攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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新システムを実装すると大概の場合起きる事態

「世界のバグ……ですか!?」

「ええ、まあ、はい」

 

 今しがた獲得したスキル《あまねく命の明日のために》の詳細と、ワールドプロセッサからのメッセージについてを教えた途端、驚きやら興奮やら好奇心やらにすっかり鼻息を荒くしている香苗さんとは裏腹に。

 俺はといえばやっちまった感でいっぱいだ。いやホント、今回ばかりは本気でやらかしてしまった。

 

 言いわけでしかないんだけど、こうなるなんてまったく意図していなかった。"なんかビームが出たし、いろいろできそうだからやってみるかなぁ"くらいのノリでしかなかったんだよね。

 それがまさか、ワールドプロセッサを動かすほどの事態を招いてしまうとは……コマンドプロンプトとして率直に、反省しないといけない。

 

「山形ビームの拡張性の高さというか……それ以前にビームを出せちゃったってところがまずアウトだったんでしょう。考えてみればそりゃそうだ、どういう理屈であれ衝撃波が進化してあれこれ加工できるビームになるなんて現象、通常あり得ることじゃない」

「あるはずのない事象を引き起こした、それがバグとして扱われたと?」

「厳密には、その可能性が生まれたってところですね」

 

 ただシステム側としては、可能性が発生した時点でもうアウトなのだ。世界の理に背く事象は、本来であれば存在そのものが許されることではない。

 ただまあ、今のこの世界においてはそこまで厳罰とかに処されるわけではないのが幸いというか、禍福は糾える縄の如しというべきか。

 

「スキルのせいでこういうバグが発見されるようになったんですけど、同時にスキルに落とし込む形でバグフィックスできるようにもなりましたからね。いいんだか悪いんだか」

「スキルのせいでバグが見つかって? ……でも、スキルのおかげでバグを、修正できる?」

 

 本来ありえない挙動、本来ありえない事象。それらは今や、仮に発生したとしても即座に、スキルという枠組みを用いて誤魔化せるようにはなっているからね。

 理解が追いついてない感じの香苗さんに、あれこれ説明していく。

 

「スキルとかレベルってのがそもそも、三界機構それぞれの元になった世界に由来する概念で、本来この世界には存在していなかったモノなのはもう、ご存知だと思います」

「ええ、それはもちろん。たしか魔天からスキルとダンジョン、断獄からレベルが、災海からモンスターの概念が流入してきたのでしたか?」

 

 確認を取るような質問に頷いて肯定する。今や世に広く存在しているオペレータを、オペレータたらしめる大部分が異界の概念を由来としている。つまりは本来、この世にはありえなかった要素に他ならない。

 邪悪なる思念による、度重なる侵食によってむりやり流入させられたそれら概念を、逆に利用してワールドプロセッサはアドミニストレータを仕立てたわけなんだけれども……その副作用といえる影響も地味ーに発生したりしていた。

 それがバグだ。

 

「レベルにしろスキルにしろ、なんならこの世界のワールドプロセッサが拵えた称号効果にしろ、本来であればこの世界においては想定していない概念ですから。探査者がそれら概念に馴染みあれこれ試していくうちにつれ、偶然ながらシステムの穴を突いた、いわゆるバグ的な挙動がちらほら見られるようになったんです」

「ちょうど先程の公平くんビームのように、ですか」

「そうですね。さっきの例で言えば、スキルによるバフ効果を称号効果で収束させ、高レベルによって超強化された身体能力でむりやり事象を確定させて──その結果、何故か衝撃波がビームになるという意味不明な現象が起きたわけです」

 

 言うまでもなく、500年前までには絶対に起き得なかった現象だ。ていうか今の時代でも、今回のこれに関してはコマンドプロンプトでありアドミニストレータでもある俺じゃなきゃ、発生する余地はなかったように思う。

 そういう意味でもやらかしちゃったところはある。つらい。

 

 ともかくそういう、まるきり物理現象とか各種法則を完全無視した挙動や現象を引き起こす事態が大ダンジョン時代になって急増した。

 システム側としては何してくれてんだこいつら……という案件なわけなんだけど、同時にそれでもいいからとりあえずダンジョン探査してくれっていう切実な事情もあり、なかなか複雑な心境だったろうと思う。

 結果的に折衷案として、そうしたバグ的挙動をまとめてスキル扱いにするという荒業に出たのだからワールドプロセッサ以下、精霊知能の苦心が窺えるよ。

 

「発生の経緯からしても完全に偶発的なので、世間一般には基本、出回ることはないでしょう。そういう意味ではアドミニストレータ用スキルと似ているかもしれません」

「たしかに、超希少スキルを持っている探査者は知り合いに何人かいますが……まさかそうした人たちは皆、世界のバグを発見した結果そのスキルを得たと?」

「全員ではないでしょうけど、可能性はあります。まあ、"あんたのその挙動バグってるからスキルって形で穴埋めするね"なんて明け透けなことはアナウンスしてないと思いますけど」

 

 精々が"特殊な条件を満たしたのでスキルを獲得しました"くらいの物言いだろうか。システム側の事情、ましてやまんまとバグを起こされましたなんて絶対に白状するわけないしね。

 ともかく。そうした事情もあり、今回の山形くん光線まわりは一括して新スキル《あまねく命の明日のために》へと落とし込まれたわけなのだ。




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