攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
組合本部を出る俺たち。さしあたっては2つあるF級ダンジョンの探査へと乗り出すわけで、まず最初のダンジョンの所在地について関口くんから説明を受ける。
段取りはしっかり組んでくれていて、午前中にこれらダンジョンを回って、その成果次第で午後にもいくつかダンジョンを探査したいとのことだった。
「D級だのC級だのをそんなペースで探査なんて、とてもじゃないが無理だけど。今回は全部F級だからな、モンスターの弱さも加味したって、どんなに時間がかかっても午前中にはあらかた片がつくはずだ」
とは、関口くんの言。
何しろF級ダンジョンだからなあ。概ね1階層のみ、部屋数もいいとこ5つが限度で、場合によっては最奥含めて2つしかないこともある。
おかし三人娘にとってはそれでも命がけなんだけど、香苗さんは言うに及ばず俺やら関口くんにとっても一捻りってなダンジョンだ。午前中に踏破しきれるという概算は、それなりに信憑性の伴うもののように俺には思えた。
「今から向かう最初のダンジョンは、ここから最寄駅近くの裏路地にできている。調査によると階層は1、部屋数4。最奥を除けば実質3部屋にモンスターが出てくるだろうから、ここはさっき言ったとおり、まずは山形に、次に香苗さんに戦い方を見せてもらう場にしたいと考えている……構いませんか?」
「一番槍かぁ。緊張するけど、俺は大丈夫だよ」
「私も構いません」
「助かります。それぞれに戦ってもらって、彼女らの手本を示す形にしたいですからね」
なるほど? さしあたって最初のダンジョンで1回ずつ、今回アドバイザーって形で同行する俺や香苗さんが戦うわけか。
で、残りを三人娘で相手取る、と。アドバイス目的で最初のダンジョンだけは一部先輩が受け持って、あとはF級の三人娘で攻略しました! って形に持っていきたいみたいだ。
異議なし、と俺たちが頷き、いよいよ歩き出す。最寄駅までは徒歩でそんなにかからないし、他のダンジョンもこの近辺だって話だから割合、行動範囲としては狭いものになりそうだね。
道中、香苗さんがボソリとつぶやく。
「F級では、公平くんの偉大なる強さを披露することもなかなか、適わないかもしれませんね……残念です。どうにかこの機会をとっかかりにして3人にも、救世主神話伝説の素晴らしさを伝道できればいいのですが」
「えぇ……?」
「か、香苗さん……?」
一切隠すことない伝道チャンスへの探求に燃える彼女に、俺も関口くんもドン引きの様相を隠せそうにない。青樹さんのことあんまり言えないんじゃないのかとさえ思えてくる機会の伺いっぷりだ。
この人、常にそんなこと考えて生きてるんだろうか? 生きてるんだろうなあ怖ぁ……
どうやらモンスターを相手に華麗にカッコよく立ち回る俺を三人娘に見せて、どうですうちの救世主はすごいでしょう! と自慢したかったように思えるけど。まあF級モンスター相手だからね。実力的にはS級以上だろう俺が暴れ回ったところで何も誇れるところがない。
むしろ力に溺れた子どもが暴走する図として認識されてしまいそうだ。怖い。シャイニング山形がダークネス山形に堕ちたとかSNSで書かれて燃えそうで怖い。
「というかむしろ公平くんが一番槍なのですか? このメンバーで間違いなく一番強くて尊くて格好いいのに先鋒というのは、個人的にはしっくりきません。私と順番を入れ替えたらどうですか」
「え。い、いや香苗さん、それはさすがに山形を持ち上げすぎでは……」
「伝道師としてもそうですが、探査者としての私からしても正当なる評価ですよ……こないだのシェン・フェイリンさんとの演習動画を見ればわかりますが、公平くんはA級探査者としてトップクラスに位置する子でさえ難なく一蹴できます。私は直で見れていませんが。ええ見れていませんが!」
無茶なことを言い出す彼女に、関口くんが心底困った様子であれこれ対応している。
持ち上げ過ぎなのはそのとおりだし、順番的にも新人の俺が最初で先輩かつS級の香苗さんが次ってのは、むしろ理屈だと思うんだけどね。
とはいえ実際の戦闘力に限って言えば、そりゃどうしたってアドミニストレータでコマンドプロンプトである俺がトップなのは、まあ知る人にとっては間違いないところもある。
そのへん、元より級でなく実力で評価する傾向にある彼女からすれば、変な順番に思えるらしかった。関口くんは事情とか今の俺の実力を知らないので、そこを強弁するのはどうかと思うんだけどね。
香苗さんの肩に手を置き、俺はやんわりと彼女を宥めた。
「か、香苗さん? さすがにここは、先輩後輩とか立ち位置を優先するべきですよ。俺は探査者になって半年のC級、順番に異論はないです」
「……他ならぬあなたがそう仰るのでしたら、私もそのように考えますが。関口にしろ三人娘にしろこの際言いますが、公平くんはすでに私より遥かに強いですのでそのつもりでいたほうがいいですよ」
「は、はあ」
なおも俺の実力について念押しする香苗さんに、一同戸惑うばかりだ。そりゃ、俺が香苗さんより強いとか言われてもなあ。
事実は小説より奇なり。そんな格言も思い浮かぶやり取りではあった。
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