攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
アメさんに抱きつかれて鬱陶しそうに、けれど満更でもない感じを浮かべながらも次、ガムちゃんはチョコさんを見た。
その目にはアメさんに向けたのとは異なり、苛立ちの色が垣間見える。この子、これまでを考えれば当たり前だけどチョコさんに対しては特に、思うところがあるみたいだな。
「何より、本当に論外なのはそこのイノシシチョコさんですし。私もアメ姉も大概ですけど、輪をかけてひどいじゃないですか」
「……えっ。わ、私が!? なんで!?」
「自覚ないんだ……」
心底からギョッと驚くチョコさんの様子に、乾いた笑いさえ浮かべるガムちゃん。まったく私に心当たりがありませんと言わんばかりの様子に、関口くんもアメさんも唖然とするばかりだ。
ちなみに彼女、関口くんのカミングアウトに加えてガムちゃんの毒舌キャラ暴露と、次々明かされる衝撃の事実に対してずっと目を白黒させていた。
戦闘中も一人だけ、明らかに視野が狭い立ち回りをしていたわけだしなあ。もしかしなくても自分たちの問題点について、彼女だけは未だに自覚がないのかもしれない。
焦った様子でチョコさんは、関口くんを見た。
助けを求めるように彼へと叫ぶ。
「そ、そうなんですか関口さん!? わ、私おかしなことしてたんですか!?」
「チョコ……」
「だって私、切り込み隊長じゃないですか! 誰より先に斬りかかって敵を倒す、スピードスター! それこそが私の役割だって、関口さんも」
「何も考えずに突っ込むのは切り込み隊長でもスピードスターでもなく、鉄砲玉って言うんだよね」
「が、ガムちゃん……」
チョコさんはチョコさんなりに、自分のスキル《剣術》と《俊足》を活かしての切り込み役を務めることに、プライドを持ってやっているみたいだけど……
敵の勢いを崩し、仲間たちの行動をフォローするために戦端を拓く役割こそが切り込み隊長と言うべきであって。とりあえず敵と見るや突撃して、逆に他のメンバーの行動を制限させてしまうようでは、たしかにどちらかというと鉄砲玉と呼ぶほうがまだ適切なのかもなあ。
チョコさんに視線を向けつつも、先程よりは少しトーンダウンした声色でガムちゃんは続ける。
「……面と向かって言わなかったんだから、私もアメ姉も関口さんも同罪だけど。チョコさんの今の動きははっきり言って困るよ、独り善がりでしかない」
「せ、関口さんも、そう思ってるんですか……?」
「……ああ。切り込み隊長という役割の意味を、チョコは明らかに履き違えているとは思うよ。指摘しなかったのは、君に嫌われたくない俺の自己保身でしかなかった」
「関口さん……」
「すまなかった」
もう、頭を下げるしかないといった感じで謝る関口くん。チョコさんはもう絶句しちゃって、その場に力なく立ち尽くしている。
アメさんはおろおろしてるし、ガムちゃんはそんな彼女に抱きしめられつつ、呆れからかため息をつくばかりだ。
率直に言って、若干ギスってるよね。
「怖ぁ……」
「私たちは何を見せられているのでしょうか」
俺と香苗さんで二人、置かれた状況に遠い目でつぶやく。もうそろそろ居たたまれなくなってきたんですけど。
隣を見れば香苗さんも微妙に所在なさげにしている。言ってしまえば4人の内輪揉めを延々見せられている形なので、まあ気まずいのなんのって。
正直、そんなシリアスな空気になられてもなあってところはあったりする。別に誰か怪我したわけじゃないんだし、取り返しのつかないことになる前に腹を割って話せてよかったくらいだ。
当事者たちにとっては大変な、もしかしたら人生を左右するような場面に思えているんだろうけれど……傍から見てる分には、眩い青春の一ページですよねって感じしかしない。
気まずい沈黙があたりを支配する。仮にモンスターがまだ残っていたとしても、この空気を割って入ってくる勇者はそうそういないんじゃなかろうか。
そんな微妙な雰囲気を割って口を出したのは、意外にもチョコさんだった。
「みんな、ごめん! 私が悪かった。周りを見てなかった!」
「チョコちゃん……」
勢いよく大声で謝罪する。
裏腹に沈んだ顔ゆえ、空元気なのは誰の目にも明らかだけど、逆にだからこそ、あえて元気よく声を張っているのかもしれない。
「パニクってるアメさんに気づかず、ガムちゃんに負担を押しつけてる自覚がなかった! 関口さんにも気を遣わせて……山形さんや御堂さんにすら、気まずい思いさせてる」
「別に、チョコさんだけじゃないですよ……私もアメ姉も、みんな揃って悪いです。パーティみんな、ポンコツでした」
チョコさんに続いてガムちゃんが、反省の意を示す。
まあ……誰か一人だけが悪いってわけじゃなさそうだからね、今回の件に関しては。みんなそれぞれ問題があって、それがダメなシナジーを起こして結果、こんな事態にまでなっちゃった感じはある。
それを三人娘、そして関口くんは痛感したみたいだった。口々に、自分たちのこれからの展望を語っていく。
「だから! もう一度だけ、チャンスをください! ちゃんとした動き方や考え方を身につけて、みんなと連携できる私になりたいから!」
「……私も。口が悪いところとか、人を馬鹿にするとことか、直したいかも」
「落ち着いて行動できるようになりたいわね〜」
周囲をちゃんと見て、仲間のためになる動きを身につけたい。
人を見下すことなく、思いやりを持った言葉で仲間と接したい。
たとえどんな状況に陥っても、冷静に落ち着いて仲間たちのために行動したい。
3人それぞれ、自分のよくないと思うところをこの機会に変えたいと口々に語る。
そしてもう一人。
彼女たちの指導教官である関口くんもまた、決意を漲らせて声をあげた。
「俺も……俺も。自分の立場や周りからの目しか考えない最低な自分を、変えたいと思う。君たちと、一緒に成長していきたい」
「関口さん! もう一回、みんなでやり直しましょう! 私たちならきっと、こんなピンチもチャンスに変えられますから!!」
「……ああ! やろう、もう一度!」
力強い宣言。
ここから改めて、彼と彼女の挑戦が始まったように俺には思えた。
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