攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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魔導伝道師プリズム★カナエ

 次の階へ降りる。地下二階、残るは5部屋。最奥が地下三階に一部屋あるだけなので、実質攻略するのはこの階層の4部屋分だけになる。

 ここからは香苗さんが受け持つ。かつての師匠から受け取った新装備、彩雲三稜鏡の試運転だ。

 

「本来、S級ともあろう探査者がC級ダンジョンを攻略するなど、その級の探査者たちの機会損失にもつながるため褒められた行為ではないのですが──」

「くえっくえっくえーっ!!」

 

 腕につけたブレスレットをひと撫でして、香苗さんは敵を見据えて言った。まさしく怪鳥音を鳴らすのは、空中を飛び回る一匹の鳥。

 

 最初の部屋、お寺の敷地内にある小さな塔が真ん中に建てられているそんな空間。20mはある天井近くを華麗に舞うのは、フェザーバードというモンスターだ。

 空飛ぶ鶏という、割と異様な光景なんだがそこだけではない。広げた白い翼から鋭く尖った羽を飛ばし、攻撃してくるという性質を持つ割と凶悪な敵だったりするのだ。

 現に今も威嚇の咆哮をあげながら、香苗さんに向けていくつも羽を矢のように飛ばしてきている。

 

「──新装備のテストということで、今回だけは私が出張らせていただきます。一応全探組にも事前のお伺いを立てていますから、まったくの無許可というわけでもありませんし」

「す、すごい……あの羽、俺じゃあ避けるので精一杯なのに」

 

 向かってきた刃物さながらの鋭い切っ先の羽を、しかし香苗さんは無造作に素手ではたき落とす。そして、なんら気にすることなくつらつらと述べていく彼女に、関口くんが唖然としつつも尊敬の念がこもった目を向けた。

 さすがS級探査者、C級モンスター程度の攻撃なら武器を持たずとも問題なしか。まさしく歯牙にもかけないって感じだ。

 

 この分だとなんの問題もなく、勝つのは香苗さんに決まっているわけだけど。今回はそんな勝ち確定の状況だからこそ、新装備を試すわけだからね。

 香苗さんが、ブレスレットをつけた腕を掲げた。途端、淡く光りだす銀色のそれに、命じるようにその名を呼ぶ。

 

「彩雲三稜鏡、起動しなさい」

 

 その瞬間、ブレスレットは真の姿を表した。元々のマント、漆黒の外套へとその形態を変えたのだ。

 闇の粒子となって香苗さんの周囲に纏わるそれが、次第に物質として固定化されていく。すごい技術だ……元々はA級モンスター、クレセントゴーレムの性質だというけど、それをそのまま再現するなんて尋常じゃない。

 

 唖然。隣の関口くんも目を見開いて、香苗さんがマントを纏う一部始終を見ていた。

 時間にして一秒足らず。わずかそれだけの時間で彼女の姿は、漆黒のマントに身を包んだニュースタイルへと変貌を遂げていたのだ。

 

「ふむ。マント形成までこのくらいかかりますか。本家のクレセントゴーレムに比べて遅いですが、合成繊維として他のものを混ぜ合わせたからでしょうね。いずれにせよ、ここまでは及第点です」

「か、香苗さん……」

「いかがですか公平くん、これが彩雲三稜鏡を身につけた不肖ニュー伝道師、御堂香苗です!」

 

 発動からマント形成までのプロセスを確認する彼女の、名前をついつぶやく。そんな俺に彼女は、満面の笑みで振り向いてくれた。

 いつものスーツの上から羽織った、真っ黒なマント。首周りが分厚く、それ以外は、ヒラヒラと薄い。急所を護りつつ機動性も重視している感じだ。

 

 なんていうか……旅人のようにも、あるいはなんかこう、魔法ファンタジー世界の住人のようにも見えなくはない。もちろん似合うのは似合うんだけど、一気にコスプレ感が出てきたな、とも思う。

 関口くんがふと、ポツリとこぼした。

 

「ま、魔法少女……」

「せ、関口くん。それ以上いけない」

「あ、ああ。なんか、悪い」

「誰がコスプレですか関口! これはどちらかと言えば伝道師としての正装! 救世主神話伝説を広める使命を背負う者としての装いでしょう!」

 

 どっちにしろコスプレじゃねーか!

 内心にて大いにツッコむ。というか関口くん、思っていても口にしちゃだめだよそれは。即座に反応したあたり、本人も気にはしてそうなんだから。

 

 彩雲三稜鏡のデザイン、香苗さんの思念を読み取ってのものか? それともはじめからかくあれとプログラムされたものを、呼び出しているだけか? 

 それによって香苗さんのセンスへの認識が若干、変わりそうなんですけど。

 

「くえーっくえっくえっくえっ!」

 

 とまあ、自称ニュー伝道師としてパワーアップしたらしい香苗さんの見た目はさておいて。

 彼女に向けてフェザーバードがまたしても羽根を発射した。今度は複数本一気に放つ、面の攻撃だ。

 

 しかし問題はないと、香苗さんはその場にて微動だにせずつぶやいた。

 

「面で仕掛けてくるならば、面で受けて立つまで……彩雲三稜鏡、防ぎなさい」

「くえっ!?」

 

 同時に蠢くマント、彩雲三稜鏡。裾が闇の粒子となって香苗さんの眼前に集まり、壁を形成する。これは、シールドか。

 彼女とモンスターとを完全に遮断する防御壁が見事、面単位での羽根攻撃をすべて防ぎきり、そして。

 

「《光魔導》、プリズムコール・デストラクション」

 

 転ずる反撃。香苗さんの代名詞ともいうべきスキル《光魔導》が発動し、部屋内に大きな虹がかかった。

 フェザーバードが驚く間もなく放たれる破壊光線。さきほどの羽根攻撃など比較にもならない本物の面制圧の攻撃だ。S級探査者の十八番の技に、C級モンスターが耐えられるわけもなく。

 

「くえ────!?」

 

 呻き声にも似た鳴き声をあげて、敵はそのまま粒子となって消えていくのだった。




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