攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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クイズ・どっちが年上でどっちが年下でしょう?

 損なわれた肝機能を回復するため俺の家の、リーベに会いに来ていたマリーさんとソフィアさん。

 《医療光粉》での治療に際し、ヴァールのサポートもいるということでわざわざ、ソフィアさんにまでお越しいただいていたみたいだけど……マリーさんが上機嫌なあたり、施術は成功したと見ていいんだろうか?

 尋ねるとマリーさんは、非常にいい笑顔で頷き答えてくれた。

 

「ヴァールさんとリーベの嬢ちゃんは息のあったやり取りで、私に完璧な施術をしてくれたよ。いやまったく、大したもんさね、ファファファ!」

「と、いうと成功したってことですか?」

「完治とまではいかなんだがね、まあ一日に二、三杯飲む分には問題ないくらいにまでは、戻してもらったよ」

「おお……へ、へえ~」

 

 リーベすげー、ヴァールすげー……と、なるには微妙なラインの結果だ。精霊知能によるスキルでの医療が成功してなお、完治どころか寛解に至ってるかも怪しい感じにするのが精一杯だったのかよ。

 どんだけダメージ食らってたんだ、マリーさんの肝臓。逆によく今まで普通に生きて、あまつさえS級探査者として探査活動だってできてたもんだよ。

 

 改めてマリーさんの規格外っぷりにドン引きしつつも感心する。いくらトップ層の探査者として、相応に身体機能が強化されてるからっていってもこれは無茶だよ。

 同様のことはソフィアさんも考えていたみたいだ。にっこり笑って、マリーさんに対して少し、困ったような顔で言った。

 

「逆に、リーベ様とヴァールが二人がかりでもそこまでしか癒せなかったのです……呆れますでしょう、山形様? まったくこの子ときたら、若い頃はどれだけ飲んでたのやら」

「い、いやあソフィアさん、その話はもう、散々したじゃありませんかえ。ファファファ!」

 

 さしもの大御所もソフィアさんには敵わないらしく、焦ったようにそっぽを向いてごまかし笑いを浮かべている。

 なんでもデビューした直後くらいからお世話になっている関係みたいだし、そんな人から過去の不摂生について咎められたら、そりゃそうもなるよなあ。

 

「嬢ちゃんの話だと、日を置いてなんどか治療を繰り返してできるだけ寛解の方向に持っていきたいと言ってくれててねえ。ってなわけで公平ちゃん、来月いっぱいまでは度々、お宅に寄らせてもらうけれど堪忍してもらえるかえ?」

「堪忍だなんてそんな、いつでも来てください。医療系スキルは一度にやりすぎるとそれはそれで寿命を縮めかねませんから、間を空けて少しずつ施術するリーベの判断は正しい」

「ヴァールのサポートが必要みたいですから、その都合で私もご一緒します。お手数をおかけしますがよろしくおねがいします、山形様」

「わかりました。どうぞいつでもお気軽にお越しください、お二人とも」

 

 リーベ的にももう少し、回復させられないか試してみるつもりか。俺にとってもお二人はお世話になった人たちだし、できる限りのことはしてあげたい。

 という思いで快く来訪の旨を受け入れる。このお二人も来月末までは滞在されるそうだし、今後も何かと接する機会はあるだろうね。

 

「そんじゃあ私らはこれから一旦、宿に戻って夜祭に行く支度をするさね。何十年かぶりの酒だァ、涎が出るねぇ……またね公平ちゃん、ファファファ!」

「またお会いしましょう、山形様──マリーちゃん、一応お医者様にかかるまではお酒はだめよ?」

「……えっ!?」

 

 お酒が多少なりとも飲めるようになったことが、どれほど嬉しいのやら。心底楽しげに笑いながら夜祭への期待を見せるマリーさんに、ソフィアさんがニコニコしながらも釘を差した。

 ですよねー。俺でもわかる話なんだから、ソフィアさんならそう言うに決まっているのだ。

 ギョッとして、彼女に目を剥くマリーさん。

 

「いやそんな、リーベの嬢ちゃんも二杯くらいならって言ってたでしょう!?」

「そこは間違いないでしょうけれど、ちゃんと医療機関の判断を仰いでからにしないと、とも言っていたでしょう。リーベ様も、精霊知能ではあっても正式なライセンスを得ている医師ではないんだから」

「ん、ぐ。ぬ、ぐぐ……ファファファ〜」

 

 必死の抗弁も、いやリーベってば医者じゃないじゃん、という当たり前の正論によりあえなく返り討ちにされた。あらぬ方向に顔をやり、誤魔化すように笑うマリーさん。

 うん……こればっかりはね。素人が判断しちゃいけないことだしね。リーベもそこはわかった上でたぶんいける、くらいの話をしたんだと思うけど、酒が飲みたいあまり都合のいい部分だけ切り取ったな、この人。

 ため息とともに、ソフィアさんが軽く叱る。

 

「こーら。都合が悪いからってそっぽ向いて笑わないの。もう、83歳にもなるお婆ちゃんがわがまま言っちゃ駄目よ?」

「そ、ソフィアさんだってもうおいくつになるやらって婆さんじゃないですかえ……」

「話を混ぜかえさない。とにかく治療が終わって、お医者様に許可を得るまではアルコールは駄目よ、わかった?」

「ファファファ〜……わかりましたよ……」

 

 トホホ〜、みたいなノリでファファファと力なく笑うマリーさんに、やれやれとばかりにソフィアさんは肩をすくめた。

 マリーさん、こうなるとソフィアさんには弱いなあ……見た目は完全に祖母と孫娘だけど、実態は曾祖母と玄孫くらいの年齢差があるしね。もちろんソフィアさんが曾祖母だ。

 なんだか面白い関係だなと、俺は生暖かい目で二人を見守るのだった。




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