攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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金の切れ目が縁の切れ目なら、金があるうちは縁もつながる

 関口くんからの頼みを引き受けて、俺と香苗さんは昼食後、どこか落ち着ける場所で彼とおかし三人娘の相談を聞く運びになった。

 漫画喫茶は後日改めて二人で行きましょうね、という香苗さんの言葉にまたしてもぐぬぬぬ山形ァ! ってなってる関口くんはともかくとして。まあとりあえずお互いお昼はお昼で食べようよ、という話になり、再度お寿司を食べ始めたのだ。

 

『3人とも、ここは俺が持つよ。好きなだけ食べて、英気を養おう』

『ホントですか先輩!』

『あらー、太っ腹なのね関口先輩ったら。ねえガムちゃん?』

『そうだね、アメ姉。関口さん、ゴチになりまーす』

『お腹が膨れれば気分も上向く。さあ、食べよう』

 

 当たり前のように、というか彼にとってはこれが当たり前なんだろう。自腹切ります宣言をする関口くんに、三人娘たちからの反応も上々。

 さり気なく午前の失敗のフォローも入れてるあたり、実にスマートな振舞いである。これができるイケメンの姿か、学校中の人気者はやっぱり違うぜ。

 

「すごいなあ、関口くん」

「……何やら感銘を受けている様子の公平くんはかわいくて好きですが。あまり変な影響を受けて、誰にでもすぐ奢るとか言わないでくださいね?」

 

 普通にすごいなーあこがれちゃうなーって感想が口をついて出たところ、苦笑いした香苗さんに釘を差されてしまった。

 無論、感銘を受けるとか影響されるとかまではいってないし、なんなら俺が同じことをやったところで、微妙な反応をされるのがわかりきっている。ビビリ山形くんとしてはそんな恐ろしい真似、とてもじゃないけどできませんとも。

 そのへんの感覚を説明しつつ、ふと今の発言から気になったところをきいてみる。

 

「感銘とか影響っていうか、純粋に様になる振舞いだなーってだけですよ。俺には真似できません……そんなに誰にでもすぐ奢るとか言うんですか? 関口くん」

「ダンジョンコアを換金して得た金で、友人やその縁者たちとパーティーを開き、その度に豪勢な振る舞いをしては交友関係を広げていたとかは彼が独り立ちしたあとによく、噂で耳にしていました」

「えぇ……?」

『おい、若干ムカつく反応するなよ山形』

 

 思わず素で困惑した俺に、隣の席から話が聞こえてたんだろう、等の関口くんからツッコミが入れられた。そして同時に、どこか誇らしげに香苗さんを讃える声もだ。

 

『そしてやっぱり、香苗さんの耳には入ってるよなあ。アンテナを高くしてる方だよ、相変わらず。ふふっ』

 

 対応の差ぁ……ていうか本当、香苗さんに対しては好意的というか素直な反応だよなあ。そうなるだけの過去があったんだろうけど、何があったんだろうか? 気になるから後で直接聞いてみようか。

 

 しかしそうか、人脈づくりのパーティー開催なんてことしてたんなら今の顔の広さとか有名さとか、裏腹の評判の悪さなんかもなんとなく納得がいくな。

 なんていうか関口くんって敵味方がはっきり分かれるタイプみたいで、東クォーツ高校においても人気者でファンも多い反面、アンチも多いという芸能人みたいなことになってたりするし。

 主に彼と同じ中学だった人たちからは特に賛否両論みたいになっているってのは、そのへんの情報に対してアンテナをほとんど立ててない俺でも知っているくらい有名な話だ。

 

「そういえばこないだの終業式後のクラス会でも、奢るとかそんなことを言ってましたね」

「まあ、人脈づくりはたしかに大切ですから否定はしませんが……金にものを言わせるのは個人的に、あまり感心できないですね。仮にもし公平くんが同じことをやると言うなら、正直止めると思います」

「いやあ、ははは……交友関係を広げることも、景気よくお金を使うことも、俺には両方ハードルが高いですしできませんねー」

 

 よくも悪くもそうしたことは俺にはできない。なんせそもそも交友関係を広げるつもりがあんまりないし、お金にしたってあるにはあるけど、もっぱら貯金するくらいしかやりようがないしね。

 ただ香苗さんも認めるとおり、関口くんみたく人脈を作るってのは、社会的に見ればもちろんすごいことだしいいことだろう。若い頃からそんな視点でものを見据え、実際に行動できる実行力と経済力はやっぱり彼の、非凡なる才覚を感じさせるだけのものはある。

 結局それぞれのスタンスや思想、思考の違いなんだろうね。こればっかりはさ。

 

「ま、俺は俺で香苗さんは香苗さん、関口くんは関口くんってことなんでしょうねー。お、いくら」

「取りますよ……はいどうぞ。そうですね、やりたい人はやればいいし、やりたくない人はやらなければいい。そういう程度の話ですよ。私は数の子をいただきましょうかね」

 

 肯定も否定も特にせず、俺たちは再び寿司を食べ始めた。いくらを舌の上でプチプチ潰して感触と味を楽しむたび、脳内のアルマが"うーまーいーぞー! "と叫ぶのが地味にやかましいけど、概ね平和な食卓だ。

 と、俺たちの話を隣の席で聞いていたおかし三人娘が当の本人、関口くんにあれやこれやと話しかけているのが聞こえた。

 

『先輩、奢りたがりなんですね! 大人っぽくてかっこいいです!』

『パーティー……って、この間開いてくれたああいうのよね? 結構頻繁にやってるって噂で聞いてはいたけど、3年も前からなんだ〜』

『成金感ヤベーですね』

 

 チョコちゃんはなんか純粋に彼の行為を賞賛しているし、アメさんは大人っぽくからかうように笑っている。ガムちゃんは無表情のまま、静かにポツリと呟くのみだ。え、微妙に毒舌じゃない……?

 三者三様の反応に、関口くん自身はやはり爽やかに笑って言った。

 

『恥ずかしながら、昔からみんなでパーティーとかってのが好きでね。それに金を持ってるんだし、奢るのなんて当たり前だろ? おかげで貴重な人脈も、たくさん持つことができたよ』

 

 照れくさそうにしながらも、やはり爽やかな受け答え。

 徹底して好青年っぽく振る舞う彼の姿に、俺もなんだか感心するばかりだった。




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