攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

560 / 2045
今明かされる衝撃でもないぼっちの真相!

 空間転移によるショートカットを経て、即座にダンジョンから脱出した俺と香苗さんと関口くん。入った時と変わらない晴天、変わらない駐車場の姿。気持ち車が増えているくらいかな、そんなに人の出入りも激しくない。

 ただまあ、さっきも言ったけど今日は夜祭だ。そこそこ大規模だから、ちょっと離れたこのへんからでも見に行く人はいるだろう。そうなるとこれから徐々に、行き交う人の数も増えてくるんじゃないかなあ。

 

「マジで転移できた……一瞬でダンジョンの外に出たよ。ははは、マジかぁ……」

「これが公平くんの、救世主様の奇跡です。相変わらず、なんて尊い……偉大なる御方の前には、遠く離れた場所さえ等しい。つまりはこの世のすべてが等しいと、そういうことなのでしょう……!」

「…………香苗さん、いつもこんななのか」

「うん」

 

 本当に転移できたことに対してやはり、驚いた様子の関口くん。それと同時に狂信者ムーヴをかます香苗さんにもいい加減慣れてきたのか、何やら疲れたような顔をして俺に尋ねてきた。

 いつもこんなですよ彼女。なんなら今日はまだ大人しいくらいだったかもしれない。彩雲三稜鏡のテストのため、伝道師というよりも探査者として活動する時間が多かったからだろうけど。

 

「そうか……そうか、そうかぁ……」

「ドンマイ。あ、あと、空間転移についてはあんまり広めないでもらえると助かるかなって。便利すぎるから、この力だけでも揉め事になりかねないし」

 

 遠い目をして力なくつぶやく、哀愁漂う風情の彼に一応、俺は念の為に他言無用と伝えておく。

 ダンジョンの、少なくとも帰り道を短縮できるこの力はおそらく、探査者であれば大概の人が喉から手が出るほどにほしがるものだろう。もしかしたらこの力だけを目当てに、俺をパーティに誘ってくる人たちもいるかもしれない。

 そうなると揉め事に発展しかねないからね。

 

 というわけで積極的に広めるのは勘弁してほしいなーって伝えると、関口くんは理解を示し、快く頷いてくれた。

 

「わかってる。便利屋扱いでお前の活動が妨害されるのは、ライバル的にも嫌だしな。何よりこんなこと、言ったって信じてもらえるか微妙だ。たとえお前が香苗さんの言うとおり、救世主だとしてもな」

「ははは、たしかに」

 

 空間転移に関してはそもそも、香苗さんの動画でも一切見せてないからな。探査者の常識の外にある力を、不特定多数がいつでも見られる場において公開するのはリスクしかない。

 香苗さんもそこはわかってくださっているので、目下のところ空間転移についてはあくまで俺の友人知人の範囲内、別に教えてもいいかなーって人に対してのみ、知らせる感じとなっていた。

 

「誘われるかもしれないのは嬉しいけど、空間転移の付属物みたいに思われるのもちょっと、だしね。何よりスキルの都合上、ソロ戦闘が一番強いからさ、俺」

「だろうな……まあ、と言ってもたまにはパーティで潜るってのも悪くないぞ。ああそうだ、また今度、俺のパーティメンバーたちも含めて一緒に探査してみるか? 空間転移だのは使わなくていいし、ちょっとしたコラボって感じでさ」

「え。いいの?」

 

 意外な提案。関口くんのパーティと組んでの探査とは、思いもよらない展開だ。

 たしかに、いくら俺がソロ専門だからといってもパーティを組みたくないわけじゃない。いやむしろ、条件に合うメンバーならいつでも大歓迎って感じだ。現状リーベか逢坂さんくらいしか心当たりないけど。

 

 だから、この提案は結構ありがたかったりする。交友関係が広がることにも繋がるからね。探査者として、知り合いが増える機会は逃したくない。

 そう思いつつも本当かと尋ねる俺に、関口くんはなぜか、生暖かい目を向けてこんなことを言ってきた。

 

「お前、ソロ活動が多いしその上、世界的に有名な探査者の人たちとよく一緒にいて仲よさげだろ?」

「世界的に……まあ、香苗さんはもちろん、マリーさんとかとは、ねえ」

「そんなだからこの近辺で普通に活動してる探査者たちはみんな、お前に興味はあるけど話しかけづらくなってるんだよ。お前の人脈があまりにも圧倒的すぎて、なんとなく近寄りがたいんだな」

「そ、そうなんだ……」

「それは……たしかに普通の探査者からすれば、そう思うのも仕方ないのかもしれませんが……」

 

 明かされた真実。俺ちゃん、マジでぼっちだった! 香苗さんと二人、微妙な顔をしてお互いを見る。

 

 人脈について言われると何も言い返せない。実際なりゆきとはいえ、俺の知り合いはあまりにも有名人が多すぎる。

 香苗さんはもちろんマリーさん、リンちゃん、ベナウィさんの決戦スキル保持者組は言うまでもなく、その近縁にあたるアンジェさん、ランレイさんだって高名な探査者だ。極めつけに探査者界隈の元締めみたいな存在、ソフィアさんとヴァールまでいるし。

 

 それを思うと俺とよく絡みのある探査者で、そこまで社会的立場的にぶっ飛んでるわけでもないのっていうと、リーベと宥さん、逢坂さん、そして関口くんくらいか。

 探査者ツアーで知り合った人たちとは、SNSでよく絡むけど実際にお会いすることは少ないしね。

 

 そう思うと、少ないよなあ……そもそも総数が少ないけど、さらに少数だ。

 となると必然的に有名人と絡んでばかりいる俺に、周囲が気後れしてしまうのは無理からぬことなのかもしれなかった。




ブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします
書籍1巻発売中です。電子書籍も併せてよろしくおねがいします。
Twitterではただいま #スキルがポエミー で感想ツイート募集中だったりします。気が向かれましたらよろしくおねがいします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。