攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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いつから一般信者でどこからが伝道師なの

 今日はちょっと曇り気味の天気で、太陽がよく雲に隠れがちな分、気温はわずかながら抑えめらしい。とはいえほんのわずか程度では体感気温は変わらないので、どのみち暑いことには変わりがなかった。

 香苗さんもスーツのジャケットは今日は着ていない。探査者イベントの時、若干暑そうだったからね。そろそろ季節柄を考えても、いわゆるクールビズは突然の話と言えよう。

 ふむ。

 

「"暑くないから暑くない"と」

「…………!? 公平くん、今のは!」

 

 俺が呟くだに彼女が血相を変える。さもありなん、おそらく今、彼女はそれまでの暑気を一切感じなくなっているだろうから。

 かく言う俺自身もそうだ。因果改変……俺と香苗さんの体表面からわずか数mm圏内の気温を25度程度"ということにして"、それゆえ夏の暑さを感じないようにしたのだ。

 

「因果をちょこっとだけ弄りました。これなら暑くないでしょう」

「そ、それはそうですが……しかし因果改変には神魔終焉結界がなければ、あなたの身体に負担がかかると以前聞いた覚えがありますが!?」

「まあ、そこはちょっとだけ。あれなしで、どのくらいの範囲までならこの程度の改変ができるのかたしかめたいところもありましたからね」

 

 笑って答えつつ、俺は内心で自身の体調を確認する。

 俺自身に対してのみの因果改変は特に問題なかった。学校の終業式の朝に試したんだけど、ほぼノーリスクで俺は俺に纏わる因果を改竄することに成功したのだ。

 まあ、その直後にワールドプロセッサから称号で警告されはしたんだけどね。せいぜいその程度だ。

 

 次いでクラスの打ち上げの席でもちょろっとばかし、因果を改竄もした。

 教師陣による二次会があるってのにバカスカ飲んで潰れかけだったへべれけ、さやかちゃん先生の因果を改変したのだ。内容は"そんなに呑んでないから酔ってない"だったか。これに関してもそんなに負担はかからなかった。

 

 店の売上やら在庫やらにも改変を加えたわけなんだけど、そもそもさやかちゃん先生がそこまで大量に呑んでいたわけじゃなかったからか、精々がちょっとした脱力感くらいで済んだのだ。

 ていうかなんか、先生お酒には強いんですよ〜とか言ってなかったか、さやかちゃん先生。グラス数杯でへべれけになるのって、父ちゃんと比較するのはあれだけどそんなに強くないんじゃないだろうか? 謎だ。

 

 さておき。それら二点を踏まえて、じゃあ今度は複数人の因果を同時に改変したらどうだろう? と試してみたのが今だ。

 まあ仮にも俺はコマンドプロンプト、本気でヤバい因果改変のラインはもちろんわかっている。ただ、山形公平の人間としての身体の限界については若干、詰める余地はあるからね。

 今後どんなタイミングでどんな状況に陥るかもわからない。探査者って仕事をする上で、自身の持つ能力の限界点の確認は、リスクヘッジという意味でも極めて重要なことだった。

 

 そのへんのことをつらつらと説明する。

 香苗さんはやはりというか案の定、感動した様子で俺に聞いてきた。

 

「それで神の如き御業を、私のような一般伝道師にまでお授けくださったのですね……! それで公平くん、今回の改変による御身体の負担はいかがなのですか?」

「一般……伝道師……? あ、ああいえ。そうですねそんなには、打ち上げの時と同じくらいの脱力感があるくらいです。すぐに収まりますよ」

 

 伝道師の時点で一般でもなんでもないと言いたかったが、また句読点に旅立たれたくないのでスルーする。朝からアレおかわりはキツイよ、さすがに。

 で、体の違和感についてだ。言葉どおり、ちょっとした脱力感くらいで問題はない。つまりは複数人の体感温度を変えるくらいなら、ほぼノーリスクで因果改変が行えるというわけだね。

 

「もっとも、あまり多用するつもりはもちろんありませんけど」

「そうなのですか? それほどのお力、正しく使えばきっといろんな場面で役立つと思うのですが」

「その正しく使うってのが結構、ファジーなラインなんですよねえ」

 

 苦笑いする。俺としても使えるものは、使うべきタイミングには使ったほうがいいと考えるところだが、コマンドプロンプトとしての力である以上間違いなく騒ぎ立てる存在はいる。

 最たる例がワールドプロセッサか。あいつは俺についてよく知ってくれている──俺があいつについてよく知っているようにだ──ため、そこまでとやかく言うことはしないけども。

 システム側でないモノにも、感づいてくるのはいるんだよね。

 

「概念存在の中にも、因果改変を感知できるモノが少数ですがいますからね。彼らをあまり刺激したくもないですし」

「概念存在?」

「神とか精霊とかそういうモノたちです。本来であれば彼らこそが、システム側の代理人とも呼べる存在でした」

 

 かつて祝勝会の折、神谷さんにもしたような説明を香苗さんに行う。

 概念存在。邪悪なる思念が襲来する以前には意思など持たなかったシステム領域に代わり、世界の運営管理を行っていたモノたちの総称だ。わかりやすく言えば神様とか精霊とか、あるいは悪魔とかそういうスピリチュアルなモノたちである。




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