攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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御堂がハープを奏でる時!探査者イベントは生伝道ライヴに変わる!

 あれこれカードを変えて模擬戦すること数時間。時刻も15時を迎えようとしていて、イベントのスケジュール的にはもうそろそろ締めのタイミングとなっていた。

 藤代さんの元にみんな集う。何人かのスタッフさんと後片づけやら打ち合わせやらしているみたいで、あともう少し自由時間はあるみたいだ。

 

「イベントもそろそろ終わりですね、公平様」

「そうですね……長かったような、短かったような」

 

 宥さんの言葉に、なんとなししみじみ返す。

 このあと座談会をしていたグループと合流して、改めて講堂で閉会式を行って16時前には解散となる。帰りは行きのルートを逆行するだけなので、家につくのは大体17時過ぎとか17時半とかになるね。

 

「リンちゃんも宥さんもすっごくカッコよかった! ね、宮ちゃん!」

 

 優子ちゃんが演習を振り返り、宮野さんにそんなことを言っている。初めて見る探査者同士の戦いに興味津々だったみたいだけど、とりわけリンちゃんと宥さんの戦いぶりには心揺さぶられるものがあったみたいだ。

 たしかにリンちゃんの星界拳は華々しく優雅で華麗で、しかも力強い。宥さんの玄人めいたパリィからのカウンターも、渋くて緊迫感を伴う技巧派の魅力を伴う。どちらも掛け値なく素晴らしい探査者だと言えるだろう。

 

 ただまあ、兄にも一言くらいなんかあってもよくない? ってちょっぴり思うよね。あんな恐ろしい星界拳相手に頑張って、あまつさえ勝ちさえ拾ったんだからまあまあやるんだよ兄ちゃんも。

 ほら、なんかあるじゃん? ビームとか、ツボ押しとか、ゴリラ張りの叩きつけとか。ダブルアームスープレックスとか、最後の奇襲とか。

 

 ……自分で言うのもあれだけど微妙だなあ。特にツボ押し。ちなみにリンちゃん的にはあれ、結構気に入ったみたいであのあと、またマッサージしてほしいとせがまれたよ。

 謹んで肩揉みしたわけだけど、やたら凝ってたのはやっぱり、星界拳正統継承者としていろいろ、苦労しているからなんだろうなあ。

 

 と、妹ちゃんの言葉に、相手をしていた宮野さんが何やらニマニマと胡散臭い笑みを浮かべた。目を細めて口元を歪め、あからさまにニタァと笑っている。

 

「それにもちろん、お兄さんもだね優子ちゃん」

「えー? いや別に、兄ちゃんはさぁ」

「照れない照れない。シェンさんとの試合中、優子ちゃんすごく熱心にお兄さん見てたじゃん。蹴られた時なんか思わず、大声あげちゃったりしてさ」

「う……いや、それはほら、あのその」

 

 あたふたする妹ちゃん。振り返ればたしかに、リンちゃんの容赦ゼロキックが炸裂した瞬間、この子は焦って俺の名を叫んでいた気がする。

 拮抗状態の時にはエールもくれたし。そっか、なんのかんのと気にかけてくれてたんだよな。そりゃそうだよな。うん。

 

「優子……」

「はあ? 何感動してる感じなんですかキモい! 心配くらいするじゃんよあんな、バシバシぶっ蹴られてたら! 兄ちゃん死ぬんじゃないかって焦るなんて普通じゃんそんなん、悪い!?」

「ありがとな」

「っ……どう、いたしまして」

 

 感動する俺に、顔を赤らめて悪態をつくんだけど。内容はひたすら優しいもので、なんだか余計に嬉しくなる。

 優しい子だよなあ〜。本当、自慢の妹だ。この子のためなら俺、リンちゃんの奥義を100でも200でも受けられるわ。できれば受けたくないけど。正直本気で嫌だけど。

 

 素直な気持ちで礼を言うと、優子ちゃんも言葉少なに、それでもこくりと頷いてくれる。

 宮野さん、グッジョブ! 家族相手には気が緩んでツンになりがちなこの子のデレを、よくぞ引き出してくれた!

 サムズアップを返すと、彼女も案外ノリがよくてサムズアップで返してくれた。

 

「みなさーん! それでは演習を終わります、お疲れ様でしたー!」

 

 と、藤代さんが声を張った。演習の、ひいてはイベントの終了を告げる声だ。

 みんな揃ってお疲れ様でーすと返しつつ、ゾロゾロと歩きだす。イベントの開始地点、開会式が行われたあの講堂へと戻るのだ。

 

 そういえば例の座談会、どうなったんだろうな。

 一応リーベには香苗さんの暴走を止めるようお願いはしといたけど、考えてみればそもそもあいつ自身がどっちかというとあっち側だしなあ。

 そろそろデビューも近い、カルト宗教のアイドルマスコットを想う。あいつまで一緒になって暴走してたらもはや収拾がつかない。頼むから勘弁してほしいよね。

 

「大丈夫、大丈夫……きっと大丈夫へーきへーき、たぶん……」

「何が?」

 

 自分に言い聞かせていると、リンちゃんにキョトンとした顔で聞かれる。狂信者の暴走を憂慮していますなんて、果たしてピュアピュアなこの子に伝えていいものだろうか。悩む。

 さておき、イベント会場に帰還。座談会も行われている会場へと向かう。

 

 道中、嫌な予感がひしひしとしてきた。なんか聞こえてきている。

 美しい弦の音色──なんか、弾いてる? 並行して二人、会話も小さくだけど耳に入ってくる。なんだ?

 

『そして救世主様は静かに涙を流されたのです。リッチにその身体を乗っ取られ、生命も尊厳も踏みにじられてしまった我が会の使徒の惨状に心を痛め、そして憤られました』

『ミスター・公平は基本、他人が害されることについてはセンシティブに受け止めがちですねえ。その割に自分のことに無頓着気味なのは、友人として率直に心配ではあります』

『そこはたしかに。伝道師としては尊ぶべきことですが、探査者として、人間としては……どうかご自愛いただきたいと、正直悩ましく思うところですね』

 

「えぇ…………?」

 

 ハープ弾きながら俺の評論してるよ、怖ぁ……

 やはりと言いたくないけど言わざるを得ない。そのくらいやっぱりな様子を感じ取り、俺は血の気が引く思いだった。




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