攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
歩くこと概ね15分弱。思ったよりは早く集合場所の公園が見えてきた。のんびりと夏の夕暮れや、頬を撫でる風を楽しみながらの散歩気分だったけど、ここからは期待と緊張のクラスのみんなで夜祭だ。
梨沙さんとか松田くんとか、親しい友達がすでに来てくれていると助かるんだけどね……いなかった場合、俺は誰か来るまで近くのコンビニ内で、いろいろ物色するふりをしながら外を伺う不審者山形になってしまいそうな気がする。
だからせめて誰か、一人でもいて〜。
そう願いながらも公園前に辿り着く。入口の前、他人の迷惑にならない端っこのほうに見知った顔がすでに6人くらいいる。当然みんなクラスメイトだ。
なんなら関口くんもいて、真っ先に俺を見て声をかけてきた。
「よう。来たな、山形」
「何その待ち受けてました感。どうもさっきぶり」
探査用ジャケットだの武器だのはさすがに持たず、色シャツに短パンというラフな格好。それなのにスタイルがいいから抜群に映える、そんな小憎らしい彼が俺を見るなり、ニヤリと笑った。
ちょっと気障でニヒルな笑みに、周囲にいる女の子たちがキャーキャー言っている。当然クラスメイトなんだけど、反面俺に対しては遠慮がちに控えめな挨拶をしてくるばかりだ。
「あ、山形くんこんにちはー」
「こ、こんにちは……」
「さっきぶりって、もしかして関口くんとダンジョン探査してたの?」
「あ、う、うん。まあ、俺は見学で……」
女子からの質問に、キョドりつつも答えるとすごーい、だのヤバかっこいい! だのの声が彼女たちから次々投げかけられる──関口くんに。
待てや、露骨すぎるだろ! と言いたいけれど、自分で言ったように今日の探査はマジで俺ちゃん見学者だったのでなんとも言いにくい。
まあ、そもそも彼女たちとしてはとにかく関口くんを囃せればそれでオッケーなんだろう。完全にアイドル扱いだ、彼。
向けられる声援に対して爽やか笑顔を振りまく姿は、到底俺には真似できそうにない。絶対途中で面倒くさくなって逃げ出すし。それを思うと関口くんは関口くんなりに大変なんだろうね。
などと何やらしみじみ考えていると、今度はクラスのリア充陽キャ男子が近づいてきた。関口くんと並んでクラスの人気者な、ちょっぴりオラオラしてる感じの人だ。
「うぃーっす山形クン、元気?」
「あ。う、うん。げ、元気。お、お疲れ様」
「んだよキョドっちゃって! 浴衣似合ってんじゃん、なあ!」
「!?」
おもむろに肩を組まれた。それも力いっぱいこっちにもたれかかってきて、満面の笑みで俺を凝視している。怖ぁ……
俺らそんな距離感じゃなかったじゃん! 少なくとも一学期の間は特に付き合いなかったじゃん! 何をそんな急に距離詰めてきて、あまつさえ肩組みしてきてるんでしょうか!?
大混乱。俺なんかしちゃったんだろうか、勘弁してほしい。
陰キャ相手にこの詰め方はヤバいですよ陽キャくん、心臓止まっちゃいますよ!
……と、何やら陽キャくんが固まっている。今度はなんですかと彼を見てみると、ものすごく驚いた顔をして俺を見て、瞬きしている。
えっ、何?
「山形クン……もしかしてメッチャクチャ鍛えてね? え、体中筋肉バッキバキじゃね? ヤバくね?」
「へ……?」
「いや今、でっけー岩の塊相手に肩でも組んだのかって感じでさ。え、ちょ、腕とか触っていい?」
「あ、うん……まあ、はい」
どうやら俺の、地味な風貌に似合わない鍛えられっぷりを察したらしい。
微妙にドン引きした様子で聞いてくるから、俺はまあ腕くらいならと差し出す。なんなら力を込めて、マッシヴ山形を演出しつつだ。
プールの時にも指摘された記憶があるけど、そんなにムキムキになってるんだろうか?
春先に比べるとさすがにマッチョにはなってるけど、俺の中でのムキムキな人のイメージがボディビルダーだからなあ。ああいう方々に比べたら、俺ってば全然だと思うんだけど。
だけど陽キャくん的にはそうでもなかったみたいだ。俺の腕の筋肉を触って、今度こそ確信を得たらしく目を丸くして騒ぎ出している。
「ヤッベまじやっべ! 山形くんマジでムッキムキじゃんカッケえ!」
「へえ? 山形くんそんなに鍛えてるんだ。探査者だから?」
「……服着てるとわかんないね。細マッチョってやつかな?」
「モンスター相手に戦う救世主だもんなあ。そりゃムキムキでもおかしくないか」
騒ぐ陽キャくんに釣られて、その場にいるクラスメイトが揃って俺を見る。さすがクラスの人気者は、声をあげれば陰キャにも衆目を浴びせられるというのか。
急にスポットライトが当たると死亡フラグらしいけど、それって一回死んだ人間にも適応されるのかなーなどと、若干の逃避をしながらも愛想笑いを浮かべる。
「は、はは、あはは。いや、その、それほどでも」
「山形は春からこっち、ひたすらダンジョンに潜って探査してるからね。正直過労死してもおかしくないくらいの頻度で命を賭けて戦ってるわけだし、鍛えられていて当然なんだよ、みんな」
おっと、まさかのここで関口くんのフォロー。
いつぞや話した、俺のこの4ヶ月間の異様な探査ペースを踏まえつつ解説する彼に、みんな感心した風に俺を見るのであった。
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