチリだ。組めば隙がなく、相対すればどちらかにとって一方的な試合運びになる噛み合いっぷりだね。

 

「前提になる2つのスキルがそれぞれ、結構レアなスキルというのもありますから、2つとも持っているあちらの探査者の方は、普段から相当御活躍されてるのかなーって思いますね」

「なるほど……ちなみにシャイニングさんならああした相手と戦う場合、どう動きます?」

「え、と。そうですね、まあ遠距離攻撃技はありますので。《幻術》の遮蔽物を利用しての撃ち合いになるかなと」

「相手のスキルを逆に利用するわけですか!」

 

 勉強になります! といろいろ質問してくる参加者の人。探査者で、まだ年若い女の子だ……俺とそう変わらないくらいか。なんかメモとか取ってるし、マメというか熱心というか。

 俺と同じく新人さんだろうか? だったら、なんだか一緒に頑張ろうって言いたくなるよね。俺は補足して続けた。

 

「ええと、あなたはどういうスタイルで探査を?」

「私ですか! あの、おっきなハンマーでゴリ押ししてます! レベル8です!」

「大きなハンマー……」

 

 ゴクリとつばを飲む。見かけ小柄なんだけど、大きなハンマーってどのくらいのサイズなのか。ゴリ押しっていうからにはそれ相応なんだろうけど、案外ものすごいパワーファイターなんだな。

 リンちゃんが興味を惹かれたようで女の子に目を向けた。この子、近接スタイルの話になると結構食いつくな……よもや手合わせしたいとか言い出さないだろうか。レベル差も実力差も相当エグいよ?

 

 さておき、女の子は巨大ハンマーを扱うとのことなので、それに見合った戦い方についてコメントしようか。

 

「あなたがああした相手と戦う場合、実は突破は容易だと思います」

「そ、そうなんですか!?」

「《幻術》の遮蔽物は結局、幻ですから脆いんですよ。ある程度周囲を巻き込んでの範囲攻撃ができるなら、普通に突破できます」

「範囲攻撃……! できます! 思いきり振り回します!!」

 

 やっぱりというべきか、振り回すだけで範囲攻撃として成立するほどのサイズのハンマーなんだな。怪力だわこの子。

 怖ぁ……と、漫画みたいなサイズのトンカチを振り回す小柄な少女の姿を幻視しつつも、俺は加えて言う。

 

「遮蔽物さえ取り除けば《隠密》も片手落ちです。あれは物音を完全に消すスキルであって、姿まで消すことはできませんからね」

「そっか、隠れるものをなくせばそのまま《隠密》ごと無効にできるんだ……! ありがとうございます!!」

 

 スキルの弱点を踏まえつつの所感を述べ終えると、女の子は力強く声を張った。

 なんていうか元気な人だなあ。スポーツ少女って感じで、夏の青空によく似合いそうな笑顔でいらっしゃる。

 ちょっとはアドバイスみたいな形に、なってくれていたらいいんだけどなあと思っていると、再度少女はリンちゃんにも問いかけていた。

 

「シェン先生の場合、ああした相手にどう戦いますか!?」

「ん……やっぱり範囲攻撃、かな? 星界轟滅脚で地面を踏みつけて揺るがして、バランスを崩させたり」

「……え、地震?」

「星界風波拳、乱撃で生み出した衝撃波で周囲を切り刻んだり。それで相手が怯んだらすかさず懐に潜り込んで、星界龍拳!」

「し、衝撃波……」

「星界拳士だもんなあ」

 

 大地を揺るがすだの真空波だの、およそ一般的でない現象を引き起こしてみせるとこともなげに語るリンちゃん。聞いていた周囲もドン引きというか、えぇ……みたいな顔をしている。

 まあ、マジでおかしいからな星界拳。姉のランレイさんとか右脚一つで風のバリア作り出してたしね。




ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします
書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。
Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。