攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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弟子は師に教わり、師は弟子に学ぶ

 三人娘の指導役として抜擢された関口くん。しかもいいのか悪いのか、彼女たちのたっての希望によりメイン教官に据えられたがゆえ、他の教官たちからもまずは自分で考えて指導してみろと言われているらしい。

 それで彼なりにいろいろと考えた結果見事に煮詰まってしまい、そんな折にたまたま出くわした香苗さんと俺に相談を持ちかけた……と、言うのが実際の状況とのことだった。

 

「他の教官たちにも相談をしようかと思っていた矢先でした。一応、何かあればすぐに言うように先輩たちからも言われてましたので」

「丸投げってわけじゃない、のかな?」

「そこは間違いない。なんでまずは俺だけでやってみるように言ったのか、そこは謎だけど……みんな優しくて気さくな人たちだ。あの3人にもよくしてくださっているし」

 

 それを聞くと、ホッとする気持ちと同時にやはり疑問が湧き上がる。意地悪や無責任さから丸投げしたってわけじゃなさそうでそこは安心したけど、じゃあなんでまずは彼一人でやってみてと言ったのか。

 言っちゃなんだけどあの3人、正しい連携が取れるように導くには結構な経験を積んでいる指導教官の人がやったほうが早いと思うんだけどな、個人的には。

 

 独り善がりで猪突猛進なチョコさん、すぐにテンパってアドリブの利かないアメさん、そして二人のフォローを行う一番負担が大きい役割についてしまっている、裏表の激しいガムちゃん。

 個性的なのは素晴らしいんだけど、特にチョコさんアメさんが連携以前のところで尖りすぎている。事実上ソロ戦闘を仕掛けているチョコさんは言うに及ばず、そもそも指示されなければメインスキルの行使すら危ういアメさんも大概問題ありと言うしかない。

 

 しかもそんな二人を一応でもまとめ上げ、パーティとして本当に最低限ながら形にしているガムちゃんという存在もかなり危ない。

 見た感じ今の時点で結構ストレスを抱えているみたいだし、聞こえないところでボヤくのも理解はできるけど……現時点ですでにああでは、今後定常的に3人で探査を行っていくことを考えると、早晩ブチギレて空中分解しそうな気がしてならないんだよね。

 

 レベルが上がるにつれて三人娘の聴力も発達していくだろうし、いずれは囁くような愚痴あるいは罵詈雑言も他二人の耳に入るだろうし。

 そうなる前に今、この段階で早めにどうにか手を打たないといけないってのは、指導役ならぬ俺にもわかる話ではあった。

 

 なので、そういう問題のあるパーティについては正直、今の関口くんには荷が勝ちすぎているきらいがあると思う。

 それをわからない他の教官方でもないだろうに、どうして一旦彼に投げたんだろう?

 疑問に思う俺に、香苗さんが答えてくれた。

 

「……関口の指導員としての実力向上を見込んでの采配ですね、これは。三人娘をどのように導くか、試行錯誤することで指導役であるあなた自身も成長するという画を描いているのでしょう、他の教官たちは」

「えっ……お、俺のことまで考えて?」

「初めての指導役に丸投げする理由など、嫌がらせや責任放棄など探査者にあるまじき動機でなければそのくらいしかありません。そのようなならず者どもではないのでしょう? 他の教官たちというのは」

「そ、それはもちろん!」

 

 力強く頷く関口くん。この様子だと本当に頼れる先輩方が、サブの指導教官として据えられているみたいだ。

 どんな人たちなんだろうな? 機会があればお会いしてみたい。考えてみると俺、日常的にやり取りする探査者が香苗さんか宥さんかリーベくらいなんだよね……そして前者二人は俺を前にすると狂信者にクラスチェンジするし、リーベは家族だし。

 

 他の知り合い探査者となると中々お会いする機会がなかったりするし、もうちょっと日常的にふと出会った時、気のおけないやり取りをするような探査者の人と知り合いたい気もするなあ。

 そんなことを思う俺はともかくとして、香苗さんは関口くんに向けてさらに続けて言った。

 

「であれば間違いないですね。彼らにとってはあの3人のみならず関口、あなたも成長するべき新人なのですよ」

「そんな意図が……俺、みんなに3人を任せられたんだって浮かれて、全然気づきませんでした……」

「とはいえ、初めての指導教官であの3人の相手というのは無理がありますね。せめて一人くらいはフォロー役として、ついているべきですが……何を考えているのやら」

 

 教える側の関口くんのレベルアップをも計っていたのか。師弟関係って、師が弟子に学ぶこともあるってよく言われるしな。そういう目論見も他の教官方にはあるのかもしれない。

 感銘を受けたように関口くんが唸った。完全に気づいてなかったみたいで、どこか恥じ入るように俯いている。たぶんだけど、自分はすでに一人前で、先輩たちとも指導教官として肩を並べているって思っていたのかも。

 

 そこにきて実は自分も、3人同様成長を促されていたってのは、プライドの高い傾向にある彼からすればショックなのかもしれない。

 けれどそんな素振りは一瞬だけだ。彼はやがてつぶやく。

 

「だったら、俺……腹を括ってしっかりと、彼女たちと向き合わないといけませんね」

「関口くん?」

 

 思わず顔を見る。

 覚悟を決めた戦士の顔だ。関口くんの目にはたしかに、勇気の光が宿っていた。




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