攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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犯罪能力者には能力者犯罪捜査官をぶつけんだよ!

 80年前から、まるで見た目の変わらない人間──エリス・モリガナ。にわかには信じがたい話だけれど、火野老人の反応とそれに対してのモリガナさんの受け答えからして、どうも本当のことらしかった。

 本来であれば不老不死なんてありえない話だ。いかな探査者と言えど輪廻の輪からは逃れることはできない。あってはならない。

 

 それを考えても、おそらくは擬似的なものじゃないかと思うんだけど。

 まあそれは後で詳しく聞かせてもらうとして。そのモリガナさんは火野老人たちに向けて指差し、高らかに言い放った。

 

「昔話をしに来たわけじゃ無論なくてね、私たちも」

「モリガナ、お前は──」

「改めて名乗るよ? 能力者犯罪捜査官、S級探査者のエリス・モリガナと」

「同じく能力者犯罪捜査官! A級探査者の早瀬葵です!」

「S級……!?」

 

 能力者犯罪捜査官であるというところも驚きだけど、何よりモリガナさんが、香苗さんやマリーさんやベナウィさんと同様にS級探査者だってことにまず、強い衝撃を受ける。

 世界の探査者たちの頂点たる存在が、また一人俺の目の前に現れたのか。驚く俺に構わず、モリガナさんと早瀬さんが続けた。

 

「えー、火野とそっちの若いのはともかく青樹佐智。お前には国際探査者法違反の嫌疑がかかっている」

「モンスターの兵器利用、および秘密犯罪結社"倶楽部"との関係について! 詳しく事情聴取させていただきます!」

「関係っていうか幹部疑惑があるみたいだけどね。ま、神妙にお縄につきなさい。そっちの二人もついでだ、いろいろ聞かせてもらうよー」

 

 軽妙なノリのモリガナさんと、なぜかドヤ顔をしている早瀬さんと。二人の能力者犯罪捜査官に罪を突きつけられ、倶楽部だかいう犯罪組織の幹部と思しき3人は身構えた。

 モンスターを生物兵器として利用って、メチャクチャ重大犯罪じゃないか。

 

 青樹さんが、そんな恐ろしいことに主導的な立ち位置として荷担していたっていうのは……知ればショックだろうな、香苗さんに関口くん。

 哀しい気持ちで彼女を見る。たじろぎながらも青樹さんは、俺に向けたのと同じような憎悪の視線を、ヴァールたちに向けていた。

 

「WSOの走狗がっ! 劣等種どもの顔色を窺って、貴様ら真人類たる自覚はないのかァァァ!?」

「はいはい馬鹿なこと言ってないで、いいからとっ捕まりなさいよ。火野にしろ翠川にしろあんたにしろ、話は身柄を拘束してから聞かせてもらうから」

「できると思ってやがんのか? ガキだかババアだか……テメェがナニもんだろうがな、こっちもンなこと言われて黙ってられねえんだよ」

 

 激烈に吼える青樹さんと、ことここに至ってなお嘲りの態度を崩さない翠川と。俯いて表情のよく見えない火野は置いといて、幹部二人はすっかり戦うつもりでいる。

 それに応じて、ヴァールたちもそれぞれ構えた。

 

「《鎖法》。抜かるなよエリス、葵。こいつらは得体の知れないスキルを使う」

「《念動力》……了解です。葵、とりあえずやっちゃえ」

「《雷魔導》! 分かりました! 初撃は私から入れますよ!」

 

 スキル《鎖法》によって両腕に鎖を顕現させ、いつでも射出できるよう腕を的に向けるヴァール。

 腰から3本のナイフを放り投げ、スキル《念動力》で自在に操り滞空させるモリガナさん。ランレイさんと同じスキルを使うようだが、使い道はだいぶ異なるみたいだな。

 

 そして魔導系スキルの一つである《雷魔導》を使い、手にした三叉槍に電光を漲らせる早瀬さん。

 これは……武器にスキルを纏わせている? 見たことのないスタイルだ。三叉槍が金色の電流をバチバチと放出し、早瀬さんの周囲には紫色のプラズマがそこかしこにスパークして炸裂している。

 

 3人とも、実に手慣れた構えとスタイルだ。特にモリガナさんはしれっと追加でもう3本、細い針を投げてそれも《念動力》で操作して連中の後ろ側に回り込ませている。

 早瀬さんが初撃を入れるみたいだし、それに合わせて背後から奇襲するのかな。段取りしてのコンビネーションかはわからないけど、早瀬さんの宣言と派手な見た目で敵の目を惹きつけられるのも合わせてかなり有効な手だと思う。

 

「公平ちゃんはこっちさね」

「え。あ、はい……」

 

 始まる戦闘の雰囲気。ふとマリーさんが俺の手を引き、鳥居から出て境内の端っこのほうにまで連れ出した。

 さっきの位置取りだと、思いきり巻き込まれるからだろう。なんなら青樹さんなんてもろに巻き込む気満々だったしね。能力者犯罪捜査官じゃない俺と、そもそも探査者としては引退しているマリーさんはここに来ては蚊帳の外ってわけだ。

 

「ファファファ、済まんねえ。正直あんた一人でもどうとでもできるだろうが、能力者犯罪捜査官のライセンスを持たない公平ちゃんを矢面に立たせると、いろいろややこしいことになるからさ。まあまあ、こっち来ておばあちゃんと見物といこうじゃないか」

「見物て。いやまあ、たしかに俺が変に手出しするのも変なことになりそうですね」

 

 本職の能力者犯罪捜査官がいるからね。そっちにお任せするのがたぶん、一番話が早いのだろう。

 というわけで神社の片隅に移動した俺は、固唾を呑んで事態が動くのを見守っていく。




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