攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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お久しぶりのおばあちゃん

 帰りの電車はまだ、そこまで混み合ってはいなかったもののちらほら浴衣姿の人がいる。たぶん夜祭に向かっているのだろう。

 他府県にまで知られるほど有名な祭りじゃないけど、このへんの土地に住む人にとっては馴染みというか、夏の風物詩の一つだしね。

 

「私はそういった催しにはあまり、参加しないのですが……今年はリーベちゃんに誘われていますから、行くことになると思います」

 

 と揺れる電車の中、吊り革を掴んで立つ俺たちの会話。香苗さんがそんなことを言うものだから、俺は目を丸くして彼女に尋ねた。

 

「リーベが? あいつ、二日前に俺から聞かされるまで夜祭のことは知らなかったはずですけど」

「でしたら、知った直後に連絡してきたのでしょうね。ちょうど二日前の夕方頃、彼女から誘いのメッセージが来ましたから。なんでも使徒宥や逢坂さんといった知り合いに、片っ端から声をかけているみたいですよ」

「何してるんだ、あいつ……」

 

 やたら夜祭に行く俺を羨んでいたリーベだけど、だからって即座に知り合いみんなに声掛けするのか。フットワークが軽いというか、どんだけ行きたかったんだよとちょっとびっくり。

 正直、夜祭に行きはすると思ってたけど、せいぜいが妹ちゃんやら両親を伴うくらいだろうと予想していた。下手すると大所帯で行くつもりなんだな、あの子。

 

「というわけでもしかしたら、公平くんたちとも鉢合わせするかもしれません。もちろん、無理にお供するつもりもありませんので軽い挨拶くらいに留めますが、その旨ご承知ください」

「お気遣いありがとうございます。まあ、クラスの集いですからねこっちは」

 

 探査者としての俺と、学生としての俺は分けて考えてくれる香苗さんのお言葉が助かる。こういうところ、やっぱり大人の人だよね。

 さすがにクラスに直接関係ない人たちのグループと一緒に行動ってのは、筋が通らないし気まずいし。中学の時に恋人同伴で男だけのグループの遊びにやってきた友だちの話と一緒だ、時と場合は考えないと。

 

 組合本部の最寄り駅に到着。ここからの報告は香苗さんがしてくれるそうで、つまり今回のパーティは一旦ここで解散という運びになった。

 俺にしろ関口くんにしろ夕方には夜祭でクラスメイトのみんなと合流だ。そのため家に帰って支度して、また出かけなければいけない。

 

「それでは公平くん、夜祭でお見かけしたらよろしくです」

「ええ、こちらこそです香苗さん」

「遅刻するなよ山形ー」

「そっちこそね関口くんー」

 

 3人それぞれ別方向へ向かうので、駅を出た段階で各自自由行動だ。さてさっさと帰らなきゃね。

 駅から家までは歩いて10分と少し、そうかかる距離でもない。時刻は15時半前で、軽くシャワーして着替えて出ていくにしろ、待ち合わせの17時には全然間に合う。

 

 とにかく一回帰るかあ〜と、歩き始めたその時だ。見知った気配と姿が、進む方向からこっちに来るのが見えた。

 向こうも俺に気づいて、おや、みたいな顔をしている。俺は軽く手を振って、その人たちに呼びかけた。

 

「こんにちは、マリーさん。それにソフィアさん。お揃いでお出かけですか?」

「ファファファ! こいつぁ奇遇だねえ公平ちゃん、久しぶりってんでもないが久しぶり。半月ぶりくらいかねえ」

「私とはこの間、電話で楽しくお喋りしましたものね、山形さん。うふふ、こんにちは」

 

 俺にとっても馴染み深い、マリーさんとソフィアさんだ。二人、連れ立ってどこか出かけていたみたいだ。

 WSOの特別理事と統括理事が揃ってお出かけなんて、何事かと思う話だけれど……この人たちも今月来月はオフ同然と聞いているし、観光がてら彷徨いていたってのもありそうだね。

 マリーさんが気さくに笑いかけてくる。

 

「公平ちゃんはその格好、探査帰りかえ? 孫から聞いてるよ、神魔終焉結界とかなんとか。似合っとるねえ青いコート、ファファファファ!」

「私のヴァールが言っていた、山形さんの新装備とはこのコートのことなのですね……たしかにすさまじい力を感じます。ワールドプロセッサ様に並ぶ存在ですもの、これほどの装備だって、当然作れますものね」

「いや、ははは……滅相もないです。格好ばかり気取ってしまって、はははは」

 

 服装についてあれこれ言われるけど、ぶっちゃけ大分恥ずかしいなこれ!

 デザイン自体はアルマとはいえ、そもそもこういうコートを自作して着用しようと決めたのは俺だもの。どういった方向性のコメントにしろ、どうあれ精神的にはそこはかとなくダメージがある。

 格好いいとは個人的に思うんだけど、正直背伸びしてる感も自覚してるからそのへんに触れられると余計に来るものがあるんだろうな、と内心で考えながらも、俺はどうにか話を変えようと切り出した。

 

「あ、ええと……その、お二人はあれですか、これからどこかへ? それともすでにどこかへ行った、お帰りとかで?」

「ん? 両方さね。ちょいと公平ちゃん家に、リーベ嬢ちゃんに会いにいった帰りさね」

「私はその付き添いですね。それでこれから、近辺で行われるという夜祭に行こうかと思うんです」

 

 おっとまさかの山形家訪問の帰り途中! しかも夜祭にも赴かれるのか、このお二人。まさかリーベ、マリーさんとソフィアさんにも話を持ちかけたのか?

 話を聞いてみると、二人はここに至るまでの経緯を説明し始めた。




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