攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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誰が作っても美味しい、その名はカレー

「それで明日もダンジョン探査ですかー。公平さんもつきあいがいいですねー」

「まあ、行きがかり上というか乗りかかった船というか、な。俺とほぼ同期の話だし、協力できるならしたいかなって」

 

 その日の夜、家に帰って夕食時。

 朝に聞いていたとおりに優子ちゃんとリーベが共同でつくったカレーをみんなで頬張りながら俺は急遽、おかし三人娘の探査に同行することになった経緯を──無論、各人のスキルやらステータスなど個人情報は伏せた上でだけど──家族に話していた。

 

 明日は朝から組合本部にて待ち合わせ、それからいくつかのF級ダンジョンの依頼を受けて探査することになっている。

 まあ探査って言っても俺と香苗さんは見学で、メインはおかし三人娘と教官役の関口くんだ。実際に3人の戦いを見させてもらうことで、連携面での具体的な問題点を客観的な立場から洗い出せないか、探ってみるってわけだね。

 

 そういう話をしていると、父ちゃんも母ちゃんも優子ちゃんもふーん? みたいな、わかってるんだかいないんだか、微妙な反応を示してくる。

 このへん、どうしても探査者と非探査者で感覚は違うよなあ。そもそも戦うことが日常じゃないわけだし、連携が噛み合わないんだよとか言われたってはあそうですか、としか返せないのは当たり前の話ではある。

 

「よくわからないけど、とりあえず人様に迷惑はかけないようになー」

「女の子に囲まれるとあんた、即座に調子に乗るものね。残念ながら見てくれがぼちぼちなんだから、せめて空回りして嫌われないようにしなさいねー」

「ひどい」

 

 仮にも因果律管理機構でもある息子を捕まえての、この言いようである。

 気にしないでくれているのはめちゃくちゃ嬉しいし、この人たちの息子に生まれてよかったって心から思うけど……それはそれとしてもうちょっとオブラートに包めや! とも思うのは仕方ないと思うんだよ。

 

 ていうか俺、女の人に囲まれるとそんなに調子に乗ってるように見えるの? 怖ぁ……めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。言われるとたしかに、いくつか過去に思い当たる節があったりするのが余計にこっ恥ずかしい。

 顔から吹き出そうになる汗を、カレーの辛さのせいにしようとカレーを食べる。うん、美味しい!

 

「よくできてるな、このカレー。優子やるじゃん」

「へへ、そうでしょ? まあ私にかかればざーっとこんなもんよ! やればできる子と書いて山形優子って読むわけよねー!」

 

 思っていたより遥かに美味しいカレーの出来栄えに、メイン調理者の優子ちゃんが鼻高々にドヤっている。この子こそお調子者そのものなんだけど、まあ今回ばかりは大目に見ようか。

 何しろお料理初挑戦な我が妹ちゃんがメインで拵えた作品だ、はっきり言って失敗すると思っていたからね。

 

 カレーで失敗するってよっぽどなんだけど、包丁の扱い方もろくに知らなかった子だからもう、朝の時点で正直諦めていたんだよね、俺。

 いかにリーベがフォローに入り、そもそも母ちゃんの目があったにせよ、どこかしら首を傾げるようなナニカをお出しされる覚悟はしていたのだ。

 

 なんなら父ちゃんだって悲壮な決意でテーブルについていたりするので、たぶん似たような思考回路で覚悟を決めていたんだろう。

 それがここまで普通に美味いカレーをお出しされたもんだから、愛娘の手料理という感動もあり、どこか涙ぐんですらいるほどだ。

 そのリアクションはそれはそれで怖いよ、父ちゃん。

 

「ですけど、何やらレアスキル持ちが二人もいるわけですかー。中々個性的なパーティになりそうですね、あの三人組ー」

 

 と、リーベが言う。彼女もこないだのA級ダンジョン探査には参加していたし、おかし三人娘や関口くんとも鉢合わせしているから面識があるといえばあるのだ。

 そんな彼女的にも、特にレアスキル持ちのアメさんとガムちゃんは興味の対象らしい。アドミニストレータ計画を立案、実行した精霊知能という立場柄、特異なオペレータに関しては好奇心が湧くのかもな。

 

「残る一人が割とオーソドックスなスタイルなのも、逆に味がある感じするよな。汎用スキルでレアスキルと肩並べてるのって、むしろそっちのがすごいし」

「レアスキル持ちはやたらピーキーなのが多い面もありますからねー。どういうタイプのスキルかにもよりますけど、たとえば《召喚》あたりだと保持者当人のできることは限られますしー」

「ああ……《召喚》ね。あれはほら、レベルが上がれば呼び出せるモノの格も上がるし。そうなると保持者が別段何かしなくとも、呼び出したモノが勝手にしてくれるからなあ」

 

 リーベの言葉に返事しながらも内心で感心する。こいつ、知らないだろうにピンポイントで2つあるレアスキルの片割れを当てちゃってるよ。

 さすがは精霊知能だ、普段どんなに"かわいいかわいい"などと嘯いて自称するお笑いマスコットでも、やはりこの手の話になると詳しくて助かる。

 

「ま、そのへんも含めて明日はちょっと、あちこちのダンジョンをうろついてみるよ。たぶん帰るのは夜になるかも」

「わかりましたー! それじゃあ明日はー、このかわいいかわいいリーベちゃんがー、腕によりをかけて差し上げましょうー!」

 

 かわいらしくも自分の腕を叩く。そんなリーベの隣で優子ちゃんが微かに安堵の息を吐いている。

 たとえカレーはうまく作れても、そもそも料理自体が慣れないのだから。連日立て続けに調理なんてごめんだと言わんばかりの顔を見せる、そんな妹ちゃんだった。




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