攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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君だけのオリジナル山形光線を作ろう!

 若さゆえの過ちってことにしておきたい、そんなやらかしを経た上でなおダンジョン探査は続く。

 でもまあ。やっちゃったものはもう仕方ないかあ! そう考えて俺は、新スキルの山形光線をいろいろ試し撃ちするかなーってことで、その後も部屋という部屋を突き進んではその度に現れるモンスターたちに対して、山形くんビーム! ってしまくっていた。

 

「でぁああああっ!!」

「!?」

 

 両手を組んで突き出した、その先端から極太のビームが放たれて敵を穿つ。シルバーアーマー、名前のとおり全身銀色の鎧が爆裂四散し、粒子となって輪廻へ還っていく。

 いい感じに慣れてきた。スキル《あまねく命の明日のために》の光線発射の手応えに、俺はそれなりに満足して頷いた。

 

「両手で放つと威力が上がるなあ。ただ、遠隔操作系のビームも捨てがたい。そっちは片手で連続して放てるのがウリだし……まあ結局は、状況によるのかな」

 

 今しがたの山形クラッシャービーム、的な? 技の威力から新スキルの性能を検証していく。

 ちなみに便宜上、なんとかビームとかなんとか光線とか名づけて呼んでるけどぶっちゃけ、技のネーミングなんか適当だ。形だの性質だのに変化を加えたとしても、結局威力はどんなものであれほぼ一緒だからね。

 

 強いて言えば、両手で放つ光線は一点集中的に威力を高めることができて、片手で放つ光線は反対に、威力はそこそこで応用が効きやすい印象だ。形を変えるのが容易で、連動して性質も変えやすいって感じだな。

 

「ヴァールみたいに左右ってわけじゃないですけど、両手か片手かで用途を切り替えるっていうのがたぶん、俺個人としてもわかりやすく運用できるかなって感じですね」

「なるほど……! 素晴らしいです公平くん! セイヴァー波動ビームにシューティングセイヴァービーム。そしてセイヴァースラッシュビームなどなど、威力もあれば射程も汎用性もある上に見栄えもする技の数々! まさしく救世主たるあなたに相応しいスキルと言えましょう!」

「そう言ってもらえるとありがたいですけど、技に一々おかしな名前、でっち上げるのやめてもらっていいですかね?」

「信徒たちにわかりやすくするための措置です。ご了承ください」

 

 キリッとした顔で言う香苗さん。この人さっきから俺がいろんなビームを出す度、ありもしない名前をアドリブでつけては謎の設定をつけるんだよ。

 まずもってスキル《あまねく命の明日のために》が『世界の平和を守るために、ついに封印が解かれた救世主山形公平の奥義』だのなんだのと一万円パフェでもこんな盛らないよってくらい、話を盛りまくったことになってしまっているんだから恐ろしい。

 

 ひたすら偶然の産物でしかないビームを奥義だなんてとてもじゃないけど言えるわけがない。しかもワールドプロセッサ直々に動いてスキルに落とし込ませる形になった、正真正銘バグ技だ。

 今回に限ってはむしろ、こっちが世界の平和を乱した側だしなんなら封印された側ですらある。そんな曰くつきのスキルをわざわざ奥儀とは、呼びたくないのが本音のところだ。

 まあ。便利なことには違いないし、今やれっきとしたスキルではあるので使うけれどね。

 

 複雑な心境はさておき俺たちはダンジョンの最奥にたどり着いた。時刻を確認するとちょうど11時、予定より大分早い。

 新スキルの試し打ちをしていたからむしろ、遅くなるかと思ったけど……大体の敵をビーム一発で消し飛ばせたわけなので、そこで短縮できたわけか。

 

 大体の要領も掴めたし、今後はさらにダンジョン探査が捗ることだろう。近距離では徒手空拳とプロレス技主体に相手を倒し、遠距離では山形光線で敵を撃つという隙のない戦術が確立されたわけだね。

 いいことだと思いながら俺は、最奥の部屋にある大黒柱から、埋め込まれていたダンジョンコアをもぎ取った。

 

「さて、そしたらダンジョンの入口へ戻りましょう……っと、しまったな。神魔終焉結界が今、使えないから空間転移も使えないか」

 

 オーバーホール中の神魔終焉結界の、地味ながらめちゃくちゃ便利すぎる性能を今更思い知る。

 道中モンスターの素材を毎度ゲットして、ポーチに入れたり香苗さんが携帯していたエコバッグに入れさせてもらったりしてた時にも思ったけど……ワープ機能と異空間収納機能がとことん便利すぎるな、これ。

 

 あるのとないのとで探査の効率や快適さがまるで違ってくる。我ながらいい仕事したよなあと自画自賛しつつも今のこの不便さに苦笑いしていると、香苗さんが笑いかけてくれた。

 

「この程度の深度でしたら、徒歩で引き返しても昼までには帰還できますよ公平くん。道中モンスターといないことですし、たまには歩いて戻りましょう」

「そうですねー」

 

 彼女の言うとおり、仕事終わりだ。たまには歩いて帰るのもいい。世の探査者の皆さんは誰もがこうして、モンスターを倒し終えたダンジョンをのんびり歩いて帰るのだから。

 便利なアイテムを便利に使うのはもちろん大切なことだけど、たまにはそういうのから離れるのもいい。そう思いながら俺は、香苗さんと雑談に興じながら帰り路を行くのだった。




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