攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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「何してくれてるんですか、コマンドプロンプト」

 両断されて光の粒子となり、消えていくカップルスライムの赤いほう。

 斬撃以外全部無効化という無茶な耐性を持っている分、斬撃に対しては極めて弱い──という香苗さんのレクチャーどおり、一撃で倒すことができたあたり極端すぎるだろうと思いながらもまあ、結果オーライかなと息をつく。

 カメラを携えた香苗さんが、驚きを隠せない様子で俺に聞いてきた。

 

「公平くん……! 今の技は、救世主光線を斬撃になるよう応用した、ということでしょうか!?」

「そ、そうなりますね……あの、救世主光線って呼び名はちょっと」

「お気に召しませんか? でしたらメシアビームとか、セイヴァーレーザーとか」

「救世主から離れてもらっていいですかね」

 

 当たり前のようにそっち方面のネーミングに至るのがなんともこの人らしいけど、どうしたもんかな。自分で名づけるにも、山形ビームか山形光線しか思いつかない。センスが死んでるわ俺。

 名前についてはあとで考えるとして、俺は今しがたの斬撃光線について説明した。

 

「あー、こほん。元々は衝撃波だった技が、スキルの出力やレベルの増大に伴ってどうも進化していたみたいで。こないだリンちゃんと戦ったときにああ、もうこれ衝撃波じゃなくビームだな、と」

「私のいないところで繰り広げた、あの戦いですね……ええ、あの青白くも神々しい光線は今も目に焼き付いていますとも。スマートフォンで見る、動画サイトの映像越しにですが」

「えぇ……? 今まさに肉眼で見られたからいいじゃないですか……?」

「それはそれ、これはこれです! くう、悔しい!」

 

 怖ぁ……真剣に悔しがってるんだもんなあ、この伝道師。驚いたりきょとんとしたり悔しがったり、コロコロ表情の変わる人だ。

 ある意味愛嬌があるんだろう、見ていて飽きない姿ではある。見た目自体はクールなんだけど、中身はチャーミングって感じかと思いながらも俺は、とりあえず話を続ける。

 

「えーとそれで。自覚して考えてみるとこのビーム、いろいろ形や性質を変えて応用できそうな感覚があったんですよね。発展性がすごそうだったといいますか」

「それが、さっきのような斬撃光線と」

「斬撃以外全部無効化なんてモンスターに出くわしたのは、運が悪いと同時に好機でした。性質を変えることで、俺に不足していた打撃以外の攻撃が賄えないかという検証ができたわけですからね」

 

 カップルスライムには悪いが、いわゆる一つの試し切りというやつをさせてもらった形になる。緑には早々に退場願って、赤いのに対してはダブル山形ビームと山形斬撃光線を試し、それらの威力と性質についてたしかめたのだ。

 結果、両手からビームが出せることとか、形を変えたら斬撃扱いされるに値するビームを出せることなどがわかった。つまり俺の技術次第で今後、ビームはなんにでも応用の聞く万能攻撃となり得る芽が出てきたってわけだね。

 

「やりようによっては武器を作ったり、はたまた盾を出したりもできるようになるかもしれません。なんでもありですね」

「おお……! 救世主の満ち溢れんばかりの生命エネルギーが可視化され、さらには御身を彩る神器ともなろうとは……! こ、これは世界中の人々にとっての朗報です、まさしく奇跡です!!」

「大袈裟ァ!? いくらなんでも奇跡扱いは、って、うん?」

 

 暴走してカメラを向けてくる香苗さんにツッコんだ、その時だ。

 唐突に、脳裏に声が響いた。

 

 

『あなたはスキルを獲得しました』

 

 

 は? え、何、このタイミングでスキル?

 

 まったく予想していなかった、心当たりもない状況でのワールドプロセッサからのスキル付与。

 なんだなんだと困惑しながら、香苗さんに一声かけてから俺は、自身のステータスを表示した。

 

 

 名前 山形公平 レベル803

 称号 互いに互いだけの存在、互いに互いだけの呼称

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師

 名称 あまねく命の明日のために

 

 スキル

 名称 あまねく命の明日のために

 解説 拓かれた時代、新たな刻を護り導く救世光

 効果 両手から任意の形、性質を持つ浄化光線を放つ

 

 

『このスキルはコマンドプロンプト、あなたが習得した光線放出技術をスキルという枠組みに落とし込む形で開発しました』

『これにより習熟は容易になりますが、発展性、拡張性は著しく制限を設ける形になります』

『偶発的にせよ、この世界のシステムの仕様にない事象を引き起こした能力であるための、これは緊急措置になります。事後承諾になり申しわけありませんが、ご理解のほどよろしくおねがいします』

 

 

『……因果律操作もせずに私にこのような対処をさせるとは、さすがですね。コマンドプロンプト』

 

 

「ご、ごめん……ワールドプロセッサ……」

「公平くん? どうしたんですか公平くん?」

『あーあ、やっちゃった』

 

 皮肉、じゃないな。心から感心したような、それでいて呆れ返ったようなワールドプロセッサの声色。そしてスキルの効果と彼女のアナウンス。

 これらにより、俺は意図せずこの世界のバグを発見してしまったことを自覚し、思わずごめんと呟いた。




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