攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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ニコッてしたらポッてなるのは20年来のお約束

 香苗さんがかつての師匠、青樹さんからもらった彩雲三稜鏡。ホラーな怪文書つきという曰くつきの逸品なわけなんだけれども、これについては一旦保留となり、後日改めて調べる形で今日のところは収まった。

 それはそれとして今回集まった目的はあくまで、おかし三人娘の探査中の動き、連携の改善にある。

 

「関口くん、依頼のほうはどうだった? いい感じのダンジョンあった?」

「ん、ああ、それなりには。お前と香苗さんの参加については、教官権限でアドバイザーという立場にしてもらったんで、そのつもりでな」

 

 言いながら関口くんはいくつか、探査依頼書をテーブルに置いていった。いつも依頼を受ける時にもらう、"このダンジョンはこの探査者が担当しますよ"という書類だ。

 見るとF級ダンジョンの依頼書が2枚、それもこの組合本部の近辺にあるものが並んでいる。

 

「とりあえず2つ、F級ダンジョンを探査していく。その中で問題点の洗い出しが行えればよし、行えなければ後日また同じように探査を行うだけだ」

「地道にやっていくしかないよね、こればっかりは」

「さすがにな。まずはどういうふうに連携が取れないのか確認する。大切な一歩目だ、慎重にやっていきたい」

 

 あるいは、三人娘より真剣な表情かもしれない。

 今回の探査における目的や意図、意義を説明してくれる関口くんは、新人の面倒をみる教官役として、強い責任感と使命感を抱いているように俺には思える。

 こういうところ、やっぱり彼も探査者として立派な姿勢でいるんだと感心する。精々半年くらいまでしか関係しない新人たちを相手に、ここまで親身になれるっていうのは実はすごいことだと思うよ。

 

「関口さん……お手数おかけします。私たちが不甲斐ないせいで」

「いや、よくやってくれているよ3人とも。むしろ不甲斐ないのは、ちゃんとした助言を与えることができない俺たち教官だ」

 

 自嘲気味に笑う。関口くんは今回、香苗さんと俺に相談を持ちかけたことを教官役としての力不足だと恥じているみたいだった。

 本来ならば自分たち教官だけで指導すべきだと、それができずに外部の探査者に助けを持ちかけたのは、必要なことだったけど情けない話だと、そんなふうにつぶやく。

 そんな彼に、チョコさんはそんなことはない、と言った。

 

「わ、私たちは関口さんたちにたくさんのことを教わってます。みなさん、とても頼もしくてすごい教官さんたちです!」

「……ありがとう、チョコ」

「あ、いえ! えへ、えへへ!」

 

 ニコッと微笑む関口くんに、ポッとチョコさんは顔を赤らめて笑顔で返した。そこはかとなくいい雰囲気だ……これがイケメンスマイルのパワーなのか。衝撃的な光景に、にわかに震える。

 イケメンは笑顔一つで女の子を虜にできるなんてこと、都市伝説だと思っていたのに。目の前でファンタジーなものを見せつけられてしまった感じだ。

 

 内心動揺する俺など露知らず、関口くんはチョコさんだけでなくアメさん、ガムちゃんにもニコッと爽やかに笑いかけた。

 

「山形はともかく香苗さんのご助力をいただける機会なんて早々ないんだ。チャンスはものにしないとな、みんな!」

「そうね〜。せっかく山形くんや御堂さんに見てもらえるんですもの。しっかりしないと」

「S級探査者にシャイニング山形、どっちも雲の上だしね……」

「だね! よろしくおねがいします、お二方!」

 

 3人揃って俺たちに頭を下げてくる。関口くんの煽りもあって何やら、相当期待されているよなあ。

 正直、香苗さんはともかく俺はマジでただの見学だ。おかし三人娘の探査に限らず関口くんや香苗さんの指導法を見させてもらう形になると思う。

 だって俺、誰かに何かを教えたためしなんてないし。なんなら教えられてばかりだし、そもそも100年単位で一人ぼっちだったウルトラぼっちだし。

 

 そんなわけで今回ばかりは俺も、立場としてはどちらかというと三人娘の側なのだ。

 まあ、強いて言えばスキルや称号みたいなシステム側の事情をそれとなく説明するくらいだろうか? それにしたってどこまで価値のある話をできるか、わかったもんじゃないんだけれどね。

 

「あと、せっかくだから二人の戦う姿も見せてほしいんです。探査者としてトップクラスの存在がどんな領域にいるのか、早いうちに知っておいても損はないですし」

「……えっ。え、俺と香苗さんが? F級ダンジョンで?」

「赤子の手をひねるより簡単だろうし、瞬殺だろうけどな。今の彼女たちにとっては苦戦するようなモンスターも、二人にはそのくらい楽に仕留められるってところを見せてもいいと思ったんだ。俺自身も興味あるし、な」

 

 最後はちょっと茶目っ気めかす、関口くんの目は結構本気だ。伊達でも酔狂でもなく、俺や香苗さんの戦うところを見せておきたいのか、この機会に。

 たしかに、俺も探査者ツアーの時、香苗さんやマリーさん、鈴山さんといった上級探査者さんたちの戦いぶりに、大いに学ばせてもらったしな。いろんな探査者のスタイルを見るって意味でも、こうした提案には意味があるかもしれない。

 そういうことなら、と俺は頷いた。

 

「俺でよければいくらでも。ただ、参考になるかは微妙かもだけど」

「私も構いませんよ。関口も含め、若手がトップ層の実力を実感するのは身になるところが多いですから」

「ありがとうございます、香苗さん。山形も」

 

 香苗さんも続いて頷く。いやまあ、俺も全然若手なんですけどね?

 ともあれこうしてこの日、俺たちの探査者活動が始まった。




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