攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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しょうがないなあ、山形くんは

 片岡くんとの陰キャ同士、何やら通じあう奇妙な親近感、奇妙な友情は一旦、置いておくことにして。

 話題を変える意味もあり、俺は明後日の夜にクラスのみんなと夜祭に遊びに行くことを、ぷんすかリーベちゃんに伝えてみた。

 

「大橋前に公園あるだろ? あそこで毎年やってるんだよ、夜祭」

「それに行くんですかー!? いいないいないいなー!!」

 

 反応は劇的だった。そもそも夜祭があるってこと自体知らなかったみたいで、目を輝かせて俺に、憧憬と羨望の視線を向けてくる。

 まあ、うちの家族みんなこの手のイベントへの参加には積極的じゃないしな。ていうか我が家は夜、出歩かないんだよ基本的に。門限も仕事でなきゃ18時だし。

 

「行きたいなー、行きたいなぁー! え、優子ちゃんとか誘ったら行けますかねー!?」

「え。どうだろ? あいつ、この暑い中でも外をうろついたりするかな」

「う」

 

 はしゃぎ騷ぐリーベ。ひとまずブラック精霊知能だった頃のアレコレからは思考を逸したみたいだけど、さりとて優子ちゃんを連れて夜祭に行きたいのか。うーん? 

 正直、厳しいんじゃないかなあ。なんならあの子が一番、この手のイベントごとを億劫がるタイプだし。去年の夏祭りには家族みんなで行ったけど、その時も割と面倒くさそうにしてた記憶がある。

 

 一応、粟律中学で所属してる陸上部だってあの子、幽霊部員だものなあ。引きこもりがちなわけじゃないけど、方向としてはアウトドアよりインドア派。それが我が愛しの妹ちゃんなわけだね。

 

 そのへんは短いながらも把握しているみたいで、リーベの動きが止まる。しゅんってなってる姿を見ると、連れて行ってあげたい気持ちにはなるけど、さすがに今回は厳しい。

 クラスの集まりにこの子を連れて行く理由がない。マジのガチで何一つも欠片たりとてもないのだ。むしろ連れてきたら"は? 何コイツ女連れで来てんの? "みたいな感じになってしまうのは容易に想像できるよ怖ぁ……

 

「……というわけで連れていけそうにはないんだよ。なんか、悪いな」

「うー……そこはまあ、仕方ないですよねー……リーベちゃんだってそんな、気まずい立場になりたくないですしー」

 

 彼女としてもそのへんは承知済みのことらしく、無念そうにしつつも理解を示してくれた。たすかる。

 ベッドの上、リーベの隣に腰掛ける。慰めるように背中を軽く擦ると、甘えるように俺の肩にもたれかかってくる。なんだか流れる、ちょっといい感じの空気。

 ともすれば青春味とはこのような風味なのでしょうかアオハルのカミサマ、とかなんとか思いながらも、慰めの言葉を紡ぐ。

 

「ごめんな。まあほら、リーベの言うことなら優子も乗るかもだし。知り合いを誘ったっていいし」

「ん……そう、ですねー。知り合いってなるとえーと、ヴァールにリンリン、ミッチーモッチーにミハミハ」

「ミハミハ?」

「逢坂美晴ちゃんですよー。こないだの探査者イベントの時に連絡先交換しまして、今もやり取りしてますねー」

「マジか。コミュ力たっか」

「普通では……?」

 

 いや普通じゃないよ、少なくとも俺には。首を傾げて困惑するリーベちゃんに、これが陽キャか……と戦律と尊崇の眼差しを向ける。

 逢坂さんと直に会ったの、その探査者イベントがお初だったよな、たしか? それでなんで連絡先交換してて、あまつさえ夜祭に誘えるだけのコミュニケーション取れてるんだよ。ちょっと僕にはよく理解できない。

 

 こちとらクラスメイトとそんな友だち関係になれたのだって、下手すると月単位でかかってるんだよ。

 マジで速攻仲良くなれたのなんて、それこそ香苗さんや梨沙さんみたいな向こうからガンガンくる勢か、あるいはマリーさんやベナウィさんのようにそもそも目上の方で、こっちをやけに気にかけてくださる方くらいだ。

 

 もうちょい積極的に行かなきゃなあ、とは自分でも思うんだけどね? ほら、あの……怖いし。話しかけたら相手のご迷惑にならないかって、つらいし。

 仕事が関係してなきゃ、あんまり自発的にコミュニュケーションを取りにいけないし。

 

 そんなことをつらつら、釈明するかのようにペラペラ話していると、なぜだかリーベに頭を撫でられてしまった。

 なぜだ。やけに優しい目で彼女が、静かにつぶやく。

 

「公平さん……過去に何があったか知りませんけど、考えすぎですよー。世の中の人はそんなに怖い人ばかりじゃありませんよー?」

「いや、あの。そ、そんなに怖がってないし」

「もしかしたらコマンドプロンプトの頃から、そうだったのかもしれませんねー……人格が発生した時点で自分以外のすべてが発狂寸前の大騒ぎだったなんて、よくよく考えれば悪影響でしかありませんものねー……」

「そこからのレベルですかリーベさん!?」

 

 まさかの500年前まで遡って言及されてしまった。山形公平どころかコマンドプロンプト自体が人間不信みたいに考察してるけど、それは俺へのダメージが加速度的に増すから深く考えないでいただきたい。

 それにそもそも俺は他人を怖いとか、ちょっとは思ってるけど不信気味とかでもないし! 他者を信じることを知らない哀れなモンスターみたいに言わないでほしいし!

 

 ──と、称号が変わった。

 このタイミング、また例によってワールドプロセッサからのお気持ち表明か。あいつもはや、俺の称号欄をSNS扱いすることについてなんらかの躊躇しなくなってるなあ。

 複雑な思いでステータスを確認する。

 

「《ステータス》」

 

 

 名前 山形公平 レベル807

 称号 流れ始めた時間を信じて、動き始めた世界を愛して

 スキル

 名称 風さえ吹かない荒野を行くよ

 名称 救いを求める魂よ、光と共に風は来た

 名称 誰もが安らげる世界のために

 名称 風浄祓魔/邪業断滅

 名称 ALWAYS CLEAR/澄み渡る空の下で

 名称 よみがえる風と大地の上で

 名称 目に見えずとも、たしかにそこにあるもの

 名称 清けき熱の涼やかに、照らす光の影法師

 名称 あまねく命の明日のために

 

 称号 流れ始めた時間を信じて、動き始めた世界を愛して

 解説 光も影も愛せるあなたであれば、今あるすべてを愛せます

 効果 なし

 

 《称号『流れ始めた時間を信じて、動き始めた世界を愛して』の世界初獲得を確認しました》

 《初獲得ボーナス付与承認。すべての基礎能力に一段階の引き上げが行われます》

 《……あなたが託した世界です。恐れることなく、信じて愛してあげてください》

 

 

「物言いが仰々しい!」

 

 なんかあの、俺が世界を恐れて引きこもってるみたいになってませんか!?

 ワールドプロセッサの相変わらずなワードセンスに、俺は思わずツッコミを入れた。




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