攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

559 / 2045
探査者にしてはめずらしい、パワー重視の二重生活者(ワークライフバランサー)か……

 その後も香苗さんによる彩雲三稜鏡の試験──まあ基本的に防御性能と変形機能を確認しつつ、《光魔導》で瞬殺するというなんの危なげもない戦いの繰り返しだ──も一通りこなして、俺たちはダンジョンの最奥に到達した。

 時刻としては概ね一時間と少し。道中にてあれこれと話をしていたため、余計な時間をかけた感じはあるので、帰りはもっとスムーズだろう。モンスターもいないしね。

 

 毎度ながら部屋の中枢、大黒柱に埋まるダンジョンコアを抜き取る。そして俺は、香苗さんと関口くんに向き直った。

 

「さて帰りましょうか。来た道を戻るだけですし、時刻的にはそうですね、15時半くらいには外に出られると思います。ただ、空間転移で即時、入り口まで戻っても構いませんけど……」

 

 歩きで帰るか、空間転移で時短するか。どちらにするかを提案する。

 時間的にはそりゃあ空間転移のほうが早いんだけど、ダンジョン内を歩いて帰るのも個人的には悪くない。どうあれ夕方の夜祭までは暇だしね。

 

 だから俺としてはどっちでもいいんだけど、とつけ加えると、香苗さんはふむと少し考えてから、こう答えた。

 

「そうですね……空間転移を使っていただけますか? 今日の夜には湖岸で祭りがあるでしょうから、おそらく夕方前には電車も混み合い始めます。それは避けたいところですし」

「あ……そうか夜祭で人が増えますか。そりゃたしかに混むでしょうね。じゃあ転移ですね」

 

 思わぬ指摘。たしかに夜祭があるし、電車に乗って湖岸の公園に行く人も増えるに決まってる。となればダンジョン内を歩いて帰ると、満員電車に鉢合わせする可能性は高い。

 危ない危ない。別に満員電車自体は好きでも嫌いでもないけど、避けられるなら避けたい類のものでもあるし。こうなると転移で決まりだな。

 

 と、話を聞いていた関口くんがしきりに首を傾げている。

 目を白黒させて、疑わしい目で俺と香苗さんを見ているのだ。

 

「空間転移? は、え? なんだそれ、スキルか称号効果?」

「あー……」

 

 そう言えば彼、というか普通の探査者ってそもそも、転移系スキル自体与えられることはないんだった。因果律干渉系だから、ワールドプロセッサのほうで制限してるんだったか。

 まあ、今や友人兼ライバルみたいな立ち位置に収まってくれた彼になら、サクッと教えたって支障はないだろう。というわけで飛行能力同様、神魔終焉結界の機能だと教える。

 反応は劇的だった。唖然とした面持ちで、俺に向けて呆れたように言う。

 

「空を飛んだりワープしたり……お前やりたい放題だな。ていうかそれでだな、異常なまでに探査スピードが早い理由は! ズルいやつだな!」

「いやまあ、ズルいのはたしかにそうだけど! この能力を使えるようになったのは今月中旬頃からだし! それまでは普通に毎日毎日、飽きもせずひたすらダンジョン潜ってましたし!」

「それはそれで問題だろ、お前……ちょっとは休めよ。生き急ぎ過ぎだってそれはそれで……」

 

 ドン引きしたり憤ったりまたドン引きしたり、情緒が忙しないなあ関口くんは。いやまあ、たしかに仰るとおりでこの3ヶ月4ヶ月ほど、大分生き急いでいた自覚はあるんだけれども。

 

 アドミニストレータとして、リーベをこの世に顕現させる条件であるレベル300を達成しないといけなかったというのもあって特に、スタンピード直後から首都に行くくらいまではかなりダンジョンに潜りまくっていた記憶がある。

 それでいて学校生活もしっかり楽しんだんだから、俺ってば中々のワークライフバランサーだと思うの。いや、体力的にはかなり厳しかったことは認めますけどね。

 

「いろいろ用事も片づいてさ、俺ものんびりペースの探査をしていくつもりなんだよ。正直きつかったし、この数ヶ月」

「まあ、それならいいんだけどな。お前はライバルとか以前にクラスメイトだし、何か不幸があったら寝覚めが悪い」

「ははは……ま、まあまあ。俺は元気です、ありがとう」

 

 ここで実は今月一度、心臓ぶち抜かれて死んでます、なんて言ったら渾身の山形ジョークは成立するだろうか? しないだろうな。

 本当、命あっての物種だよねーと応えながらも俺は手を空に掲げた。俺の権能、神魔終焉結界の機能である空間転移能力を使用する。

 

 眼前にワームホールが開き、離れた空間とこの場所を繋げる。穴の向こうの景色はダンジョンの出入口付近で、ここを通ればすぐさまダンジョンから脱出できるってわけだね。

 

「よし。ここを抜ければすぐに外界に出られますよ」

「ありがとうございます公平くん。見ましたか関口、これがこの世の救い主、我らが至尊の救世主様にのみ使うことのできる奇跡の御業です。ああ、今また御方が私たちのために、貴くも偉大な御威光を発揮してくださいました……!!」

「き、奇跡と言われるとたしかにそう、としか言えないですね、この光景は……」

「やめてくださいおねがいします」

 

 さしもの関口くんも、実際に空間転移が眼前で発動したとなると香苗さんの伝道師ムーヴに賛同したくもなるらしい。

 いやマジやめて。君まで変な沼に漬かっちゃうと収拾がつかなくなるから!




ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします
書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。
Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。