攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
関口くんたちとはあとで落ち合うことにして、俺たちは一足先に回転寿司屋さんを出て一路、ショッピングモールへと向かっていた。
湖を跨ぐ大橋を超えたところにあるショッピングモールを、さらに少し歩いたところにさっきまでいたお寿司屋さんがあるわけなので、経路としては来た道を戻る形になるね。
このショッピングモール、かなり大型の施設なんだけどなんと本館の他に別館があったりする。
寿司屋さんから本館へ行くにあたっての道の途中にあるんだけど、そっちは本館と違ってたくさんの店が入っているわけではない。中古品ショップだったりフィットネスクラブだったり、あとスーパー銭湯がそれぞれ大きく陣取っているのだ。
「銭湯ですか……この間の最終決戦時の旅館、いい感じでしたね」
「ですねえ」
そんな別館の一角、スーパー銭湯の看板を遠目から見つつも香苗さんが呟いた。半月ほど前の邪悪なる思念との最終決戦時、養生も兼ねて宿泊した旅館での温泉体験を思い返しているんだろう。
たしかにあれはよかった、本当によかった。めっちゃ広々としていて露天風呂は景色もいいし、お湯もなんかいろいろ効能があったりしたらしく、すごいポカポカしたし気持ちよかった。
『君と入ったあのお風呂か……たしかに心地よかったねえ、あれは。なんならもう一度入りたいくらいだよ、今は体ないけど』
脳内でアルマが呟く。そうだそうだ最終決戦の前日、優雅に朝風呂でもやるべーと意気揚々と温泉に入った俺の隣に、いきなりこいつの端末が現れたんだよ。
しかも端末の肉体的性別は女で、つまりはすっぽんぽんだったもんだから俺のパニクりっぷりときたらなかった。
まあアルマ自身の結界により他のお客さん方には気づかれなかったからよかったものの、もし気づかれていたら最終決戦の前に社会的に俺がえらい目に遭うところだったよね。
『美少女の裸が拝めたんだからありがたがるくらいしなよ、ムッツリプロンプト。いいから今度温泉旅行でも行ってきてよ、君と感覚を共有して僕も楽しむからさあ』
こいつ、誰がムッツリプロンプトだ! どっちかっていうとそりゃムッツリだけど、それはコマンドプロンプトじゃなくて山形公平部分だ! 言ってて情けなくなってきた。
それにしても温泉旅行か……悪くないな。知り合いや友人を誘ってでも、この夏休み中に行ってみようかな?
ショッピングモール本館に到着。約束の時間まで適当にあたりをぶらつくかと、館内へと入っていく。
その間にも今、思いついた温泉旅行計画について俺は、香苗さんに質問していた。
「香苗さん。相談なんですけどもし、来月にでも人を集めて温泉旅行とか行くとしたら、メンバー的にはどうなりそうですかね」
「8月ですか。そうですね……私はいつでもお供しますし、決戦スキル保持者やその関係者たちも来月いっぱいまでは日本にいますから。呼べば来るとは思いますよ」
提案してみるもんだね、結構いろよい感じの返事だ。なるほどたしかに、説明会に参加するためにわざわざ来日してくれた人たちもまだ、来月中なら日本にいるタイミングだよな。
となれば一応候補として決戦スキル保持者に、ソフィアさんとヴァールか?
「最終決戦参加メンバーに、宥さん逢坂さん、アンジェさんにランレイさん?」
「いえ、アンジェとランレイさんはおそらく無理ですね。もう数日したら能力者犯罪組織、件の"サークル"とやらを取り締まるために首都圏へと向かうとランレイさんから聞いています」
「あー、そういえばありましたね、ダンジョンコアで悪だくみしてるとかって組織の話……」
マリーさんのお孫さん、アンジェさん。リンちゃんのお姉さん、ランレイさん。
揃ってA級探査者トップ層のお二人も呼べるかな? と期待はしたんだけど、どうやら無理っぽいな。これから首都へ向かい、その近辺でダンジョンコアを密売してるらしい謎の組織を相手に大立ち回りを演じるんだろう。
アクション映画さながらの剣劇とカンフーアクションで、並みいる能力犯罪者たちを一網打尽にする姿が目に浮かぶようだ。
そういうことならその二人はまあ、無理だよねーと納得する。
「他、誰か呼べますかねー」
「せっかくですから公平くんのご家族様方もどうです? 別に、探査者のみ参加というわけではないでしょうし」
「ああ、まあ……たしかに。リーベはどのみち参加でしょうし、そうなると家族みんな呼びたいですしね」
「アイちゃんも連れていける旅館を探す必要がありますね。まあ事情を話してWSOやS級探査者によるお墨付きがあれば、ペット扱いでOKは出るでしょうが」
「助かります。アイには祝勝会の時、寂しい思いをさせましたからね」
モール内をうろつきながらあれこれと話していると、なんだか結果的に山形家と探査者のみなさんって感じのメンツになりそうだ。
なんか、温泉旅行も本気でありかもしれない。ちょっとみんなに話を振ってみてもいいのかもなあ。
頭の中で段取りを組む。家族と仲間たちで真夏の温泉旅行……素敵な響きのように、今の俺には感じられた。
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