攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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祭りの前のひととき

 家に戻ったことだし、ひとまずシャワーを浴びようかなって思ったところ、母ちゃんが気を利かせてくれてお風呂まで沸かしてくれていた。

 ありがたい話だね、早速入浴する。

 

 リーベと優子ちゃんは18時に祭の会場に着くよう動くみたいで、父ちゃんは仕事帰りに直接集合場所に向かうとか。

 なので俺だけ単独別行動なわけだね。まあクラスメイトたちと集まるのに家族同伴ってのも、からかわれそうだしいいかなー。

 

「ふぃ〜」

「きゅう〜」

 

 熱いシャワーで身を清める俺と、肩に乗っかって気持ちよさそうに鳴くアイ。なんかこの子、帰ってきた俺にやたら擦り寄って甘えてくるので、まあ出かけるまでは一緒にいてあげようとこうして一緒に湯浴みしているわけだ。

 湯船に肩まで浸かり──アイは風呂桶に汲んだ湯の中で寝そべってだ──ふうとお互い一息。今日の探査は関口くんと香苗さんにお任せしっぱなしだったから疲れも何もないけど、それでも体が解れて心地いい。

 

「っあー……気持ちいいなあ、アイ〜」

「っきゅー。きゅきゅう、きゅう〜」

 

 アイとともに、気の抜けた声をあげる。このまま目を閉じたら寝られそうってなくらい気持ちがいいんだけど、そういうわけには当然いかない。

 今日はまだ、メインイベントが残ってるからね。楽しい楽しい夜祭だ。何年ぶりかなあ、友達と一緒にってのは初めてだし、緊張と不安があるけど、それにも増して期待と高揚がある。

 

 楽しい時間になるといいなあ! と胸を高鳴らせつつも、けれど俺は、同時に目の前でふにゃふにゃになっているアイに声をかけた。

 

「アイは、母ちゃんと留守番なんだよな?」

「きゅう〜」

「その分、店屋物頼むみたいだし。美味しい料理たくさん来るからさ、いっぱい食べるんだぞ」

「きゅーっ」

 

 風呂桶の縁に顎を乗せ、目を細めて力を抜きまくっているアイ。かわいらしいけどそのまま眠ったりするとそれはそれで大変なので、ほどほどのところで風呂からあがらないとね。

 

 前の祝勝会に引き続き、今回の夜祭にもアイは連れていけない。そもそもチビスケだけどドラゴンだし、パッと見で通常の生き物でないことは即座にわかる姿だしね。

 WSOがマスコットとして正式に発表するのは、少なくとも秋に入るあたりと聞いているから、それまでは引き続いてあまりお外を彷徨かせられないってのが現状だ。

 

 だから今日のところは、母ちゃんと一緒にお留守番。あの人はあの人で人がいっぱいのところは疲れるから嫌がるし、妹ちゃん同様にアイを頗るかわいがってくれているので好都合といえば好都合だ。

 夜祭で俺らが楽しむ分、ピザなり寿司なり取って贅沢すると言っていたのでアイも喜ぶだろう。なんでも食べるからね。

 

「秋になって、お前がWSOのマスコットとして世間に知られるようになったら……研究所だけでなく、あちこち一緒に行こうな、アイ」

「きゅう」

「ふふ……じゃ、そろそろあがろうか」

 

 夏が過ぎ、秋が来たら。その時はその時でまた、楽しいことがいっぱいある。

 その時を想って頬を緩ませながらも、俺はアイを優しく抱きしめて風呂から出た。脱衣所にてバスタオルを用い、俺とアイの水気をしっかりと拭き取る。

 

「ほーれほれほれほれー」

「きゅうきゅうきゅうきゅう」

 

 ワシャワシャと、痛くないようにしつつもしっかり拭いてやると、アイはマッサージされてるみたいで気持ちいいのか何度も声をあげている。かわいい。

 俺もしっかりと身体を拭いて、服を着る。当たり前だけど神魔終焉結界のまま出向くなんてことはしない。仮装パーティーになっちゃうからね。

 

 妹ちゃんやリーベが、俺用にと買ってくれていたみたいだ。黒地に白いラインが入った浴衣を身に纏い、洗面所の鏡の前に立つ。

 うーん、取り立てて特筆すべきこともないお顔。あんまり普通すぎて却って愛着が湧く。これこそ山形公平くんだよなあ。

 

「……よし。じゃ、ちょっとしたら出かけようかな」

「きゅう!」

 

 アイにそう言って、俺は自室に戻る。スマホで時間を確認すると、ちょうど16時。あと30分もしたら出かけるくらいでちょうど、集合場所にいい感じに間に合うな。

 クラスのグループチャットがにわかに盛り上がっている。見ると、クラス内で一番目立つリア充グループたちが先んじて集まり、もうすでに盛り上がりだしているみたいだ。すごいなー。

 

「お? 関口くんもいるのか」

 

 何やら"関口くん到着なう"みたいなメッセージが表示された。マジか早いな彼、家が近くだったりするのか?

 案の定というべきか、途端にクラスの女子のみなさんが色めき立った。次々と"私ももうすぐ着くから! "だの"関口くん浴衣? 浴衣!? "だのと、まあ人気者ったらありゃしない。

 

 山形くんなら浴衣ですけど? などとやっかみ混じりに思っていると、当の関口くん本人からもメッセージが。どれどれ?

 

『みんなおつかれ! 今日はダンジョン探査の帰りだから、残念だけど私服だよ。みんなは浴衣? 早く見たいな!』

 

 と、自撮り写真までつけての卒のないイケメンムーヴである。完全にアイドルじゃん怖ぁ……

 しかもそのメッセージに対しても結構な数、女子のみなさんが好意的な反応なんだもんよ。

 結局、夜祭には俺を入れても10人と少しが来るみたいだけど、女の子は基本、関口くん目当てなのかもしれないね。




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