攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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それぞれの成長、それぞれの前進

 終わってしまえばあっさりしたものだけど、まあ相手はF級モンスターだ。まともにパーティとして機能していれば、変に苦戦するほうがおかしいわけで。

 ましてや今しがたの三人の動きは相当に噛み合っていた。始まりから終わりまでしっかりと段取りを組んで互いの持ち味を活かし、組み合わせた動きをしたのだから、快勝に終わるのは当然の帰結ではあった。

 

「や……やった! やったー!」

「す、すごくスムーズに倒せちゃったわ〜……こんなの初めて……」

『くきゃー』

 

 今までにない完全勝利を決めて喜ぶチョコさんと、あまりにさっくり勝ててしまったことに唖然としているアメさん。隣でサラマンダーが、よかったね! と言うように鳴きながらその姿を消していっている。

 戦闘が終わったので、概念存在の住まう領域へと還るのだ。物質世界と裏腹の精神世界、概念領域。システム側の領域とはまたことなる、スピリチュアルな領域だな。

 

 気づいてアメさんがしゃがみ、サラマンダーに深く、礼を言った。

 

「ありがとうございました、サラさん……また、どうか力をお貸しください」

『くきゃ! くきゃ、くきゃー!』

 

 誠心誠意からの言葉に、精霊は笑ったようだった。高らかに鳴いて消えていく。

 シーンだけ切り取れば感動モノだけど、たぶんこのあと、すぐにまた呼び出すわけだからな……レパートリーがサラマンダーしかいなさそうだから仕方ないけど、他の精霊を呼び出せたら都度、交代させていくのもいいかもね。

 

「みなさん、お疲れ様です……うまく、いきましたね」

 

 と、ガムちゃんが二人に近づいた。その顔は達成感による高揚と、たしかな手応えを感じての自信が垣間見える。

 確信したんだな。自分たち3人が、きちんと噛み合って動けることを。そしてさらなる高みへと、飛躍していけることを。明らかに殻を打ち破った様子のガムちゃんに、チョコさんとアメさんも笑顔で応じる。

 

「ガムちゃんのおかげだよ! ……ごめん、今まで私が本当に足を引っ張ってた! こっちのやり方のがずっと早くてスムーズだった。私がみんなを、困らせてた!」

「私も、ごめんなさいガムちゃん。もっと早くからこんなふうに動けていたら、あなたにばかり負担を押しつけなくてもよかったかもしれないのに……ごめんね、一番年下のあなたに、私」

 

 勝利と、連携の成功とを喜ぶと同時に浮かぶ後悔。二人とも、これまでの自分たちの動きや問題点について改めて強く自覚し、反省したらしかった。

 口々にガムちゃんへと謝る二人。それを受けて、ガムちゃんは彼女のほうも、深く頭を下げて謝罪の言葉を告げる。

 

「私のほうこそ、ごめんなさい。イライラして、ひどい言葉ばかり二人に言ってました。嫌いじゃないのに、好きなのに、心ない言葉で傷つけて……最低でした」

「ガムちゃん……こっちこそ、そんなになるまで迷惑かけちゃってごめんね」

「ごめんなさい……これからはあなたにそんな思いをさせないように、頑張るから。だからこれからも、仲よくしてほしいわ。ね?」

 

 戦闘時、思いどおりにならない苛立ちを毒舌という形で二人に投げつけた。二人にも非があるにせよ、よくない行為だったのはたしかだ。

 そのことを謝りたくても謝りづらかったガムちゃんが今、ついに謝罪した。お互いに認め合い、絆を深め合う中で禊を行ったのだ。

 

 チョコさんとアメさんもまた、そんなことになるまで彼女を追い詰めてしまっていたことを恥じ、謝る。

 やがて三人は手に手を取り合い、強く握りあった。

 

「ありがとう、ございます……! これからも、よろしくおねがいします!」

「こちらこそ! 頼りにさせてもらうねアメさん、ガムちゃん!」

「ええ、よろしく二人とも」

 

 雨降って地固まる、というのも大袈裟なやり取りではあるけれど。どうにかこれで、三人のパーティが抱えていた連携に関しての問題は解消されそうだな。

 しかし、青春って感じでいいな……一時噛み合わなくても、やがて和解してそれまで以上に絆を深める。心と心が強く結びつく友情の姿だ。

 

 これからも度々、ぶつかったり離れたりすることもあるんだろう。だけどその都度、こうして和解して仲を深めていく。

 おかし三人娘にはもう、なんの心配もいらないだろう。そう思える姿だった。

 

「一件落着ですね」

「みたいですね。無事に落ち着きそうでよかったです」

 

 香苗さんが肩の力を抜き、ふうと息を吐いた。なんだかんだでこの人も心配していたんだろう、若き新人探査者たちの行く末を。

 それがある程度、安心できる姿を見たことで気が抜けたってところか。

 

 そして。俺と香苗さんが今回、ここまで深く関わることになったきっかけを作った指導教官、関口くんは。

 俺たちに向けて改めて、感謝の言葉を告げてきていた。

 

「ありがとうございました、香苗さん。そして山形。二人のおかげで、彼女たちは探査者として大きく成長できました」

 

 思えば俺にとっては彼こそ今回、一番印象が変わったかもしれない。真人類優生思想に染まったイケメン陽キャ探査者から、深い葛藤と矛盾を抱えてなお、前に進もうとするイケメン陽キャ探査者へ。

 春先から彼自身、大いに変わったところがあるからだろう。指導員としての責任を背負う彼の姿は、俺の目にはとても立派な一人の探査者に見えていた。

 香苗さんが、穏やかに声をかける。

 

「……3人だけではないでしょう。関口、あなたも成長したように私には見えます」

「え。お、俺もですか?」

「公平くんとの会話でもそうですが、この間までとずいぶん雰囲気が変わりました。それなりにまともな探査者に戻れそうで、かつて少しだけ世話をした者としては一安心ですよ」

「…………香苗さん」

 

 それはどんな気持ちからの表情なんだろう。

 泣きそうな、けれど嬉しそうな。何か、憑き物が落ちたような顔つきで。

 関口くんは、彼女の言葉を受けて静かに微笑んだ。




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