攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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火野くんアウトー(78年ぶり6回目)

 青樹佐智、火野源一、翠川均。

 さきほど俺に対して襲撃を仕掛けてきた例の3人組について、詳しく話を聞いていくと……どうもこれが、結構込み入った話に繋がっていっているらしかった。

 

「真人類優生思想の下、裏社会にてモンスターを海外へと密輸し続けている組織がある。先程の3人が所属していると思われる、倶楽部という名の秘密結社だな」

「倶楽部……クラブか。なんだか字面的には部活動とか、同好会って感じの響きだけど」

「強ち間違ってはいないだろう。真人類優生思想さえ持っていれば他は不問の、あらゆるタイプの人間が集う緩い繋がりのコミュニティのようだからな。探査者から能力者、果ては単なる一般人までもがメンバーにいることを確認している」

 

 ヴァールが語るのは、青樹さんたちが所属し、あまつさえ幹部ですらあるらしい謎の犯罪組織・倶楽部についてだ。

 バグスキル保持者を複数人も抱えている時点でかなり厄介な組織だとは思ったけど、その実態は割合、緩めの繋がりで構成された組織のようだった。

 

 まあ、青樹さんも火野も翠川もそれぞれタイプが違うというか、互いに互いを利用しあってる感じはあったからな、さっきも。

 特に青樹さんなんてあからさまに、掌の上でいいように転がされてる感あったし。火野老人の言葉にまんまとしてやられたこともあり、少しばかり苦い思いとともに振り返る。

 続けてモリガナさんが言った。

 

「倶楽部は規模だけならば世界的で、でもヴァールさんがさっき言ったように各国の組織同士の繋がり自体は緩い。だからどこかで一国の幹部を捕らえたところで、芋づる式にまとめてアジトに踏み込めるってわけでもないのが厄介なところでね」

「なので私ら師弟が世界方々を巡り、虱潰しに倶楽部のアジトを探し続けているんですよ、山形くん。この度来日したのもその一環です」

「犯罪組織を追って、世界中を股にかけてらっしゃるんですね……」

 

 なんというか、予想以上にスケールのでかい話が出てきた。国際的な犯罪組織かよ……そんなところの幹部だなんて、何やってるんだ香苗さんの元お師匠さん。

 それを追って世界を駆ける、モリガナさんと早瀬さんの能力者犯罪捜査官師弟コンビもだけど、なんだか映画が何かの設定みたいに思えてくる。あるもんなんだなあ、エージェントと犯罪組織のバトルだなんて。

 

「エリス先輩と葵ちゃんが今回来られたのは、さっきの連中を追ってですかい?」

「まあ、そうなるねマリー。厳密には青樹佐智一人を追っていたんだけど、まさか幹部格っぽいのが二人も釣れるとは思わなかったよ。結果的に誘き寄せるための餌みたいになってしまった山形さんには申しわけない物言いだけど、正直儲けた感はある」

 

 マリーさんの問いかけに、頭をかきながら気まずげにこちらを見てくるモリガナさん。なるほど、青樹さんを追ってみたら幹部格が二人もついてきた、と。鴨が葱を背負って来たというか、それこそ芋づる的な感じだったんだな。

 ていうか、モリガナさん先輩さんなんだね、マリーさんの。見た目は俺より少し年上くらいにしか見えないからアレだけど、たしかに雰囲気は老成しているものな。

 

 たぶんだけど、モリガナさんはモリガナさんでバグってるな。不老──肉体年齢停止バグでも引き起こしたか?

 その辺は後ほど、聞けるタイミングがあれば聞きたいところではあるけれど。今はとにかく先に、新たに現れた敵についての情報を得ることが先決だね。

 追加で現れた幹部の、火野と翠川についてヴァールも重ねて問いかける。

 

「翠川はともかく、火野に至っては80年越しの因縁だな。たしか、第二次モンスターハザードの際にエリスが叩きのめしたのだったか」 

「そうですね、ヴァールさん。そういやそんなやついたなあって、正直あの爺さんの名乗りでようやっと思い出しました。まだ生きていたのもそうですけど、いい歳してまだあんな悪ふざけしてるのかと目眩がしそうです」

「はっはっはー! 人生まるっと悪ふざけですね!」

「むごい」

 

 言われても仕方ないくらいの有様ではあったけれども、早瀬さん案外辛辣だよなあ。すっかり忘れていたモリガナさんもそうだけど冷淡な感じで、結果的にさきほど執着を見せていた、火野老人の独り相撲さが浮き彫りになる。

 78年前の、モリガナさんとの因縁か……第二次モンスターハザードって言ってるけど、そこで敵味方だった関係のようだ。

 ふとそのへんが気になって、モリガナさんに問いかける。

 

「ええと、モリガナさんは第二次モンスターハザードというものに関係していたと? そこであの、火野老人と戦ったんですか」

「エリスと呼んでほしいかな、山形さん……そうだね。78年前に起きたその事件で、当時18歳のうら若きエリスさんは、さっきの爺さんの若い頃の姿をボッコボコにしたよ」

「ボッコボコですか」

「首謀者の一人だったからね。4回か5回くらい戦って、その全部で半殺しにしたかなあ。最終的に捕まえはしたものの、間もなく脱獄して行方知れずになったとは耳にしてたけど……まさかこんなふうに再会するなんて。ハッハッハー、半殺し6回目かぁ」

 

 なかなか、血の気の多い話を聞いてしまった。モリガナさん……いやさエリスさんってば、結構気さくな感じだなあ。

 

 しかしそうか、ヴァールが第一次、モリガナさんが第二次。そしてたしか、マリーさんが第四次でそれぞれ活躍していたってこないだ、ヴァールが言ってたものな。

 そう考えるとたしかにモリガナさんは先輩で、マリーさんは後輩になるのか。78年前ったら、マリーさん5歳だしね。




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