攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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大体いつも美女に囲まれている救世主くん

 独り言の大きな外国人食レポ探査者さんという、なんだかやけに個性的な先客のことはさておいて、俺たちも店員さんに注文を頼んだ。

 カツ丼……あんな美味しそうに食レポまで入れてたら、俺としては頼みたくなるよね。

 

「ええと、カツ丼で」

「私は冷麺をおねがいします」

「カツ丼に、冷麺! ありがとうございまーす」

 

 香苗さんは期間限定メニューの冷麺を頼んでいた。夏らしくていいチョイスだなと思う。あの食レポさんがいなかった場合、俺も冷やし中華とか頼んでいたことだろう。

 と、関口くんが店に入ってきた。店員さんに俺たちの方を指さし、合流だと伝えてこちらに向かってくる。

 

「お疲れさまです。依頼人の、駐車場の管理人さんに話はつけました。いつでも探査できますよ」

「ありがとうございます、お疲れさまでしたね」

「ありがと、関口くん。はいメニュー」

 

 依頼人への連絡を済ませたことを報告しつつ、俺の隣に座る。メニューを見せるとすぐ、店員さんを呼んで冷やし中華を頼んでいた。

 一人だけ丼ものかぁ。なんとなく疎外感だけど、あの食レポどおりだとしたらカツ丼しか勝たんし。などと考えつつも料理が来るまでの間、しばし歓談に耽る。

 

「そう言えば一昨日、ヴァールとアンジェリーナとランレイさんが挨拶に来ましたね。公平くんのところにも?」

 

 香苗さんが、不意にそんなことを尋ねてきた。冷たいお茶を礼儀正しく、音も立てずに口にしての優雅な姿だ。

 関口くんともども見とれながら、俺は答える。

 

「そうですね、朝一に来ましたよ。なんでも昨日、関西を発って首都のほうに向かったとか」

「能力者犯罪捜査官というのは大変ですね。モンスターでなく、同じ探査者を相手取らなければならないのですから」

「今回の場合は探査者登録さえしてない、いわゆる能力者みたいですけどね」

 

 探査者とはつまるところ、スキルを得た上で全探組に登録した者のことを指す。それゆえ登録をしていない者は当然探査者ではなく、単に能力者と言われることになる。

 で、この能力者ってのは基本的に違法な存在だ。スキルを獲得したらまず、全探組に報告して探査者としての登録を行うことが法律で義務づけられているからね。それをしていないイコール、法律に背いた犯罪者として扱われるわけだ。

 

 で、今回首都へ行ったアンジェさんとランレイさんの相手はまさにその能力者。しかも、50人規模で集まって組織化した、完全アウトローな秘密結社だ。

 そのへんは機密にも関わるだろうから、関口くんが隣にいる以上深く話せないけど。どうあれモンスターでなく人間を相手しに行ったのだから、あの二人も大変だよなあとつぶやく。

 

「なんにせよ、人間の相手はモンスターとは勝手が違うでしょうから。大変ですよね」

「フランソワさんもシェンさんも、そのために来日したんですね……あのチェーホワ統括理事まで含め、なんであんなところにいたのかとビックリしましたよ」

「ああ、おかし三人娘との初顔合わせの時ですね」

 

 いつぞやA級ダンジョンに、彼女たちと潜った日。初めておかし三人娘と知り合った日でもあるね。その時、関口くんは俺と一緒にいたメンツの豪華さにドン引きしてたなと思い出す。

 S級探査者の香苗さんはいつもながら、加えてWSO統括理事のソフィアさん……あの時はヴァールだったけどね。に加えてA級探査者トップクラスのアンジェさんとランレイさんまでいたわけだ。

 

 なかなかお目にかかれない組み合わせだったんだろうな、きっと。

 なんなら他にも美少女すぎるリーベまでいたんだし、彼のみならず周囲の目は概ね彼女たちに釘づけだったなあ。同時に俺への嫉妬の視線も突き刺さりまくってたから、別の意味でも忘れられない体験だったね。ハハハハ怖ぁ……

 

「はーいカツ丼に冷麺です!」

「おっ、来た来た」

「冷やし中華も今お持ちしまーす」

 

 当時を思い返してビビっていると、店員さんがカツ丼と冷麺を持ってやってきた。先に注文した料理が順当に作られた形になり、冷やし中華はもうちょっとだけかかるみたいだ。

 カツ丼を見ると、炊きたてでホカホカのご飯に卵とじのトンカツがデカデカと盛られている。味噌汁と漬物もしっかりついていて、さっきの食レポさんのとまんま、同じ構成だ。

 正直、見ていると腹が減ってきた。香ってくる出汁の匂いが堪らないなあ。

 

「冷やし中華、おまたせしましたー」

「あ、どうも」

「揃いましたか。それではいただきましょう」

 

 と、なんやかんやで冷やし中華も出てきた。これで3人、準備は整ったわけだね。

 香苗さんの言葉に頷き、いただきます。手をしっかり合わせてから、俺たちは食事を開始した。どれどれ?

 

「……んー、美味しい!」

『おっ……! いいね、サクッとしつつジュワッと広がる肉汁と出汁!』

 

 食レポさんの独り言じゃないけど、ついつい感想が口から出てくる。いやマジ美味しいよこのカツ丼! 脳内のアルマも大喜びだ。

 出汁と溶いた卵でとじられた、サクサクに揚がったカツが口内で甘味と旨味のハーモニーを起こしている。ご飯も少し固めに調節してあって、出汁が絡まって食べやすくも弾力があって噛みごたえがある。

 

 味噌汁も最高で、塩分控えめながら鰹出汁の風味がよく効き、具材の豆腐と油揚げがいいアクセントになってくれている。漬物までよく漬かっていて、ご飯によく合う。

 総じて食レポさんの気持ちがよくわかる、いいカツ丼だと言えた。

 香苗さんの冷麺、関口くんの冷やし中華も相当な出来らしく、二人とも夢中になって食べている。

 そっちも気になるけど、とにかく今はカツ丼だ。俺も引き続き、箸を進めていった。




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