攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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浴衣系ギャルには無限の可能性がある

 俺がまあまあ鍛えていることについて、みんなが集まってへえーだのほおーんだの、まるで珍生物を見るかのように遠巻きに視線を向けてくる。

 こんなに視線が集まること自体が居た堪れない。何しろ陰キャだからね。

 

 どうしたらいいんだ一体……と、陽キャくんが俺から離れ、今度は関口くんに絡んでいっていることにホッと一息つけながらも途方に暮れていると、そこに一筋の救いの手が差し伸べられた。

 

「おっはよー。みんな久しぶり!」

「お、佐山っちー!」

「佐山さん!」

「梨沙じゃんおひっさー!」

 

 我らがギャル系女子、佐山梨沙さんだ。きれいな金髪にメイクもバッチリな、相変わらずの美少女っぷりよ。

 しかも今日は浴衣姿でいらっしゃる。赤色の着物に青い帯を巻いてバッグを片手に歩く姿が、同じ高校1年生とは思えないほどに大人びて見える。

 

 総じて息を呑むほどに美しい。そんな彼女はさすが人気者、向けられる声やら笑顔にもそれぞれ応えていっている。関口くんもだけど、愛想いいよなあ〜。

 と、呆けたように彼女を見ていると、向こうも俺に気づいた。パアッと顔を煌めかせて、こっちに早足で近づいてきたのだ。

 

「公平くん! もう来てたんだね」

「え、あっ。う、うん。どうも梨沙さん。プールぶり」

「あはは、そうだねプールぶり!」

 

 ニコニコ笑顔で挨拶を交わす。俺にとってもよく知る友達が来てくれて本当に助かった! 本当に女神だ梨沙さん!

 思えば彼女とは終業式の何日か後、松田くんたちを交えてプールに遊びに行って以来だ。となると今日がもう7月最終日なので、実に約二週間はご無沙汰していたことになるな。

 なんというか、普通に久しぶり感ある。

 

「久しぶりだね、梨沙さんは元気してた?」

「うん、友達と遊びに行ったり勉強したり、あ、家族で星を見に行ったりもしたかな!」

「そっか……勉強もしっかりしてるなんて、すごいね梨沙さん」

「いやいや、フツーフツー! 後になって地獄を見るのとか、嫌だし?」

「ウッ……そ、そうだねアハハ」

 

 遊ぶだけでなくしっかりと、夏休みの宿題までこなしていたらしい梨沙さんの正論にダメージ! ハハ、今の今まで宿題のこと忘れてました。

 そういやあったなそんなの……くらいにしか思ってなかったわ、ぶっちゃけ。危ない危ない、これ夏休み最終日に泣きながら追い込みかけるルート突入してたわ。なんならその後ろでリーベと優子ちゃんに散々煽られる場面まで容易に想像できちゃうわ。

 

 冷や汗交じりのごまかし笑いに、梨沙さんも察してきたみたいだった。

 からかうような小悪魔スマイルを浮かべ、面白がった声音で言ってくる。

 

「公平くーん……その様子だとどーせ、宿題なんて今の今まで忘れてましたって感じでしょ〜」

「い、いや、その……あは、あははは。面目ない」

「……フフッ! 公平くん、夏休み入ってからも忙しそうだもんね。見たよ大学での、えーと模擬戦? プールの時にダンジョンに潜ってた女の子と戦ってるの。めっちゃバズってた」

 

 どうやら彼女、夏休み中でも俺の動画を結構見ているみたいだ。リンちゃんとの模擬戦までご存知とはなあ……でもアレに関しては普通にバズってるみたいだし、仕方ないか。

 こないだの探査者イベントにおける模擬戦の動画は、一番人気のものになるともはや500万回再生を叩き出した超人気動画になっているみたいだ。俺のビームだのリンちゃんの蹴り技だの、いろいろ不可思議な怪奇現象が多く映ってるからだね。

 

 中には映像加工を疑う声もあったけど、概ねシャイニング山形だからね、これくらいはしてもおかしくないよね、で済まされるようになってきたのは、果たして俺にとっていいことなのだろうか。

 振り返って思わず首を傾げている俺に、梨沙さんは続けてどこか、憂いのある面持ちでつぶやいてきた。

 

「公平くん、本当にすごかったよ……ビームとか、マジで特撮ヒーローじゃん」

「あ、あれについてはまあ。ちょっとこちらとしても、予測不能な出来事の積み重ねの末にできるようになったことだから」

「そう、なんだ……」

「……梨沙さん?」

 

 邪悪なる思念との最終決戦において、別にビームなんて放った覚えないんだけどなあ。なんてぼんやりと考えていると、不意に梨沙さんが顔を暗くして俯いた。

 ちょっと膝を曲げて覗き込むと、彼女はそんな俺に気づいてすぐ、明るく微笑む。

 

「なんかごめんね! 夏休み前にいろいろと終わったって言ってたけど、あんなすごいことができないといけないくらい、大変だったのかなって」

「あー……まあ、それは」

「そう思うとさ、なんだか怖くなっちゃって。無事に帰ってきてくれて、本当によかったなーって! 今更そんなふうに思ったの!」

「そっか」

 

 本当に、優しい子だと思う。出会って数ヶ月のクラスメイトにそこまで、心を砕いてくれるなんて。

 持ち前の直感力、観察力で俺がまあ、死ぬようなってか実際一度死んだような戦いに臨んでいたことを、例の救世主ビームから察したんだな。それで、優しいこの子は心を痛めた、と。

 

 クラスメイトが、友人が、下手すると一人いなくなっていたかもしれない。その可能性に思い至ったんだろう。

 どこまでも優しい、彼女に俺は笑いかけた。

 

「ありがとう、梨沙さん。俺はこのとおり、元気そのものだよ。あー、その。浴衣、似合ってる」

「あ……ありがとう! へへ、夜祭楽しもうね!」

 

 応えて笑顔を浮かべてくれる、梨沙さんの顔は煌めいていた。




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