攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
自業自得なところもあるとはいえ、直近の黒歴史を暴露された関口くんに哀悼の視線を向けつつも。俺は引き続いて斐川さんの話に耳を傾けていく。
おかし三人娘が当初、教官の目から見ても問題なさげなトリオだったこと。それゆえ、関口くんにも安心して任せられそうだと彼をメインに据えたこと。そこまではわかったけど、じゃあそれが間違いだったと気づいたのはいつ頃のことか。
難しそうに顔をしかめつつ、彼は当時を振り返っていった。
「風向きが変わってきたのは新規探査者教育が終わり、実地指導を行う段になってからだ。つまり10日ほど前からだな。探査帰りに見かけた関口の顔つきが、あまりに暗いものだったのでおや? と感じた」
結構直近のことみたいだけど、話を聞くにそもそもおかし三人娘が本格的に探査を始めたのがそのくらいの時期なので、まあ発覚には遅すぎるってわけでもないのか。
おそらく関口くん、彼女たちが初めて探査した時点である程度、連携の拙さを思い知ったんだろうな。そしてそれは彼にとって、想定外もいいところな大誤算だった。
暗い顔をしていたってのも、降って湧いたに等しい問題にどうするべきか、悩んでいたんだろうね。
荒巻さんがムッツリとした厳しい目のまま、軽く吐息を漏らす。怒っているようにしか見えないけど、そういう気配というか空気は纏っていないので、普通に真剣な顔をしているだけなんだろうな。
鋭い目つきで関口くんを一瞥しつつ、彼女は低い声で言った。
「一応、その時点でも彼には伝えたんだ。何か問題があったらすぐ相談なさい、と。その時は素直に頷いていたんだけど……まさか私たちの前に無関係の探査者に相談するとは思わなかった。しかも今をときめくS級探査者の御堂さんと、謎に満ちたシャイニング山形くんのコンビと来た」
「……すみませんでした。任せてもらったのに、おめおめと逃げ帰って泣きつくなんて、って。くだらないプライドで意地を張ってしまっていました。勝手な判断で三人娘や先輩達はおろか、無関係の香苗さんと山形にまで迷惑をかけることになってしまって」
唇を噛み締めて、申しわけなさそうに、悔しそうに頭を下げる。関口くんは完全に、そのへんは自身のプライドによるミスだと認めているみたいだ。
自分がメインの指導員になったことで、斐川さんたちとも同格だと考えてたって言ってたもんな。それが実地での指導を開始して直後に考えあぐねて相談するなんて、彼からしたらたしかに、みっともない話に思えてもおかしくはない。
ただ、結論から言えばそちらのほうがいろいろ、スムーズに物事が運んだのもたしかだ。
結局そうしなかったがために彼は一週間近く思い悩んで何もできず、三人娘の成長も遅れ、挙げ句指導教官でなく外部協力の俺と香苗さんが事態の収拾にあたった形になる。斐川さんたちからすれば、なんでもっと早く言わなかったの……なんでこっちより先に無関係の人たちに協力を仰いだの……と言いたくもなるよね。
ただ、荒巻さんや早瀬さんは割と、そんな彼の迷いについては同情的な様子を見せた。
むしろ気の毒そうに視線を落とし、気まずげに続けて言ったのだ。
「あんたがそういう、見栄を張るタイプだってのは前からわかってたよ。繊細な年頃でもあるんだし、あんたの気持ちも汲んでもう少しこちらからも踏み込むべきだったんだ。変に気を遣っちゃった、こっちが悪かったよ」
「すみませんでした、関口くん。正直、私たちと一緒に彼女たちの指導をしてる中で、ちょっぴり天狗になってるかなー? とは思ってたんですけど……外様が口出しして、変に揉めるのもアレかな? と思って特に何も言ってこなかった私も悪かったです」
荒巻さんは大人として、もっと関口くんや三人娘に踏みこむべきだった、という後悔。そして早瀬さんは、たまたま居合わせて指導補助を頼まれただけの外様だからと、一歩引いたスタンスでいたことへの反省。
それぞれ、明確に自分たちにも問題があったことを認め、関口くんに詫びている。なんというやら、すごく責任感の強い人たちだな……正直、関口くんのそのへんの動きは普通に叱られても仕方ない部分だし。
同僚へ相談するより先に、外部の俺と香苗さんに話を漏らして協力を仰いだこともそうだし、何より自分のメンツを優先して三人娘への指導を停滞させたこと。
そのへんは第三者から見ても割とひどい動きで、言いわけする余地がない。乗っかった俺たちも悪かったのでそこについては先ほど謝罪したわけだけど、関口くんはそういう意味では全方位に謝らなきゃならない立場だったりするわけだね。
それを踏まえてなお、自分たちにこそ責任があったと語る荒巻さんや早瀬さんは、すごく真面目な大人なんだなと尊敬する。
関口くんもそこまで言われては自身の過ちに気づかないわけもない。恥じ入るように、俯いて応える。
「そこまで見抜かれて、しかもお気遣いいただいていたことに何一つ気づかなかった。自分本位にみなさんにご迷惑をかけて、おまけに謝罪までさせてしまって……っ、自分が情けないです、本当に」
「若いうちにはよくあることだ。俺なんかもっとひどいことやらかして、先輩に尻拭いさせちまったことも多々ある。反省はすべきだがな関口、大事なのはその反省を宝と思うことだぜ。俺らも悪かった……今後はお互い、しっかりと報連相しよう」
「はい。本当に、この度は大変なご迷惑をおかけしました。みなさん、すみませんでした!」
斐川さんからの優しい言葉を受け、目に薄っすらと涙さえ浮かべながら、心からの謝罪を俺たち全員にする、関口くん。
今回の経緯も粗方わかったし、それぞれの立場からそれぞれのミスについて謝罪して和解もできたし。さしあたってはこんなところで落ち着く感じだろうね。
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