攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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72時間、探査できますか

 あれこれ話しているうち、最初のダンジョンにはすぐたどり着いた。薄暗い路地裏、野良猫なんか横切る街の日陰に、地面に穴がぽっかり空いている。

 あまり人がうろつくエリアではなさそうだけど、ここを生活の動線にしている人もいるとは思う。そうなるとこんなダンジョンはやはり、迷惑千万なんだろうし、さっさと踏破して消してしまわないといけないよな。

 

「よし、じゃあさっそく行こうか。ひとまず俺が先導するから、みんなは俺についてきてください」

 

 関口くんがそう号令を取って、先頭を切ってダンジョンへと進入していく。続けて香苗さん、三人娘、俺の順で続く──俺が最後尾なのは奇襲対策だ。

 いくらF級ダンジョンとはいえ、背後から不意を突かれたなんて事例はこと欠かないからね。

 

 地下一階への階段を降りきる。先導の関口くんがつけてくれているライトが、行く先を照らす。

 スタンダードな土塊の道だ。ずーっと長くに続いていて、この先へ進めばやがてはモンスターのいる部屋にたどり着くんだろう。

 外勤探査者にはおなじみの光景だ。けど、新人のおかし三人娘にはそうでもないわけで。

 

「うはー、やっぱりこのダンジョンも暗い!」

「ジメッとしてるわね〜」

「ひんやり……」

 

 チョコさん、アメさん、そしてガムちゃん。探査者になってまだ間もない彼女たちにとっては、暗く湿度もそこそこ、気温の低いこの空間っていうのは、まだまだ慣れないものらしかった。

 俺にとっても覚えのある反応だ。慣れないうちは薄気味悪いんだよね、こういう場所。まあすぐ慣れるから、それまでの辛抱だ。

 

「すみません徳島さん、鹿児島さん、新潟さん。少し質問をさせてください」

「えっ……」

 

 と、不意に香苗さんが3人へと声をかけた。雲の上の存在、S級探査者である彼女からの呼びかけに、揃ってびくりと肩を震わせる三人娘。

 その様子に苦笑いしつつ、香苗さんはやわらかく話す。

 

「固くなる必要はありません、歩きながら話しましょう。3人とも、これまでにダンジョン探査は何回していますか? たしか、一月前にデビューしたのでしたよね?」

「あ、はい! それから新規探査者教育にずっと時間を費やしまして、数日前の最終試験を皮切りに実務に取り組み始めました!」

「たしかそれからは基本、教官役の先輩と私たち4人で組んで潜っているけれど……昨日で何回目だったかしら、ガムちゃん?」

 

 緊張するなと言われても、どうしたってしちゃうよねそりゃあ。カチコチに強張りつつ返事するチョコさんに、寄り添いながらアメさんも不安な面持ちで応じる。

 具体的な回数を求められたガムちゃんが、暫し虚空を見上げて考える素振りをしてから、やがて言葉少なに答えた。

 

「ん、と。3回目だよ、アメ姉。2日に一回くらい、探査してる感じ」

「だ、そうですよ御堂さん」

「一応、一般的な探査者の月ごとの平均探査数が20前後なので、それよりは気持ち少なめに設定して活動させています。ルーキーですから、まずは探査の流れに慣れることから始めたいと教官役一同で方針を固めまして」

「なので今日、1日で2つもダンジョンに潜るなんて初めてなんですよ。ドキドキしてます!」

 

 すかさず関口くんが補足説明を行う。どうやら彼女たちの探査ペースは、彼のみならず教官役みんなで話し合った末、決めたことみたいだ。

 2日に一回。となると月の半分はダンジョン探査に赴くことになる。慣れてきたらより密度を上げて一日にいくつものダンジョンを探査することになるんだろうけど、最初の頃としてはまずまずのペースなんじゃないかな? って、個人的には感じるかな。

 香苗さんも同様に思ったみたいで、彼の説明に対して頷く。

 

「把握しました、いい方針だと私も思います。新人はとかく逸りがちですから、教官のほうでセーブしてあげるのはいいことですね。関口、あなたの時にもこのくらいのペースでしたか? たしか」

「あ、あはは……あの頃は本当にお世話になりまして」

「えっ、関口さんでも最初はこのくらいだったんですか!?」

 

 新人の頃の話を持ち出されて、関口くんが苦笑いを浮かべた。3年前の香苗さんに教官として指導してもらってたんだから、いろいろとエピソードはあるんだろうなあ。

 チョコさんが意外そうに、かつての彼が自分たちと似たようなものだったことに驚きの声をあげている。たしかに、三人娘の教官役をしている彼の姿は立派だから、なんとなくイメージにそぐわないってなるのも頷ける。

 ポリポリと頬をかく彼を後目に、道を進みながら香苗さんは普通に答えた。

 

「彼に限らず、大概の新人はそんなものです。よほどの逸材でなければいきなりハイペースでの探査などとはいきません。私だって最初はスローペースでした」

「よほどの逸材……関口くんや御堂さんでもそうじゃなかったのね〜」

「ええ。私が知る限り、そう評されるに値するのは古今東西ただ一人」

 

 そう言って急に俺のほうを向く。とっさに俺も後ろを振り向くけれど誰もいない。最後尾だもの、誰かいたら怖いよね。

 えー、つまり俺ってか。関口くんも三人娘もつられて俺を見る。よほどの逸材? これが? みたいな顔だ、つらい。

 香苗さんはにこやかに高らかに謳うように告げた。

 

「我らが救世主山形公平様こそ、私が知るたった一人の逸材! 何しろ彼は探査者デビューしてからここに至るまでのわずか3ヶ月半ほどで、すでに200回を超える数の探査をおこなっているのですから!」

「はあ、200。って、え、200っ!?」

「えっと……月60回から70回は探査してるってことになるけど、本当なの?」

「毎日3回か4回は探査してることになるんですけど。え、この人おかしい……」

「ひどい」

 

 散々なドン引かれようである。まあ、普通の探査者さんの平均と比べるとちょっとだけ、数多くこなしてる自覚はあるけれども。

 関口くんまで化物を見る目で俺を見ている。やめていただきたい、クラスメイトだろ俺たち!




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