攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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※ただしイケメンに限る

 その後も談笑しつつお寿司に舌鼓を打っていると、予想どおりに関口くんたちが店内に入るのが見えた。

 美女美少女3人連れてザギンじゃないけどシースーですか、バブルってますなあ。などとくだらないことを考えながらなんとなし眺めていると、何やら店員さん相手に俺たちのほうを指さしている。

 

「あそこにいる二人と知り合いなんですよ。できれば近くの空いてる席とかにお願いできますか、お姉さん」

「は、はい……! 喜んでご案内しますう!」

 

 爽やかイケメンフェイスでにこやかに笑いかけながら彼が言うのが遠くからでも聞こえ、店員のお姉さんがすっかり頬を染めて顔をきらめかせて頷いているのが見えた。

 知らなかった……イケメンにもなると大概のお願いが通るもんなんだ。初めて知ったよ羨ましい。

 

 まるっきり俺と次元の違う扱いに内心ショックを受けていると、本当に関口くんたちがこっち向かってやってきた。

 ていうか何か用でもあるんだろうか? わざわざ俺と香苗さんの隣の席に来たがるなんて、さすがの関口くんでも理由がないとしないと思うけど。

 訝しんでいると彼と彼女たちが俺たちの座るテーブルのすぐ隣の席に着いた。すぐさま、関口くんがこっちの席に寄ってくる。

 

「どうも、今朝ぶりです香苗さん、それと山形も」

「や、やあ関口くん」

「はあ、どうも。奇遇といえば奇遇ですけど、何か話でもあるのですか? こちらは特にありませんが」

 

 俺はもちろん、香苗さんまでもが怪訝そうにしている。特に話すことはないなんてかなりのバッサリ具合だけど、そういえば香苗さん、関口くんのことをあんまり好きじゃないんだったか。

 新人の頃、ちょっと指導していたって話だけどその時に何かあったんだろうか? 入学式にばったり出くわした頃からやたら、香苗さんは彼に対して辛辣だ。

 なんとな~くだけど、例の真人類優生思想が絡んでる気がするなあ。なんて考えていると、当の関口くんは苦笑いして答えた。

 

「ええ、まあ。ちょっとその、探査者の先輩にご助言いただければ、と」

「ふむ……?」

「んん……?」

 

 思わぬ素直な返事に、俺も香苗さんも揃って微妙な反応をするに留める。関口くん、結構マジで困ってる?

 こういう時ってなんとなく彼、香苗さんに自分を壮絶にアピールする方向に話を展開するようなイメージがあるんだよね。何度か、香苗さんや宥さんと一緒にいる時に出くわした際、そんな感じだったし。

 

 なんなら俺を見下すまでがセットだったのは、まあドラゴン騒ぎで互いに歩み寄ったことでなくなりはしたけど。

 ともかくそういう経緯もあり、俺の中で関口くんってばイケメンで誇り高くて《勇者》の名に恥じない立派な探査者であると同時に、自己顕示欲と承認欲求を拗らせた超やべーナルシストであり、なんなら選民思想まで持ってるっていう別の意味でもやべー人だったりもするのだ。

 

 そんなあらゆる意味でややこしいメンタリティな彼が、めちゃくちゃ素直に困ってます感を出している。その違和感に俺たちは二人して戸惑いを示したわけだった。

 こほん、と咳払い。香苗さんがならばと気を取り直し、やはり冷静に告げる。

 

「後進の探査者たちの話です、聞くくらいならしましょう。察するに後席の3人の抱える問題に、手を焼いていると見ますが」

「すごい……よくわかりますね、香苗さん」

「身に覚えのある話ですから。もっと言えば指導にあたる者ならば誰もが、必ずぶつかる問題でもあります」

「香苗さんほどの人でも、ですか」

 

 目を丸くして関口くんが呟く。今回、指導する側として立つ彼にとっても、香苗さんがかつて似たような悩みを抱えていたなんて想像もしていなかったみたいだ。

 なんていうか、香苗さんってエリート感漂ってるからなあ。常人が抱えてるような悩みや疑問はサクッと解決! もっと遥か高い視点であれこれ考えてます! って感じの雰囲気は出ているし。

 実際、若くしてA級トップランカーに長く君臨し、今またS級探査者にも昇級した天才の中の天才なので、普通の探査者に比べても視点が高いところはあるだろうしね。

 

 ただ、本当のところではもちろん彼女だって一人の人間だ。生きていく上で多くの人たち同様、いろんな悩みや苦しみを抱えてきたのは間違いない。

 そうした試練を乗り越えたり乗り越えなかったりする中で、今の御堂香苗という人物が形成されていったんだろう。そう考えると、一言でエリートだの天才だのという単語で片づけるのもなんだか、失礼なのかもしれないなあ。

 

 関口くんともども尊敬の眼差しを向けていると、香苗さんは一つ頷いた。俺に向けて困ったような笑みを浮かべ、提案してくる。

 

「公平くん……午後から二人で漫画喫茶という話でしたけど、少しばかり関口の、というかあの3人の相談を聞いてあげようかと思うのですが」

「いいと思いますよ。もしよければ俺も、後学のためにご一緒させてほしいです」

「それはもちろん! といいますか、私からお願いしようかと思っていました。その、せっかくのお時間をいただくことになって申しわけないですが……」

 

 眉を下げてすまなさそうにしている彼女。漫画喫茶に行く用事たって、ぶっちゃけ暇つぶし以上でも以下でもないんだからそんな、気にしなくていいのに。

 そういう生真面目なところが好ましく、愛らしい人だなあと思いながらも俺は、そっと彼女の手を握った。

 

「何を水くさい。あなたが俺の力になってくださっているように、俺もあなたのお力になりたいんですよ。いつだって」

「公平くん……」

 

 いつもお世話になっているんだ。それを当たり前のことだと思わなくならないように、こうして機会があれば感謝と恩返しをしたい。

 そう思っての言葉に香苗さんは頬を染め、瞳を潤ませて手を握り返してくれる。漂うちょっとあの、いい感じの空気。

 

「山路ぃ……っ!」

 

 取り残された形になった関口くんが一人、鬼のような形相で俺を睨んで名前を間違えて呼んでいた。

 山形ですけど!




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