攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─   作:てんたくろー

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まだ見ぬ明日へ、みんなで一緒に

 リーベたちのグループも、もうじき始まる打ち上げ花火を見るべく一旦、公園の入口にまで来ていたらしい。

 マリーさんとヴァールの二人ともここで合流して、そこから近くにある大橋の上から花火を見るのだとか。

 

「どうせなら橋の上から、何も遮るものもない状態で花火をみたいじゃないですかー。というわけでー、今からレッツゴー! なんですよー」

「なるほどなあ」

 

 大橋の上はたしかに昔から、この近辺で行われる花火大会においては絶好のスポットだ。

 年1回、8月の盆前くらいに行われる大規模な花火大会なんかだと、県外からも多く人が訪れることもあって大橋に交通規制がかけられるほどにあのへんは賑わっている。

 

 今回も、小規模の祭ながら大橋にはそれなりな数の人が向かっているみたいだ。探査者として強化された視力が、遠巻きながら橋に屯する人たちを捉える。

 しかしそうか、リーベたちは花火を楽しむことに専念するんだな。俺たち東クォーツ高校1年13組のグループは、どちらかといえばご飯を食べながら花火を楽しむという花見じみた楽しみ方をするから、やはりここで彼女たちとは一旦お別れってことになるかな。

 

「じゃあそろそろ、俺もクラスのほうに戻るよ。みんな、花火楽しんでね」

「公平さん、来ない? 一緒に花火、見ない?」

「先約があるからね。元々一緒に来てる人たちの元に帰らなきゃ」

「そっか……」

 

 リンちゃんの寂しげな言葉と表情が微妙に心に刺さる。さすがにクラスのみんなを差し置いてこっちのグループに参加、なんてできるわけないしする気もないけど、こう、後ろ髪を引かれる思いがあるのもたしかだ。

 苦笑いをしつつ彼女を宥める。心底から残念そうなリンちゃんに、ヴァールとベナウィさんが話しかけた。

 

「気持ちは分かるがフェイリン、人の予定を無理に変えるのはよくない」

「ミスター・公平とはまたいつでも遊べますよ、ミス・フェイリン。今日のところは私たちで楽しみましょう」

「ん……わかった! ごめん公平さん、わがまま言っちゃって」

「いやいや、嬉しかったよ。ごめんね?」

 

 二人からも言われ、謝るリンちゃんにこちらこそと謝る。また今度、この子とはどこかに遊びに行けたらとは思うよ。

 そうして俺はリーベたちと別れ、クラスのみんなのところへと戻っていった。離れてからそろそろ1時間が経つし、さっさと帰らないとな。

 

「あっ、いた! 公平くーん!」

 

 屋台の並ぶ通りを抜けて、湖岸沿いに出ようと歩いていたちょうどその時だ。横合いから声をかけられて、俺は振り向いた。

 梨沙さんだ……関口くんもいる。何かを買っているわけでもないらしく、手ぶらのままだ。もしかして俺を探していたのか?

 手を振って近づいてくる梨沙さん。関口くんを伴いつつ彼女は、俺に向かって言ってきた。

 

「どこ行ってたのー? あんまり遅いから心配になっちゃって、探しちゃったよもー!」

「ご、ごめん。ちょっといろいろあっちゃって……え、もしかしてずっと探してた?」

「まあ、10分もしてないな。佐山さん一人でうろつかせるのも危ないし、俺もついてきたけど……マジでどこ行ってたんだ? お前」

 

 口振りは怒っているふうだけど、表情はむしろ純粋に、俺を心配していたみたいで安堵した様子の梨沙さん。関口くんは関口くんで、一切姿のなかった俺に疑問を抱いているみたいだ。

 うーん、迷惑かけちゃったな、これは。やむを得ない事情──ノコノコついていったら悪の組織の幹部3人にリンチされかけました──があったにせよ、率直に申しわけない。

 そのへんの話をするのも、さらに心配や不安を抱かせそうだし。頭をかいて俺は、微妙に嘘だけど絶妙に本当のことを言うことにした。

 

「あ、あー……ちょっとコンビニまでね。知り合いの知り合いがいて、ちょっと顔合わせしてたから」

「知り合いの知り合い? お前また、変な人脈を得ようとしてるだろう……程々にしとけよ? 昼間も言ったろ、そんなだから若干遠巻きに見られてるって」

「ウッ……ご、ごもっともです。アハハ……」

 

 妙に独特な人間関係を築いているものだから、このへんの探査者さんたちの間ではどうも引かれているというか、遠巻きから生温い目で見られがちらしい俺ちゃん。

 哀しいぼっちの実態を改めて突きつけられて言葉に詰まる。どうにかして、どうにかしてみんなと仲良くなりたいところだ。仲のいい人は、多いに越したことないからね。

 

「ね、ね! 花火もう始まるよ、戻ろう公平くん!」

『そうだ戻れよ! いいからご飯! ご飯!!』

 

 どうしたものかなあと悩んでいると、梨沙さんが俺の手を掴んで緩く引っ張る。輝かんばかりに満面の笑みを浮かべた彼女に、俺も関口くんも笑い返す。

 あ、食いしん坊アルマさんはちょっと黙っといてもらっていいですかね。

 

 青樹さんのこととか、倶楽部のこととか。はたまた俺の人間関係だとか。そのへんは今日のところは全部、脇に置いといて祭を楽しもう。

 そしてまた明日から、一つ一つの問題に立ち向かっていけばいい。みんなやってることだ、俺にだってきっとできるはず。

 今の俺には、頼もしい仲間がいる。紡いできた絆と、拓かれた時代と。そして愛すべき世界があるんだ。

 

 みんなと一緒に、みんなで一緒に進んでいこう。

 

「うん、行こうか梨沙さん。関口くんも」

 

 梨沙さんの手を握り返して、二人にそう返す。

 まだ見ぬ明日を想いながらも、俺たちは花火を見にみんなのところへと帰るのだった。




これにて番外編終了!お疲れ様でしたー
明日から本編第二部・第八次モンスターハザード編の投稿を開始しますー
しばらくは毎日一回、0時投稿にまた戻りますので、引き続きよろしくお願いいたしますー

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