攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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設定資料集は眺めているだけでも楽しい

 思わぬ再会に、向こうも俺たちを認識したようだった。え? みたいな顔をして、みんなでこちらを向いている。

 見た感じ、ボロボロってわけじゃないけどそれなりにお疲れモードって感じの様子。ダンジョン探査は終わったように思えるから、今まさに帰る最中ってところだろう。

 この近辺のダンジョンだったんだな、彼らの受けた依頼ってのも。

 

 三人娘さんたちはいたって普通って感じだけど、指導役の関口くんがやけに暗い顔をしている。なんだ? と思う俺に、香苗さんがポツリとつぶやいた。

 

「何やら浮かない顔をしていますね、関口。何か課題を見つけたのでしょうが」

 

 思わずまじまじ見つめる俺とは裏腹に、すっかりクールにお寿司を食べ、ノンアルコールビールを軽く喉に流し込んでから香苗さんが呟いた。

 あまり関口くんや彼の率いる新人3人には関心がない様子だけど、それでも一瞥して彼らの置かれている状況を推察したっぽいのはさすがだ。まさにS級探査者としての貫禄といったところか。

 次いでレーンの皿を見繕う彼女に質問する。

 

「ダンジョン探査中に何か、問題を見つけたってことですか?」

「大体の指導役が通る道ですね。新人を引き連れて探査に赴き、踏破させる過程で彼ら彼女らの課題や問題点を見つけ、どう指導するか頭を悩ませる。私にも覚えがあります……あ、マグロなんてどうですか、公平くん」

「あ、どうも……もしかして、俺の時もそうでした?」

 

 言われてみて思い返すんだけど、たしかに新規探査者教育後、初めての探査とかその次の探査あたりで、俺も何かしら悩ましい事態に見舞われてどういう……ことだ……ってなった覚えがある。

 当時の香苗さんももしかしたら、今の関口くんのようにあれこれ思い悩んでいたのかな?

 

 と言っても俺の場合、新たなポエミースキルを獲得したとか、当時意味不明そのものだった邪悪なる思念特効だとか。

 はたまたシャイニング山形の起点となってしまった光る山形くん称号効果だとかのシステム面での問題ばかりだったので、たぶん一般の探査者さんたちとは様相が異なっていたんだろうとは、思うけれども。

 

 関口くんたちは俺たちのほうをチラチラ見ながら、道路沿いを歩いて離れていく。もしかしたらこの店で寿司でも食べるのかもね。

 さておき、そのへんどうですかね? と聞くと、香苗さんは頷いて応えてくれた。

 

「スキルや称号効果の用途、可能性について考える余地があった、という意味ならばそうですね。とはいえ公平くんは事情が特殊すぎましたし、スキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》が強力無比そのものな効果を有していましたので、探査面においてはなんら迷いも悩みもなかったと思いますが」

「めちゃくちゃ雑に、全能力10倍ですからねー。一人で戦わなきゃいけない縛りはあるにせよ、通常じゃ考えられない効果でしょうし」

「あまりの性能に正直、当時は私こそ事態を計りかねていました。リーベちゃんとヴァールからアドミニストレータ計画の仔細を聞かされ、ようやく理解できましたが……何故ソロ戦闘縛りなのか、何故公平くんにのみこのようなスキルが与えられたのか。ポエミーな名称まで含め、あれこれと思い巡らせたものです」

「香苗さん……それはその、とんだご心労を」

 

 俺よりむしろ、香苗さんのほうが俺に纏わる謎に関して悩んでいたらしい。

 正直気づかなかった、あの頃から今に至るまでずーっと狂信者ムーヴしていたけど、その裏でこの人はこの人なりに俺を心配してくれていたんだな。

 

 世界維持機構ワールドプロセッサが、自ら創り上げたスキル《風さえ吹かない荒野を行くよ》。

 一人で戦う時限定というデメリットまで含めて、他のスキルさえ含めた全能力が10倍になるという破格の効果は、邪悪なる思念との最終決戦を想定して構築されたものだった。

 いわばシステム側の、対邪悪なる思念における切札スキルとも言えるな。

 

 アドミニストレータ計画の真髄はこのスキルをトリガーに、1万倍という規格外のバフを得たレベル300以上のアドミニストレータでもって、事前に弱体化させきったやつを仕留めるというものだ。

 その決戦においてはもはや、余人には一切横槍を入れることが叶わない、完全な一対一となることがあらかじめ予想されていた。それゆえ、アドミニストレータに単独戦闘の経験を強制的に積ませるべく、ワールドプロセッサはソロ限定というデメリット効果をつけたわけだね。

 

 答えが明るみになった今ならまあ、頷けなくもない理屈ではあるんだけれども。一切がわからなかった春時点では、その後も次々付与されるわけのわからんスキルや称号たちに、さぞや香苗さんにはご負担をおかけしてしまったんだろう。

 なんだか申しわけない。それと裏腹の、気にかけてもらっていたことへの喜びとか一切気づいていなかった俺自身の鈍感さまで含めてなんだか気まずい。

 そんな内心が表に浮かんでいたんだろう。レーンから取った皿を俺に渡しながら、香苗さんはやはり微笑んだ。

 

「心労などととんでもない。むしろワクワクしていたくらいなんです」

「ワクワク、ですか?」

「今朝方も話しましたが、実のところ私は結構、ゲームや漫画などでの裏設定について考察するのが好きでして……無論お遊び気分だったわけではなく本気であなたを案じていたのもたしかですけど。それはそれとして、システムさんの存在含めこの世の裏側について考察するのはとても心が踊りました」

「ああ……! なるほど、たしかにこのへんの話、ゲームで言うと裏設定みたいなのばかりですもんね」

「はいっ」

 

 力強く肯定する香苗さん。本当にそうした考察を楽しんでいたらしいから、こちらとしてもなんだか罪悪感が軽減される気持ちだ。

 しかし、裏設定か……システム側の話とかアドミニストレータとオペレータとか、そもそも大ダンジョン時代ができるまでのあれこれとか。このへんはたしかに、この世に生きる人たちにとっては裏側の話そのものだよなあ。

 考察好きにはある意味、ハマる部分はあるのかもしれない。




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