攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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不穏な影を察知しました。調査しますか?→Y/N

 称号という名のホットラインにて、ワールドプロセッサから直々に弟子を取れ的なお言葉を頂戴した山形公平くん15歳、探査者歴5ヶ月のことはさておくとして。

 創作ダンスも終わり、いよいよ各種屋台が本格的に店開きをしたということもあって俺たち東クォーツ高校1年13組のメンバーは、例によってグループ単位で好き放題にあちこちをうろつくことにしていた。

 

 俺や梨沙さんのグループ、関口くんたちのリア充グループ、そしてもう一組、クラス委員長が中心となった大人しい感じのグループ。その3つに分かれているのだ。

 俺たちのグループはというと当然ながら食い気全開、焼きそばにたこ焼きにフランクフルトに焼き鳥にと、まああちこち分担して人数分買い込み、あまつさえコンビニで弁当なんか買ってきた子もいたりして、まさに宴会じゃねーかこれ! って感じの様相を呈し始めたのだ。

 

 公園の、湖岸が見えるあたりで遠野さんが持ってきたブルーシートを敷いてそこに座る。あたりを見れば同じように場所を確保しているグループが多く、これが春なら花見だなあとか思えるくらいだ。

 そんな中、俺たちも持ち寄った食料を真ん中にして、取り囲むように座る。例によって俺の隣に座る梨沙さんが、ちょっとワクワクした様子で言った。

 

「たくさん買ったね! 食べきれるかな」

「そこは問題ないんじゃない? 真知子がいるし」

「遠野ならこの量、一人でもいけそうだよなー」

「いやーへへへ! そんなこと言ってると本当に一人で平らげちゃうぞー!」

 

 一応3人いる俺や松田くん、片岡くんを差し置いて、遠野さんなら大丈夫的な判定を受けてしまっている。こないだのプールの時、朝から腹拵えとか言ってステーキ弁当平らげてからすっかりフードファイター扱いだな、彼女。

 本人はテレテレと頭をかくばかりで、そうした扱いを嫌がっている風でもないのが幸いか。なんなら冗談まで飛ばすくらいなので、彼女は彼女で大概ノリがいいなあと思う。

 

 さておき、ご飯を食べ始める。屋台の焼きそばって何年ぶりだ? いただきます。

 濃厚ソースが絡んだ、太目の麺に紅生姜と青のりがかけられている、まあオーソドックスな焼きそばだよね。具もまあまあ入っているのでボリューミーだし、腹の減ってる今だとすごく助かるね。

 

 とりあえず一口食べると、途端にソースの主張が口内に響き渡った。焼きそばソースの甘辛がふわっと広がり、俺の味覚を刺激してくる。おいしい。

 これこれ! この味は屋台感あるし、お祭りに来たって感じにさせてくれるよなあ。うまいのはもちろんうまいし、でもそれ以上に昔の記憶を辿らせてくれる、まさしく思い出の味だ。

 

『ん、むう……まあ、味は濃いな。たまに山形家で出されている焼きそばに比べるといろいろ、雑な印象が残る味つけだ。一度にたくさん作る分、どうしてもそうならざるを得ないんだろう。うん、これはこれでおいしい』

 

 脳内で何やらつぶやきまくるアルマさん。こいつ段々、感想が具体性を伴ってきてないか? そのうち句読点飛ばしだしたりしないだろうな? 身近にすでに二人、ベクトルは違えどそういう人たちがいるから不安になる。

 脳内でアレに近いことやられたら堪んないんだけどなあ、とちょっぴりゾッとした心地でいると、今度は梨沙さんが、何やら俺の前にたこ焼きを置いてくる。

 

「これも美味しいよ、公平くん」

「ありがとう梨沙さん。焼きそばも美味しいから、食べてみてよ」

「ありがと! えへへ、お祭りだなーって感じするね!」

 

 浴衣姿でにこやかに笑う、梨沙さんが非常に眩しい。

 夏の夕暮れに祭りの中で、かわいい女の子を始め友人たちとこんな一時を過ごす日が、まさか俺の人生の中で起きるだなんて……半年前までは一切、想像すらできなかった事態だ。

 

 ありがたいなあ。そんな感謝を胸にたこ焼きを一つ頬張る。うーん、うまい。シチュエーションや景色の風情もあってか、家でたまに食べる冷凍食品のたこ焼きにも増しておいしく思えてくるよ。

 グループのみんな、ワイワイ騒ぎながら楽しく食事をしている。なんか、楽しいなあ。ついしみじみとそんなことを思っちゃう俺ちゃんだ。

 

 ──と、そんな時。

 不意に、奇妙な気配を察知して俺は、背後を振り向いた。

 

「公平くん?」

「…………これは」

 

 人で賑わう祭りの中で、探査者の気配はそれなりに感じる。リーベたちだろう、ひとまとまりになって動いている気配も遠いながらも感知済みだ。

 みなそれぞれに、この祭りの熱気を楽しんでいるんだろうとは思う。

 

 だが俺が今、感じた違和感の主はただならぬ気配だ。まるで点滅して己を誇示するかのように、気配を薄くしたり濃くしたりしている。

 明らかに誰かを誘っている。おそらくは探査者を感知するスキルなり称号効果なりを保持するものへの、これはアピールだ。

 

『気づいたならばついてこい』という、メッセージなのだろう。

 俺は起き上がり、友達みんなに告げた。

 

「ごめんみんな! さっき知り合いが見えてさ。挨拶してくるから、ちょっと離脱するね」

「うん? わかったよ山形、俺らはここにいるから」

「もう花火やるまでここでゲームしようぜ松田」

「行ってらっしゃい、公平くん」

「ん、行ってきます」

 

 梨沙さんからの送り出しを受け、ブルーシートから出る。早めに済めばいいんだけど、なんだか嫌な予感も漂うなあ、この気配。

 何者か知らないが、祭りを台無しにするとかだったら止めにかかるからな、と内心にて嘯き。俺は気配の主を追い始めた。




はい→ややこしいルート突入
いいえ→ややこしいルート突入
山形に逃げ場なし!

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