攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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上役直々に発見してくる、一番嫌なタイプのエラー

「いやー助かります! よりにもよって入り口を塞ぐ形でできちゃってるものですから、まあ迷惑で迷惑で!」

「たしかに……これはひどい」

 

 回転寿司屋さんを訪ねたところ、すぐさま店長さんがやってきて応対してくださった。どうも本気で困り果てていたみたいだけど、それはそうだろうなってなる。

 何しろダンジョンの入り口ときたら店の入口、二箇所あるドアの片方を塞ぐようにデカデカと穴を開けちゃってるんだから。見るからに迷惑だ、あまりにひどい。

 

「やはり入り口が片方使えないとなりますと、客入りにも支障があったりしまして、もうどうしたものかなと! すぐさま組合に依頼を出したのですが、まさかこんなに早く探査者さんが来てくださるとは、ありがたいです!」

「いえいえ。それではさっそく、探査のほう始めさせていただきますね」

「よろしくおねがいします!」

 

 ハキハキと大声で、丁寧に対応してくださる店長さん。情熱的な、いい店長さんだなって思う。

 こんな人やこの店で働く人たち、訪れるお客さんたちをまとめて困らせるこんなダンジョンは、すぐに消滅させないとな。

 

「それじゃあ行きましょう、香苗さん」

「はい! 今日もよろしくおねがいしますね、公平くん」

 

 カメラ片手に準備万端って感じの香苗さんに苦笑い。いつもどおりながら、俺なんか撮って何が楽しいんだかなあ。

 ともあれ俺たちはダンジョンの入り口へと入っていった。まずは俺から、穴に入る。

 

「ん、おお──? っと。階段じゃ、ない?」

 

 軽い落下感ののち、着地。入り口の違和感に気づくも、まずはすぐさま称号《まもなく継承は行われます》の、任意で暗闇でも視界が確保できる効果で暗視を行う。

 いつもの土塊の道だ。このまままっすぐに進めば、やがては部屋に辿り着き、モンスターと交戦するのだろう。道の先から気配を感じて、俺はよしと頷いた。

 地上にて待つ香苗さんに向け、号令を出す。

 

「香苗さーん、オッケーでーす。なんでか階段がないんで、気をつけてくださーい!」

「了解しました────っと、ふう。落下タイプの入り口とはまた、最近では珍しい気がしますね」

「ああ、これが落下タイプですか。俺初めてですよ、新規探査者教育で話だけは聞いてましたけど」

 

 すぐに降りてくる彼女。それなりの高さからの降着だけど当然、問題はない。ただそもそも、このタイプの入り口が珍しいからかどこか興味深げではあるね。

 

 ダンジョン入り口ってのは大概の場合、傾斜のつき方によってはなかば梯子めいているのもあるけど、基本は階段だ。つまりは昇り降りが自由にできる、安心安全って言ったら変だけどまあそんなタイプだ。

 ただたまーにだけど、どうしたことかそういう階段式でない、真下にひたすら落下するタイプの入り口もあるにはあるのだとか。

 

 それがいわゆる"落下タイプ"とよばれる形式のダンジョンの構造であり、一般的な"階段タイプ"と比べても、トラップに近い性質があるとされていた。

 春先に受けた教育の内容を、思い返しながら携帯式のランプをつける。称号効果で暗闇の中でも問題ないのは俺だけで、香苗さんのことを考えるとやはり、光源は必須だからね。

 

「たしか……高さと探査者のレベルによっては、進入は容易でも脱出が、鉤縄とか登攀用の道具がないと難しいんでしたよね」

「そうですね。めったに出くわすものでないものであるにせよ、一度遭遇した時には手持ちによってはダンジョンから出られなくなる性質のため、一般的な探査者はそうした道具をいくつか備えておくのは基本ですね」

 

 もっとも私や公平くんの場合、手ぶらでもなんとかなりますが。と香苗さん。

 まあたしかに俺は空が飛べるし、香苗さんも《光魔導》を応用すれば足場くらいは形成できるだろう。こと俺たちに関しては、この程度の構造など取るに足らないと言ってしまえるのは事実だ。

 

 とはいえ、そうした自力救済が可能なスキルを持たない探査者たちにとっては、これは立派に致命的な罠だ。

 備えがないと死ぬとか恐ろしい話で、要するにこのタイプに備えるためだけに他に使い道とかあんまりない道具を常備しておかないとならないのだ。堪ったもんじゃないよなあ。

 システム側の存在として、所感を述べる。

 

「このタイプ、入ってみてわかりましたけど……エラーダンジョンですね。おそらくダンジョン生成プログラムが極稀に吐き出す、構文エラーか何かによって階段が消滅してるのかな、と」

「…………えっ。落下タイプ、エラーなんですか!? 仕様でなく!?」

「オペレータのために創ってるダンジョンで、特定の状況下で詰みが発生するような悪辣なもの、仕掛ける理由がありませんしねー」

 

 驚愕する香苗さんに苦笑する。なんていうか俺としては身内のミスなので、申しわけなくもある話だ。

 ダンジョンも毎日毎日とてつもない数、それほど星の数かよってくらい生成されているわけなので、こうしたエラーはどうしても発生しちゃうわけなんだよね。

 

 担当している精霊知能には一応リーベをとおしてってか、たぶん今も俺を見てるだろうワールドプロセッサから報告は行くだろうけれども。

 この手の話は今後も続くだろうし、どうしたもんかなと。結構悩ましい話だよな、これは。




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