【マンガ1巻発売中!】攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー/天鐸龍

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スンッ……てなるわ

 まず、称号によって武器の使用が事実上、禁止されたこと。

 解説でなんか説教されたこと。

 世界初の称号らしく、ボーナスで俺の基礎能力がアップしたらしいこと。

 にもかかわらず音声ガイドさんに説教されたこと。

 

 以上四点、朝から組合まで足を運んで相談したところ、まあえらいことになっちゃった。

 いずれも組合の所属スタッフから、その場に居合わせた他の探査者さんたちまで。全員まとめてめちゃんこびっくりさせるだけのインパクトはあったらしい。

 変態を見る目で見られているなう。変態なら俺の隣りにいる御堂さんがそうだからそっちに視線向けてくれ、頼む。

 

「やはりあなたは何か、特別な役割を与えられていますね……!」

「いやあのほんと、そういうの良いんで……普通が一番なんで……」

 

 特別な主人公ポジションになってみたいとか思っていた過去はたしかにあるけどさ。実際、明らかに俺だけ浮いた感じになっちゃうとこれ、本気でつれぇわ。

 実際、目の前のスタッフさんなんてあからさまに困惑して、上司やら先輩やらと取り巻いて俺を見てくる。いじめかよ怖ぁ……

 こうなると過度にピッタリ張り付いて来ている御堂さんの存在がありがたく思えてくるから不思議だ。胸が腕に当たってめっちゃいい匂いしてやばぁ。思春期が暴走しちゃいそう。

 

「いやはや、どうも山形さん。当組合の責任者の広瀬と申します」

「あっはい。新米F級探査者の山形です」

「畏れ入ります。申し訳ありませんが今回の件に付きまして、いくつかお聞かせ願いたいことがありまして」

「あっ、はい」

「つきましてはどうぞ、面談室の方にまで御足労願えますでしょうか」

「あっ……はい……」

 

 偉い人が出てきて呼び出された怖ぁ。え、これいわゆる事情聴取やん怖ぁ。

 聞きたいことがあるったって何聞かれても答えようがないよ、だって何も心当たりねーもん。

 説教の内容から察するに、おそらく武器を使用したことが誰かさんの琴線に触れたのかもしれないけど、そうなると誰かさんって誰だよ怖ぁってなる。

 

 あんまり深く考えるのはやめて、もう偉い人と組織に投げよう。人生丸投げが肝心なんだ。

 そう頷いて俺は案内に従って歩き出す……御堂さんも相変わらずピッチリ一緒だ。

 これには組合長の広瀬さんもビックリして、彼女を呼び止めていた。

 

「み、御堂さん? なんであなたまで山形さんに付いて行くのです?」

「は? 彼がいるところが私のいるところですが?」

「何それ怖ぁ……」

 

 思わず広瀬さんと目が合う。

 え? 君たちそう言う? いえいえ事実無根です。

 そんなアイコンタクトを不思議と通じ合った結果、めでたくも憐れみの視線を彼から賜った。助けろや!

 

「彼ほどの価値ある探査者が、考えなしに組合に食い物にされるのを黙って見ているわけにはいきません」

「食い物!? 俺が!? 怖ぁ!?」

「しませんよ人聞きの悪い! 御堂さんちょっと離れてください! 話がややこしくなる!」

「そんなこと言って一人になった公平くんをあれやこれやで籠絡するつもりなのでしょう! 薄い本のように! 薄い本のように!」

「年頃の娘さんが何をはしたない!」

「私は彼から離れません! 私は彼の、ズッ友です!」

 

 そのズッ友ってのも一方的なもんじゃねーか!

 一人興奮するストーカー女に、俺も含めて一同ア然だ。

 この人ダンジョンより病院行った方が良いんじゃないかとすら考えられてしまう。せめて診察は受けてきて欲しい。

 ともかく、この場でこれ以上こんなことしてても俺の肝が冷えていくだけだ。御堂さんに、語りかける。

 

「御堂さん、俺なら大丈夫なんで」

「ですが、公平くん」

「たとえ受付の若い年上おねーさんスタッフが総出で俺を取り囲んで来たとしても。抜群の色気で流し目ウッフンとかしてきても。あまつさえとてもじゃないけどこんなところで言えないことをされたとしても! 俺、探査者ですから!!」

「やっぱり私も一緒にいます! ハーレムならまだしも一方的な籠絡なんてズッ友、許しませんよ!」

「するかするかするかー! もういい、まとめて来いバカども!!」

「あっ、はい」

「急にスンッ……てなるなよ……最近の若い子が分からん……」

 

 なんかすいません。

 ついにブチギレなすった広瀬さんの剣幕にスンッ……てなるが、逆にそれが彼を余計に疲れさせたようだ。案内する背に哀愁が漂う。管理職って大変だなあ。

 ともかく面談室に向かう。明日にはいよいよ高校の入学式があるんだから、こんなところでこんなことして時間、使いたくないんだけどなあ。

 せめて一時間くらいで終わってくれると良いなあ。

 そんなことをぼやく俺であった。


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