攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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年上キラー山形

 アメさんの動きを改善するための、俺なりの提言。

 コマンドプロンプトとして、スキルに精通している俺だからこそ言えそうなことを、いくつか述べさせてもらうべく俺は口を開いた。

 

「《召喚》した存在は戦闘終了か一定時間経過をトリガーに還っていくから、喚び出すタイミングはスキル使用者の自由だ。というわけでダンジョンに入った直後、そして戦闘終了後にそれぞれ予め《召喚》を使ったらどうかなって」

 

 戦闘が始まってから概念存在を喚び出すのではなく、予め概念存在を喚び出した上で戦闘へ突入するのだ。

 言ってみれば事前準備の一つで当たり前の話なんだけど、今のアメさんにとっては非常に有効だと思う。

 

 要するにテンパる前に喚び出しておけば、いくらテンパってもとりあえずとっさの指示にも対応できるわけなので……仮にガムちゃんが指示を投げる場合でも、まず召喚からってわけでなくいきなり攻撃なり防御なり牽制なりを頼めるってのは大きなショートカットだろう。

 というか、なんでしなかったんだろう? 自分の問題について自覚的なら、このくらいの発想はしていてもおかしくないんだけど。

 

 不思議に思って彼女を見ると、関口くんともども目を丸くして驚きを口にしていた。

 

「え!? そ、そんなことできるの!?」

「戦闘中にしか喚び出せないわけじゃないのか? 知らなかった……」

「……えっ。もしかしてそんなに知られてないの? 《召喚》の仕様って」

 

 思わず尋ねると香苗さん以外のみんなが頷いてきて、その様子にこっちこそ驚く。

 召喚系スキルは喚び出したものが帰還するタイミングこそ決まっているけど、喚び出すタイミングは特に決まっていない。つまりはいつでもどこでも喚ぼうと思えば喚べるんだけど、あんまり知られてないのか、その仕様。

 

 お互い戸惑いを見せ合う。俺と関口くん、アメさんに向けて、そういえばと香苗さんが溢した。

 

「以前、とある探査者が町中で《召喚》を使用するのを見たことがあります。戦闘目的でなく、乗物として使っていましたね。馬のような生き物を喚び出して跨り、首都高を猛烈な勢いで走っていましたが、そういうふうにも使えるスキルなのかと感心した覚えはたしかにありますね」

「本来は概念存在との交渉に労力を割く分、いろんな用途に使えるスキルですからねーっていうか何ですかそれカッコいい!?」

 

 召喚系スキルの使い方としては正しい用途の一つではあるんだけれど、想像すると凄まじい絵面ではあるよね、馬のような生き物に乗って首都高を爆走って。

 おそらくはなんらかの神話生物だろうけれど、そういうのを喚び出すには3つか4つは条件数が要るはずだ。となれば結構なレベルの探査者さんなんだろう、あるいは名のある人なのかな。

 気になる俺に答えるように、香苗さんはその首都高ダービーさんの名前を口にした。

 

「愛知九葉。一年近く前にS級探査者になりたての彼女と組んだ時に見たのですが、大した技術でした。弱冠16歳でS級になるだけはあります」

「愛知、九葉……たしか最年少のS級探査者でしたね。知り合いだったんですか」

「一応、A級トップランカーとして国内外のS級とはそれなりに知り合いですからね。S級になった今後、さらに関わっていくのでしょう」

 

 なるほどなあ……会ったことない人だけど、俺の中で愛知九葉さんの印象が神話生物ジョッキーに固まっていく。

 ていうか、スーパー居合お婆ちゃんだのダンジョンの破壊者だの神話生物ジョッキーだの伝道師だの、S級って何かしらぶっ飛んでないと至れない領域なんだろうか。きっとそうなんだろうな。俺にはとてもなれそうにないや。

 

 閑話休題。

 魔境極まるS級探査者についてはさておき、と俺はアメさんに言う。

 

「とにかく、スキル《召喚》の発動自体をたとえば部屋に入る直前にしておくとか。事前発動しておくと、ある程度スムーズに動けると思いますよ」

「そう、なのね〜……戦闘が終わると還っていくから、てっきり戦闘に入ってからじゃないと使えないのかと思ってたわ……」

「召喚系スキル自体が結構レアだから、同系統スキル保持者にアドバイスをもらう機会もなかったからな……本当にありがたい助言だよ、山形」

「えっ……あ、いやーその。へへへ……そ、そう言ってもらえると嬉しいです、はい」

 

 嬉しいことに俺の提案はそれなりに価値があるものと認められたみたいで、関口くんから感謝の言葉をもらった。いきなりのことでキョドりつつも笑う俺に、なんでかガムちゃんがクスクス楽しそうに笑っている。なんでだ。

 

「強くて、いろんなことを知っていて、すごく頼りになるのに……変なところで子供っぽいんですね、パイセン」

「えっ……そ、そう? そんなに子供っぽいかな」

「年上キラーの異名ってそういうところから来るのかなって、納得するくらいには」

「年上キラー!?」

 

 何それ、そんな異名ついてんの俺!?

 たしかに俺が探査者になってから知り合った女性といえば、香苗さんとか宥さんとかマリーさんとか、アンジェさんとかランレイさんとかソフィアさんとかヴァールとか、決まって俺の肉体年齢より年上だけれども。

 何もそんな、キラーとかそんなアレなあだ名つけなくたっていいんじゃないでしょうか!?




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