攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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手に入れると呪われるタイプのパワー

 今年のGWに行われた探査者ツアーの、参加者のみなさん仲がよすぎる件について。

 チャットアプリでグループまで拵えて毎日話しまくっている状況を知り、リーベは驚くやら呆れるやらでひたすら、疑問が脳裏を渦巻いているらしかった。

 

 まあ俺も正直、ここまで大規模なグループチャットだとは思いもしていなかった。精々4〜5人、それこそ俺の知り合い同士で繫がってるとかかなって思ってたんだけど。

 今見ているこのグループ、ざっと50人規模で参加してるね。いくらなんでも予想の10倍はおかしいだろ怖ぁ……

 

「ドラゴン騒ぎでみんな、一致団結しただろ? それで例年よりずっと、みんなの絆が深まったんだってさ」

「つ、つまりアイのおかげでその規模ってことですかー……」

「きゅー?」

 

 え、ぼく? どうしたのー? みたいに首を傾げ、慄然とするリーベに鼻先を擦りつけるアイ。

 非常に愛らしくて何よりなんだけど、言ってしまえばこの子が大きすぎたために地元の探査者が県境を跨ぎ、なんかやたら大きなグループを作ったってんだから因果ってやつだよなあ。

 

「発起人は俺も知らない人で、グループ作成者になってるからツアーに参加していた人だとは思うけど。それにしてもすごい規模だよな。竜虎大学のカレッジサーチャーズと同じくらいらしいぞ、人数だけで言えば」

「ひえぇ〜……! ドラゴン退治に参加した人たちがそのまま集団化したって言っちゃうと、なんだかすごい組織に聞こえてきますねー!」

「経緯はたしかに、カッコいいよなあ」

 

 変なところに食いついてるけどまあ、伝説とか神話の騎士団みたいな成り立ちっぽいのは言われればそうだ。ドラゴン相手にみんなで頑張ったってのも、実にそんな感じがする。

 あの時かつてのアイ、すなわち巨大ドラゴンを倒すのに、本当に地域周辺の探査者たちが総出で頑張ってたものなあ。

 

 ドラゴンを直接相手取る俺と香苗さん、そしてマリーさんの本隊とそれを近くまで安全に届ける逢坂さん、宥さんの護衛隊。

 そして本隊到着と同時に遠くから攻撃をしかけて意識を逸し、少しでも俺たちのサポートをしようとしてくれた、別働隊──つまりはツアーに参加していた探査者たちに、近隣にいた探査者たちだ。

 

 二手に分かれる形ではあったけど、間違いなく俺たちはあの時、心を一つにして戦いに臨んでいた。

 あのって言ったら失礼かもだけど、あの関口くんさえも俺に手を貸してくれたほどだ。スキル《勇者》による能力バフの感覚は、たしかな勇気とともに俺に力を与えてくれたように思う。

 

「そういえば関口くん、新人さんの教育してるとか言ってたな」

 

 ふとこの間、その関口くんと出くわした時のことを思い出す。アンジェさんやランレイさんと探査する間際のことだったんだけど、あの時、彼は新人さんを3人引き連れていたんだ。

 たしか、チョコ・アメ・ガムなんてあだ名をそれぞれ自称している、お菓子トリオって感じの若い女の人たちだ。関口くんが教育係になっているそうだけど、やはり顔なのだろうか。顔なのだろうな。

 

 ぐぬぬぬ、イケメンってのはすごい。

 と、羨みともやっかみともつかない灰色の感情に支配されつつも、チャットから離れて今度はソシャゲを始める。不意に関口くんの話題を出した俺に、リーベがキョトンとして尋ねてきた。

 

「スキル《勇者》を持つ彼ですよねー? こないだもたしか3人、女の子を侍らせてましたけどー、どうしたんですか急にー」

「いや、ドラゴン騒ぎに彼もいたしさ。なんなら邪悪なる思念に取り憑かれそうになってもいたから、なんとなく思い出して」

『取り憑くってのは語弊だらけだね』

 

 脳内に響くアルマの声。関口くんに力を渡し、玩具にしようと企んでいた張本人のお出ましか。

 なんの悪気も感じさせない、むしろやれやれといった呆れのニュアンスでつらつら述べる。

 

『関口っていうのはたしか、せっかくあげたチャンスを無駄にした彼のことだろう? あの時も言ったけど僕は何もしていないよ、彼が勝手に欲望を増幅させようとしていただけだ。君を、公平を貶めて見下してやりたいっていう欲望をね』

 

 当時とまったく変わらない主張。コマンドプロンプトとして覚醒した今なら、こいつの主張に紛れている明確な嘘だって看破できる。

 たしかにこいつが行ったことは結局、力の種子のようなものを彼に与えただけではある。欲望を叶えるだけの力、願望を果たすために必要なものを得るだけの力を。

 

 いうなれば魚を捌きたい、と思っている人に包丁を差し出したという話なので、そこに関して言えばたしかに、こいつはそこまで阿漕なことをしてはいない。

 問題は、手渡した包丁そのものに悪辣なギミックが仕込まれていたってところだ。

 

 取り憑いたモノの欲望を増幅させる性質を持つ、所持者を意図的に暴走させる力をこいつは関口くんに渡したのだ。

 元より俺のことが、憎いわけでないにしろ嫌っていた彼は、そうした感情を増幅されて取り込まれかけた。そのへんの説明を意図的に省いた、あるいは力が発動してから行った点については、間違いなく悪質だと言えるな。

 

『だからこそ不思議なんだよねー……なぜあの場面、すでに発動して増幅していた欲望に対して彼は、それでも力を拒否できた? これまでにいくつも同じことをしてきたけど、みんな揃って力に身を委ねたのに』

 

 心底不思議そうに呟くアルマ。

 まあ、まだわからないだろうな。わかるにはそれこそ何百年とかかるかもしれない。

 

 いろんな想い、いろんな願い。善悪併せてそれらを内包する、だからこその命であり心なんだ。

 俺のことは嫌いでも、憎しみに染まることを拒否した関口くんの高潔さは……完全なものに執着している限り、きっと、アルマには理解しきれるものではないんだろう。




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