攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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下手に余裕があると逆にうまく行かないこともある

「まさか人の修行を出汁にしてイチャイチャしだすとは思わなかったぞ山岸……! 人として恥ずかしくないのか山手!」

「山形ですけど! イチャイチャなんてしてませんけど!?」

 

 ガシッ! と俺の両肩を掴んで間近で睨みつけてくる関口くんに、全力で容疑を否認する。いやマジで、イチャイチャなんてしてないんですけど!

 

 シルバーアーマーを倒したあと、小休止を挟みながらのやり取り。彼のカウンターについて香苗さんとあーだこーだ話していたのが、当の本人的にはイチャイチャユートピアに見えていたらしく。

 戦闘が終わってすぐ、今のように掴みかかられては因縁をつけられている、という状態が続いていた。怖ぁ……

 

「あの……マジでさ、関口くんのカウンターについて話してただけなんですって。聞こえてたでしょ?」

「戦闘中にそんな余裕あるかよ、お前じゃあるまいし……まったく。本当ですか? 香苗さん」

 

 俺の必死の抗弁に、まあ元々本気からの怒りじゃなかったんだろう、関口くんは呆れたようにジトっとした目を俺に向け、次いで香苗さんに確認した。

 疑念の視線を投げられて、なお彼女はフッ、と不敵に微笑み関口くんに答える。

 

「本当です。ただ私としてはあなたに対して常に敬意を持って接する公平くんの姿があまりに眩しく尊いものですからそちらのほうに正直意識が持っていかれていたことは否めませんだってそうでしょう春先からずっと迷惑行為を繰り返していた者相手にすら手を差し伸べ和解し友情さえも結んだ末に敬意を払うそんな素晴らしい人格の持ち主がどこにいるというのですか思えば我らが救世主様はいつだって誰に対しても優しさを忘れずに常に暖かな眼差しで見守ってくださってきましたある意味万物を超越した存在としての姿勢なのでしょう正直たまりませんすべてを見通しすべてを受け止める慈愛の眼差しでどうか私たちをずっと見守っていてほしいさすれば私たちは救世主様に護られているという絶対的な安心感に身を委ねつつこの世をよりよくしていかねばならないという使命感に全力を尽くすことができるのですからそろそろあなたもわかってきているのではないのですかそうですよねそうでしょう関口」

「ヒッ──そ、そうですか。ソウデスネ」

「むごい」

 

 まーた唐突に句読点がどっか行っちゃった伝道師に、あの関口くんまでもがドン引きしてカタコトで頷くばかり。怖ぁ……半ば無理矢理言わされてるじゃん。

 ヒッ、なんてほとんどホラー映画の悲鳴かなんかだよ。思わず気の毒な視線を向ける俺をよそに、関口くんは明後日のほうを向いて必死に話題を変えようとしていた。

 

「えっ、えーと! あーと、あ! どうでしたか俺のカウンター。さっきよりはうまくできてたと思いますけど」

「ん……まあ、そうですね。インパクトカウンターでしたか? については、インパルスカウンターよりも芯を捉えられている気がしましたが」

「でも、たしかインパルスカウンターのほうがカウンターを取りやすいんじゃなかったっけ、関口くん?」

 

 もっと伝道したかったのに、みたいな残念そうな顔をしつつも、探査者として問われたならば探査者として答えるのが香苗さんだ。

 今のところ二種類、見せてくれたカウンター技について、パワー重視のインパクトカウンターのほうがより、上手にタイミングを合わせられてきていると感じたと答える。

 

 俺もそこは同感で、たしかに都合3体、モンスターを倒したところを見てきたけど……事前に聞いていた、威力は低いが発動しやすいインパルスカウンターと、威力が高いけどタイミングがシビアなインパクトカウンターって触れ込みについては、なんか逆だな? って感じる。

 つまるところ、インパクトカウンターのほうが成功率が高いように見えるのだ。そこについて改めて確認すると、関口くんは腕を組んで悩ましげに呻いた。

 

「そのはずなんだ……スピード特化のインパルスカウンターのほうが発動が早くて出しやすい分、余裕を持って敵の動きを見ることができて、タイミングを見定めやすいはずなんだけど。なんかうまくいかないんだ。逆にインパクトカウンターのが変に成功する」

「正直、インパクトカウンター一本に絞ったほうが強いまであるよね。成功率高いし威力は比較的、高いし」

「その分、出しにくいのはあるんだけどな。インパルスカウンターのほうがどんな場面でも出しやすいってのは、あるんだけど……」

 

 思わぬ認識の齟齬に彼自身、理由を把握しかねているみたいだった。まあ、出しやすさとか扱いやすさってのも威力にも劣らず大事だからね。ただ、成功率が低いとそもそも成立しない話ではあるけど。

 ふむ、と香苗さんが顎に手をやり、考え込みながらもやがて、関口くんへと思うところを述べる。

 

「思うに……下手にタイミングを窺える分、無意識的に油断しがちなのではないでしょうか。逆にインパクトカウンターのほうが、チャンスがわずかとわかっているから集中して、成功率が高くなるとか」

「ああ……! それはあるかもしれません。インパルスカウンターは出しやすいから、簡単だからって思っちゃってるところはあります」

「まずはそこでしょうね。戦闘である以上命がけなのですから、精神的な油断や慢心を捨てること。常に気を張って、いついかなる時でも冷静に敵を見据えることができるよう、メンタル面の修練が今のあなたには必要と考えます」

「メンタル面かあ……やっぱ、染みついた傲慢さはすぐには拭いきれないよなあ」

 

 苦く笑いながらも頭をかく。傲慢ってほどじゃないと思うけど、まあ余裕があるからと気が緩むってのは誰にでもありがちかもしれないよね。

 俺にだって当てはまるかもしれないケースだし、我がこととして教訓にしておこう。精神的な強さも、大事なんだね。




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