攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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突然スイッチが入るタイプの伝道師

「ええと、まずは改めての礼と謝罪を。御堂さん、山形くん。先日、俺たちが指導している新人探査者の徳島、鹿児島、新潟3名について、メイン指導員の関口に大変なお力添えをしてもらったと聞いています。そしてその結果、彼女たちの問題点が大きく改善されたとも」

 

 斐川さんからの経緯説明、っていったら大袈裟だけど、まあそんな感じの話がなされる。

 正直、今回の話では俺自身は大して何もしてないからなあ。お力添えとか問題点の改善とか言われましても、それは香苗さんの助言と、あと関口くんの奮闘。そして何より三人娘自身の努力によるものですよというのが俺自身の本音の見解だ。

 

 とはいえ、斐川さんたちからしてみれば俺と香苗さん両方の功績ということなのだろう。

 居住まいを正して三人、改めて頭を下げてきた。

 

「本当にありがとうございました。そして本来であれば我々指導教官がしなければならない指導を、そちら様方にご負担いただく形になってしまったことをここにお詫びいたします。この度は大変なご迷惑をおかけして、まことに申しわけありませんでした」

「申しわけない」

「すみません」

「う……」

 

 正直、戸惑うし困る。こうも年上の人たちに揃って謝られても、どう反応すればいいものか。

 なんのかんのあったけど関口くんは指導員としての成長を果たしたように思うし、三人娘だって連携を意識して動けるようになった。だったらもう、それでいいじゃんって思うんだよね。

 

 ぶっちゃけ済んだこと、くらいにしか思っていない俺としては、だからこのお三方に謝られたって、恐縮するしかないわけだ。

 静かに狼狽するそんな俺を横目に、香苗さんはといえば堂々たるものだ。静かに頷いて、三人に語りかける。

 

「こちらとしてはなんら、気にするものではありません。S級探査者として、今後の界隈を担う新人たちを助けるのは当然のこと。また、こちらの我らが救世主山形公平様におかれましてはそのような利害すら関係なく、ただ困っている人だからとそれだけで手を差し伸べたわけです──わかりますかみなさん簡単に言葉にできるそれが実行に移すにはどれだけ難しいことか見知らぬ誰かが困っているからそれだけで惜しみなく手を差し伸べることができる心根の清らかさ信念の尊さ在り方の美しさこれこそが救世主様の偉大な御姿そのものであり我々に示していただいている真にあるべき探査者としての在り様でありかつこれからの世界はそうした人々の心の光によって繋がれ真に平和で真に支え合う時代が訪れるべきなのだということをそして私は伝道師として御方の御威光を余すことなく教えとして世間に啓蒙する決意をさらに固めたわけなのです」

「香苗さん!?」

 

 唐突に伝道師スイッチを入れちゃ駄目だよ、みんな困惑してるでしょ!

 最初は普通に話していたのにいつの間にやら伝道行為が始まっていた。おう、シームレスに布教に移るのやめてもろて。

 

「ま、マジでやってんだな、伝道行為」

「S級探査者って、すごい……」

「S級の人って、やっぱりとんがってますねえ」

「怖ぁ……」

 

 なんということでしょう。斐川さん、荒巻さん、早瀬さんが揃ってドン引きしている。

 いや、早瀬さんは動揺してはないな? 物言いからして、S級探査者を何人かご存知なんだろうか? 世界中を巡ってるっていうし、遭遇する機会もあるんだろうな。

 

 さておき、香苗さんの肩を叩いて宥める。

 俺からのNGが出たことに軽く唇を尖らせながらも、彼女は気を取り直して続けた。

 

「……とまあ、それはそういうこととして。私たちのほうも、頼まれたからとあなた方を差し置いて出しゃばってしまいました。そこについては謝罪します、申しわけありませんでした」

「すみませんでした」

「いやいや! 勘弁してください、むしろ助かりました! 何より優先すべき徳島たちへの指導を、本来無関係にも関わらずご助力いただいたのです……どうか彼女たちのためにもそのようなことは仰らないでください。関口から聞いておりますあなた方のアドバイス、お見事でした」

 

 本来、関口くんが正規に頼るべき人たちを差し置いて俺と香苗さんが出張ってしまったこと、それも正直問題だった。その点についてはこちらも謝罪せねばならず、俺たち二人も頭を下げる。

 ただ、斐川さんたちはむしろ恐縮したようだった。慌てて手を振り、しきりにこちらを慮ってくる。

 

「そう言っていただけると助かります……ただ、失礼を承知でいくつかだけ。私のほうから、思うところを述べさせていただきたいのですが」

「ええ。どうぞお気遣いなく」

「関口……くんに、あの三人の指導を丸投げしたのはやりすぎではありませんか? おそらく彼の指導員としてのレベルアップのためとは思いますが、現状ではあまりに重荷すぎたと、彼女たちの抱える課題を見て率直にそう感じました」

 

 割とズバッと切り込んだ形だが、まあ香苗さんの思うところって言うとそこに尽きる。

 三人娘という、それぞれ結構な問題を持っていた新人さんたちをまとめて、初めて指導する関口くんに任せたこと。そのことについての意見だ。

 

 ここについては俺も割と、無茶振りだよなあとは思う。関口くんも関口くんで三人娘への気が引けて、面と向かってものを言うことを避けていたというのだからそこも問題だったんだけど……

 元を糺せば、結局経験の浅い彼にそうさせたのは斐川さんたち三人、という側面もあるのだから。

 

「関口くんが指導員として未熟だったことを加味すれば、三人をまとめて彼に任せることのリスクは十分、想定できたと考えます。そこについてお伺いできたらと思うのですが」

「そうですね……わかりました。つまるところは我々の判断ミス、という結論にはなるのですが。せめてもの誠意として今ここで、経緯を洗い浚いお話しましょう。関口にとっても、納得のいかない部分もあったろうからな」

「関口くんには、申しわけのないことをしました」

 

 詰問を受けて斐川さんが、眉を下げて弱々しく答える。荒巻さん、早瀬さんともども、申しわけなさそうに関口くんを見てポツリとつぶやく。

 この感じ、やっぱり悪意からの丸投げってわけでもないな。何か事情というか、考えがあったんだろう。

 関口くんが目を丸くするなかで、斐川さんたちの説明が始まった。




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