攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
「その組織が関連していた時期は、ワタシが直接相手取った一度目と、マリアベールが暴れに暴れた65年前の四度目」
「おばあちゃん、そんな暴れたんですか……」
「当時18歳で探査者歴5年目と、精神的も肉体的にも極めて充実していた時期だったからな。その分生意気さも全盛期といったところだが、長い彼女の人生の中でも五指に入る実力を誇っていたタイミングだろうな」
アンジェさんの祖母、ここにはいないマリーさんの武勇伝を聞く。今や83歳と探査者全体で見てもトップクラスで御高齢な彼女にも、当然ながら若かりし頃というのはあるわけで。
65年もの昔、18歳の時のマリーさん。話を聞くに相当なやんちゃさんだったみたいだけど、どんな感じだったんだろうね。写真とかあったら見てみたいもんだよ。
「話を戻すぞ。第一次と第四次に加えて第五次、第六次がその組織……委員会と名乗る者たちの手によって引き起こされたモンスターハザードだ。第六次が37年前に起きているので、実に半世紀はくだらない真似をしていたことになるな」
「名前だけ同じだったり、中身が全然別物だったりって説はありますかー?」
リーベの質問。たしかに、名義だけ拝借して実は別の組織、あるいは後継組織でしたって可能性もないことはないのか。
半世紀もそんな、嫌がらせみたいなモンスターハザードをしつこく繰り返す組織とか地味に嫌だし、そうであってほしい気もする。
そんな俺の想いとは裏腹に、しかしヴァールは首を横に振った。
「いや、考えにくいな……第一次ハザードの際、取り逃がした大幹部の何人かが第六次においても活動していた。だいぶ老いさらばえていたので今はもう、この世にいないと思われるが」
「か、か、幹部が同じだから、組織も同じって、こ、ことですかぁ……?」
「そうだな。そう考えるのが妥当に思える。名も構成員もやることさえも同じならば、それはもう同じ組織だろう?」
「そりゃそうだ」
そもそも半世紀という、人生のほとんどをそんな活動に費やさないでほしかったという無念さはあるけれど。残念ながらその委員会とかいう組織は90年前から37年前に至るまで、連綿と存在していたと思う他ないわけか。
となると、それ以外の第二次、第三次、そして最後に起きたとされる第七次もまた、別の組織による連続性のある事件だったりするんだろうか?
聞いてみると、ヴァールはそれにも否やを返した。
「第二次、第三次、第七次はそれぞれ単発的に起きた事件だな。その3つは委員会は直接関わっていない……まあ、過去起きたハザードを模倣して引き起こされたという意味ではやはり、元凶はやつらと言えるが」
「模倣犯かあ……いつの時代もあるんだな、追っかけ的というか類似的な犯行みたいなのって」
「そういう後追いを防ぐ意味で、一連のモンスターハザードについてはほとんどの情報を非公開にしている部分もある。モンスターの兵器利用など、断じて表沙汰にしていいものではないからな」
たしかに……モンスターを利用した犯罪なんて、センセーショナルではあるものなあ。当時は下手すると自滅さえ招く諸刃の剣だったろうけど、邪悪なる思念の呪縛から解き放たれた今だとより簡単に模倣できちゃいそうだし。
モンスター軍団で総攻撃! とかやられたら目も当てられない。そういう可能性をできる限り減じる意味でも、モンスターハザードの情報については詳しく公表できないのも当然の話だった。
アンジェさんが挙手とともに、ヴァールへと問いかける。
「で、ヴァールさん。今回ターゲットになってるサークルってのが、もしかしたらその委員会ってのと何か関わりがあるかもってことですか?」
「あるかもしれんし、ないかもしれん。だが、何か類似する不気味さを感じるのはたしかだ。委員会と対峙していた頃に感じた薄気味の悪い邪悪な意志、気配を……膜のような薄さだが、感じなくもない。所詮は印象論だがな」
「他ならぬヴァールさんの直感です。単なるイメージじゃ片づけられませんよ」
直感的なものに過ぎない予感を語るヴァールに、それでもアンジェさんは頷き理解を示す。ランレイさんも同様だ。
このへん、探査者として上澄みの人たちだからこその感覚なんだろうか。第六感的なセンスを決して蔑ろにしない感性は、勘の鋭さにも繋がっているように思う。自分だけでなく、信じた相手の直感さえも信じ抜くメンタリティというのも、A級トップクラスの探査者ともなれば自然と身につくものなんだろうな。
ともあれ、サークルと委員会との間に何やら似通う不気味さがあるらしいのはわかった。
俺的には首都に行くことはないため世間話っていうか、雑学程度のものでしかないけれど……まさに今からサークル相手に殴り込みを仕掛けるアンジェさんとランレイさんにすれば、敵は油断ならない組織だとより、強く警戒することだろう。
それを含めてのヴァールからの情報提供だったのかもしれないな。
「気を引き締めて取りかかれよ、二人とも。聞くところによれば、サークルの件についてはダンジョン聖教の当代聖女がなぜか、首を突っ込もうとしているらしい。やつらはやつらで独自の思想で動くから厄介だ、気をつけろ」
「え。来るんだシャルロット……あの子独特なんですよねえ。了解です、ヴァールさん!」
「な、な、なんであの子まで参戦するのかなあ……と、とにかく気をつけます!」
何やら不穏な情報。ダンジョン聖教の現役聖女さんまで参戦するとかしないとか。
なんだか首都がどんどん物騒になりつつあるようなことを匂わせるヴァールに、俺とリーベは思わず顔を見合わせた。
ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします
書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。
Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします